お久しぶりです法務大臣
久しぶりの法務省応接室に通された。ひさびさの眺めだ。やっぱりあの人も偉いんだなぁ、そう痛感する一瞬だった。
「やあ、久し振りだねぇ、」
「あぁこちらこそお久しぶりです法務大臣」
「君の足取りがつかめなくてねぇ、苦労したけど僕たちじゃやっぱり見つけられなくて、もっと早くあの子達の力借りればよかったよ。はっはっはっ」
そう言って話しかけてきたのは現法務大臣の寛暁寺 仝徹さんその初老の顔はシワのひとつもない。仝徹さんは僕たちが施設に居たときからちょくちょく顔を見せてくれたいい人で、僕たちとも交流があったために僕たちの間では“仝徹おじさん”と呼んでいた人で、今でもそうやって呼ぶ人はいるだろう。
「行ってくれるのかい?あの惑星に」
「えぇ、僕も元は暗殺者なんですからね。」
「いやぁ、その返事が私は聞きたかったよ。あ、そうそう支惑星法務省の大臣には話通してあるからね」
「あぁ、有り難う御座います」
そんな話をしてふりかえると、圭織さんがこちらを軽く睨んでいた。その顔にはハッキリと”敬語も使えないのかこの低脳“とかいてあった。
「ダメだよ?対象をそんな目で見てちゃ。」
「っ、申し訳ありません。寛暁寺法務大臣。」
「いや、そんな固くならなくてもいいんだけどねぇ」
「そういうわけにはいきませんから。……早くいきますよ!」
「あぁ、はい、ではそういうことで……」
「うん、頑張ってくれたまえよ」
応接室を出て、圭織さんがすたすたと地図を見て向かっていく。どうやら次の目的地はこっちのようだ。少しぐらい話してくれないだろうか。
「ここのようですね。」
「え~と何が?」
「……チッ……どうやらここが特務課の特別フロアの隊員室ようです。」
いや、舌打ち聞こえてるし、そのうえで僕に向かって睨まれても……僕知らないから!なんで僕この人にこんな嫌われてんだろ。なんかしたかな?
圭織さんはすぐになかに入っていった。続こうとしたら、扉を閉めてしまった。ここら辺から多少の苛立ちを覚えながらも扉を開けると、聞き覚えのある声がしてきた。
「イェア‼お久しぶりでござんすナァ」
「いや昨日あったばっかですよね?」
「アリー?もうそんなにたったのかネェ時間の流れは早いノゥ」
「……………やっと静かになった……」
「ほんと!!!それなぁー、お前が来るって言うから”破天荒ガールズ“がめっちゃうるさくて、困ってたんよ。」
「だってだって、タッツーが来てくれたんだよ⁉喜ばん方がおかしいやん‼」
「いや、それにしては少々煩すぎだぞ。もっと自重をしろ。」
「たぶん言うだけ無駄ですよ。そもそも自重の意味がわからないと思いますし。」
「ウワァー、なんでわかったの!?」
「あら、私、貴女のこともう少し頭の回る方だと認識しておりましたが、その考えがたった今否定されて少しだけ悲しくなりましたよ?」
「ひっっっっど⁉なんで君たちそんなことが平気で人に言えるのかね?」
「それはあなた方のことをそういう扱いでもいい人だと私たちが思っているからなのですわねぇ。悲しいことではありますが。」
「センセー、みんながわたしたちのこといじめてきまーす」
あぁ、昔と全く変わってないんだなぁと心のそこからそう思った。そのことに少しの安堵を覚えた。だが、その部屋に先に入ったはずの圭織さんの姿はなかった。
「あれ?圭織さんってどこ行きました?」
「あれ、タッツー目ぇ悪くなったぁ?」
「カオリン、お前と入れ代わりでソッコー出てったよ。」
「えっ!?ちょ……なんで言ってくんないんですか⁉はぁ…出口分かんないのにぃ……それj、」
「待ったぁぁぁ、これこれ渡すの忘れちったから今渡すナァ?」
そう言って渡されたのはどこにでもあるような茶封筒だった。
「なんですかこの封筒?」
「機密の個人情報っていっとく」
「…なるほど?ありがとうございます…っていうのが正解ですか?」
「まぁ、読めばわかっから、そんなことより早く出てってくんない?」
「あたし的に……あの人あそこにいった気がする……」
「どういうことですか?」
「えぇとぉ、このフロアにはもうひとつ部屋が御座いましてそこは付き人さんの専用なんですわ」
「カオリン、この前来たときもあの部屋にいったっきり戻ってこなかったからねぇ」
…恐らくあの人は僕がいる限りその部屋から出てこない気がする。っていうか、圭織さんいっかいきてたの!?そのうえで地図見るふりしてこの部屋に案内したの?僕マジで嫌われてんじゃん…
仕方ないな圭織さんに聞くのは諦めて、出口探すか……
「…はぁ、そうですか。じゃあ頑張って出口探してきます。」
「バイバァイ」
その後、僕は何とかして法務省の建物から抜け出すことに成功した。それだけで疲れてしまっていたが、僕の神経は完全に圭織さんのことに持ってかれていた。職員さんたち色々聞いてみたが、結局なんで僕は圭織さんにあんなにまで嫌われているのか分からずじまいだった。あかねさんに渡された茶封筒の中に真実があるとは知らずに…