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第九話   素顔の魅力

計4572文字です。

お兄さんに恋人がいないと分かり、本当にホッとしました。


けど、そうすると当然、ある疑問が浮かび上がってきます。


お兄さんが言っていた人は誰なのかという疑問です。


それをお兄さんに聞きたいのだけど、乙ちゃんが嬉しさのあまりお兄さんを気絶させてしまったのでお兄さんが起きるまで待つことになりました。


皐月先輩、お兄さんに好意を抱いているあの人に対して牽制の意味であの人の前でお兄さんに膝枕をしながら剣道部の練習を見ていると、さっきより素人目で見てもあの人の動きがよくなっていて彩華先輩から何度も一本を取っていました。


皐月先輩がこちらをたまに見てくるのでそのときはわざと見せ付けるようにしています。


私の隣にいる乙ちゃんも私に膝枕をさせるのが嫌だと言っていたけど、どこかでお兄さんに対する好意があって無意識の内に嫉妬している。乙ちゃんには悪いけど、お兄さんに対することだけは私は一切の遠慮はしたくない。


別のほうに視線を向けてみると葉月先輩が女子部員の方々と楽しそうに談笑していました。


先程は簀巻きにされていたのにどういうことでしょうか?


「あれが普通に扱われてるのがそんなに不思議か?」


壁に寄りかかって腕を組んでいる八夜先輩が私が不思議がっているに気付いたようです。


「まぁ、あれは性格は少し変なところはあるが顔は悪くない上に運動も出来るからな。嫌われる奴には嫌われるが、一般的にもてるほうではあるんだぞ?さっき簀巻きにされていたのもたまたま嫌われてる奴に当たったんだろ。」


「あんなのがもてるの?」


乙ちゃんが心底不思議そうにした。


「姫夜妹のようにあれが受け入れない奴から見たらそう見えるだけだ。それに姫夜妹が言うほど、あれも悪い奴じゃない。でなければ、俺や雛が親友扱いするわけないだろ。」


「親友、ということは先輩達は付き合いは長いんですか?」


「いや、そうでもない。中学三年の頃からの付き合いだから大体二年ほどになるな。暦に関して言えば、出会ったのは同じ時期だが中学が違って高校で偶然、再会してからだから一年だな。」


「では、何かきっかけでも?」


「・・・・・・まぁ、そういうことだ。」


八夜先輩は具体的にそのきっかけについて話すのを拒否する雰囲気を漂わせながら肯定しました。


しかし、どうしても気になることがあります。


「あの、先輩は、お兄さんの、何か、その、不幸な事件、とか、そういったことは、ご存知でしょうか?」


お兄さんが抱えた絶望。親友の八夜先輩ならその何かを知っているのではないかと思いました。


「・・・・・・。」


八夜先輩はジッと私の顔を見つめていました。


「・・・・・・なるほど。てっきり雛の素顔を見たのかと思っていたんだが、姫夜姉はそちら側から雛に関心を抱いたのか。」


「ということは、何か知っているんですか?」


「雛の暗い側面を知っている。その原因と辿った過程は本人の口から、そして、結末は実際にその場に居合わせたからな。それが俺たちが親友になったきっかけでもある。しかし、それを俺等が話すつもりはない。こういうことは本人から聞くものだろう?」


「そう、ですね・・・・・・。」


確かにお兄さんの心の深い部分を知るに当たって他人から聞こうというのは考えが足りませんでした。


「それに、さっきは結末と言ったが、実際その手の問題は一生本人に付きまとうものであり、今は小康状態であるだけで雛の中で何時再燃するか分からない。だから、姫夜姉妹も本人が話すまでその手の話題は控えてもらいたい。」


絶望と一生付き合わなければならないのは私自身よく知っています。私も少しは改善されたとはいえ、この制限の多い体と一生付き合わなければならないし、他者と比較して不自由な体にまた何時絶望するか分かりません。


「はい・・・・・。」


「それは分かったけど、あんた、さっき紅チビの素顔がどうとか言ってなかった?」


乙ちゃんが重くなった空気を察して話題を変えた。


乙ちゃんは口は少し悪いけれど昔から空気を読むことが出来る子だった。


「ああ、それは実際にいい例があそこにいる。」


八夜先輩が指を指す先には皐月先輩がいました。


「暦姉も最初は雛に対して他大多数の男たちに対してと同じ、あまり関心を示さない態度だったんだが、雛の素顔を偶然見たとたんにコロッとな。それが確か一ヶ月ぐらい前だったか。」


私より後にお兄さんのことを好きになったんですか。


「それより前にも雛の素顔見た奴らがいるんだが、あいつらも雛に対してだけ態度ががらりと変わったからな。まぁ、しかし、本人は態度の変化を自分の顔立ちが珍しいからとしか思っていないみたいだが。」


「顔立ちが珍しい?」


「その髪もそうだが、雛は変わった血を引いているらしくてな。まぁ、言うより見たほうが早いとは思うが、今は髪をどけても寝ているし眼が見れないから分からないだろうな。」


乙ちゃんは何かを思い出すようなそぶりを見せた。


「・・・・・・そういえば、こいつの眼の色、黒じゃなかったような。」


「乙ちゃん、見たの?」


「見たと言えば、見たんだけどチラッと見えただけだし別の印象が強くてよく覚えてない。」


「眼の色はともかく、雛の素顔が人を魅了するということは実物を見てみれば分かる。」


「・・・・・・それは見ろ、ということですか?」


「好きに解釈してくれて構わない。ただ、起きている間は雛は恥ずかしがって見せはくれないぞ?」


私の膝の上でスヤスヤ眠るお兄さんの顔を隠す綺麗な紅い髪。その向こう側には一度も私が見たことがない人を魅了するという素顔。


・・・・・・すごく気になります。


しかし、お兄さんに無断で見ていいものなのでしょうか?八夜先輩の言うとおり、私も何度か見せて欲しいと頼んだことがありますが、恥ずかしがって見せてくれませんでした。本人が嫌がっていることを了承を得ないうちにするというのは気がひけてしまいます。けれど、今の話を聞いて気になって仕方がありません・・・・・・。


・・・・・・偶然の事故ってよくあると思うんです。だから、お兄さんの髪を撫でてあげようとしたら誤ってお兄さんの前髪をどけてしまうようなこともあると思うんです。そう、今から起こることは事故なんです。


ゆっくりとお兄さんの前髪に手を伸ばして、そっと左右に分けました。


「「・・・・・・。」」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わぁ。


え?え?お兄さん、私より一つ年上ですよね?男性ですよね?何ですか?この可愛らしすぎる顔?天使?お兄さん、天使ですか?というか、肌白くないですか?私みたいに病弱な白さじゃなくて健康的で眩しささえ感じる程に白いじゃないですか?わ、柔らかい。え?え?何ですかこのもち肌。触ってて凄い気持ちいいんですけど?ああ、その顔でむずがゆそうにされたらたまらないんですけど?唇も鮮やかなピンクでふっくら柔らかそうでいて可愛らしさの中に引きつけるような妖艶ようえん淫靡いんびつやまであるんですけど?え?え?これいいですか?襲っちゃっていいですか?いいですよね?じゃあ、いただきます。


「ストップだ。姫夜姉妹。」


お兄さんの唇に自分のものを合わせようとしたところで八夜先輩に止められました。


「あ、わ、私、い、いいい、今っ・・・・・・!」


乙ちゃんが顔を真っ赤にして私と同じく近づいていた顔を離した。


今のうちに唇を


「待てぇ!そこ何をしている!!」


大声が聞こえたのも無視してお兄さんとキス


「姫夜姉。やりすぎだ。」


八夜先輩に肩を掴まれて、上体を起き上がらせられてしまったせいでギリギリで出来ませんでした。


「放して下さい。」


「寝込みを襲って雛に嫌われてもいいのか?」


八夜先輩にそう言われて、ハッと眼が覚めました。


あ、危なかったです。つい魅力に負けてとんでもない過ちを犯すところでした。


それにしても、お兄さん、その顔は反則です・・・・・・。


もう一度見たら、また襲ってしまいそうでお兄さんの顔を見ることが出来ません。


隣を見ると乙ちゃんも同じようで顔を赤くしたまま下を見ないようにしている。


「かぐや!今何をしようとしてい、た・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


面を外して怒りながらこちらに来ていた皐月先輩は近くに来て私の膝のほうに視線をやると固まってしまいました。


その気持ち、凄い分かります。襲わないだけ凄いと思います。


「皐月ちゃんどうかしたぁ?・・・・・・わぁ、可愛いぃ。」


その向こうから彩華先輩もやってきて、私の膝で晒されているお兄さんの素顔に頬を染めました。・・・・・・というか、よくそんなに平静でいられますね?


更に周りを見ると騒ぎを聞きつけた女子剣道部員の方々が皐月先輩と同じように硬直していました。中にはぎらついた眼で鼻息の荒い人までいます。


「葉月、手が空いてるなら雛の顔を隠せ。」


「お前がやればいいだろうが。」


「いや、手を放したら姫夜姉がすぐに雛に襲い掛かる。」


頭では分かってるんですが、体のほうは未だにお兄さんの唇を狙ってるようで体を倒そうと力を前にかけたままです。


「ったく、そもそも雛の顔を見せんじゃねぇよ。」


「すまん。まさか寝顔でもこれだけの威力を持っているとは思わなかった。」


・・・・・・起きているときのほうが威力が高いんですか?


葉月先輩が前に来て、私の膝の方で手を動かすと皆さんの硬直が解けました。


「もういいぞ。」


恐る恐る膝の方に眼を向けると、そこには顔をいつものように髪で隠したお兄さんがいました。


そこでやっと力が抜け、八夜先輩も手を放してくれました。


「まぁ、これで俺が言ったことは身をもって分かっただろ?」


「はい・・・・・・。これは、危険すぎますね。」


「・・・・・・ねぇ、さっき起きてるときのほうが凄いみたいなことを言ってなかった?」


乙ちゃんが顔を赤くしたまま私も気になったことを聞いた。


「少なくとも俺と暦はそう思うが、同性の暦姉の意見のほうが参考になるんじゃないか?」


この場の全員の視線が皐月先輩に向かいます。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・倍以上の威力はある。」


「「「「「「「・・・・・・(ごくりっ)。」」」」」」」


皆一斉に唾を飲み込みました。


・・・・・・お兄さんの素顔は永久非公開にしましょう。


そう決意をしました。







おまけ。


「あれじゃあぁ、皐月ちゃんが好きになっても仕方ないねぇ。」


「・・・・・・彩華。まさか。」


「う〜んとぉ、どうだろぉ?確かにぃ、可愛いけどぉ、恋愛感情かは分かんないかなぁ?」


「・・・・・・。」



おまけ2。


「わ、私、あ、あいつに、き、ききき、キス、し、しようとした・・・・・・?」


困惑する少女。



おまけ3。


そのあとの相談で雛は女子剣道部の共有財産兼マスコットに決定した。



あれ?雛がの台詞が一言もなくね?と思いましたが、それはそれでいいかと思いながら出来ました今回の話では雛の素顔が寝顔でですが公開という形になりました。どういう風に描写すればいいのかよく分からないながらも頑張って書きましたがどうでしたでしょうか?

 ご意見・ご感想のほうは随時お待ちしています。


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