ゆ、誘拐⁉
「ではこれで収録は終わりになりますので、」
「あ、そうですかありがとうございました。では、また」
「ありがとうございました」
僕もとい旋毛崎龍助は食界の第一人者として方々のテレビから引っ張りだことなっている。
ミシュラン三ツ星のレストランの料理長に弱冠14歳でのぼりつめたのが僕である。
この歴史的快挙にテレビもとい世間が注目したのだ。しかし、僕はこのことをよくは思っていなかった。自分がなぜこんな忙しくならなければいけないのか分からなかったからね。
「ハァー、こんなに忙しくなるなら料理長になんてならなければよかったなぁ、なんだっていうんだよ。めんどくさいんだから、僕は注目されるために料理長なんかになったんじゃないんだよ!」
家路につく途中タクシーを待っている間にこぼした愚痴は都会の喧騒に消えていった。待つこと数分、いつものことの様にタクシーがやっときた、時間を見たらもう午後から午前に移り変わるくらいになっていた。
あぁ、なるほどねテレビ局があるから深夜のこの時間帯は出る人も入る人も多いからなタクシーも売り上げ時なんだろうな。
それよりも今日は一段と疲れたな。早く帰って寝よう明日の仕込みもあるんだから。
僕は止まったタクシーに乗り込む、するとそのタクシーは扉が閉めると行き先を告げるより先に動きだしてしまった。突然のことに僕は戸惑う、
「あ、あの駅までお願いします。」
急いで僕は運転手に言ったが運転手は無言で運転を続ける、そのことにちょっとした不気味さを感じた。
しばらく走り続けてよくわかる。
絶対駅の方には走っていっていないことに、しかもここら辺をよく知っている僕でも知らないような暗い裏路地を走っていく。
さすがに怖くなった僕は、運転手にダメもとで話しかけた。
「あ、あの、駅って有岳町のことなんですけd……」
「僕はなんも知らないよ、これは特殊な仕事だからね。」
運転手が初めて口を開いた。
しかも僕にしゃべらせまいとするように食いぎみに否定された。
どういうことだ?まさか営利目的の誘拐なのか?
嫌な汗が背中を伝う。テレビにも出ているからいつかこういうことになるかもしれないとは思っていたがまさかこんな疲れきった時に誘拐しなくっても…
だが、僕の予想とは裏腹にタクシーは人気のないトンネルの入り口付近に止まると運転手がわざわざ降りて扉を開けた。なんだと思い、ポカンと運転手の顔を見ていると、
「前の車に移動しろ、ってさこれは命令だよ。」
そう言われ、前を見るとそれはそれは高そうな黒塗りのリムジンがトンネル内に停車していた。
そう言われたら従うしかない、というかただでさえ体格のいい運転手の手にはスタンガンが握りしめられて、断ったらと思うとしょうがないが降りるしかない状況にもはや絶望を感じていた。
おとなしく降りて、前の車に接近する。運転手が僕の手をつかんだままリムジンの扉を開けて中にむかって一礼したあと、僕を中に入れた。
扉を閉めると足音が遠ざかり、車の去る音が聞こえた。
「ごめんねーこんなことでしか君のこと呼べなくて」
明かりがつく、見ると座っていたのは僕と同じ年代の女の子だった。しかも8人……
そして、唐突に告げられる真意
「でも、タッツーの携帯番号知らなかったからさぁ。とりあえずおかえりってことで!」
………………は?
僕は頭が四字熟語で埋まった。
脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内混乱脳内こn
「おい、そんなん言い方じゃこいつの頭がパンクするだけだろぉ?こいつ四年も前から施設出てんだぜ?もっとわかりやすく言ってやれよぉ。」
「あっ、そうかごっめぇんふふふふ」
「あははは、アッチャンおもろぉい(棒)」
「お前らが話に参加すると必ず話がそれるな、全く、いい加減にせぬか」
「エ?いやいやいやウチ関係なくねエ?」
「あ、そうだねぇじゃあ改めてゴホン、私は茜って言うんだ今は訳あって西四大家の"武家の天川"の一員になる予定です!ヨロシク!」
「エ?何?無視?ねえひどくない?」
これを聞いたとき………………驚愕というか意味が分からなかった。西四大家は準惑星八大家というものに属し、地球に似たあのランドランドを地球の首脳と繋がらせるためのパイプ役として機能している影響力の強い、とても強い家だ。
だからこそ分からなかった。なんでそんな強い権力を持っている家の一員の人が僕なんかをわざわざこんなことしてまで呼び出したんだ?
"公家の紅池""武家の天川""奉行の神宮""商いの草雪"
このように今、いろいろあった地球の主導権を現在進行形で握っている二大国が全世界中を管理をすることにしている。
最も先の第三次世界大戦で世界人口の約10%が死亡、特に男性は世界中の人口の半分が死、それ以外は今も他の国の捕虜として捕らえられているため人類滅亡が危ぶまれたが、二大強国の和解により、世界中が人類復興をスローガンとして今に至るわけで。
その時代は荒廃の時代とも呼ばれ、犯罪件数なども増大し、僕のように事件に巻き込まれた事件孤児と呼ばれる子供が増えたものだ。最も僕は思い出したくもないけど。
「びっくりした?びっくりした?ねぇねぇびっくりした?」
「ちょっと、あなた純粋にうるさいですよ。」
「そしてまた華麗に話からズレテ行くぅ。きっと天才なんだねエ。」
「ごめんて、気分悪くしないでぇ…………えっとぉ実は君をここに来させたのはあるお願いがあったからなんだ、そのお願いとはねぇ………………」
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