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ぷろろーぐ   緩やかな変化

書きかけの作品があるにもかかわらず、衝動に任せて無謀にも新たな作品に手を出してしまいました。もう一つの作品以上に不定期的で遅い更新になると思いますが、よろしくお願いします。

本日も晴天なり、というか花粉のせいで春の気持ちいい陽射しが台なしな今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?


新しい環境にそろそろ馴染めたでしょうか?何事も最初が肝心ですからあまりはっちゃけ過ぎるのは駄目ですよ?はっちゃけ過ぎるとろくなことはありませんよ。例えば・・・


「天誅っ!!」


「ぶべらっ!!」


あのように宙を舞うことになりますから。


「惜しい、六十五メートル。記録まであと七メートルだったな。」


「彼らもよく飽きませんよね。」


もはや日常の一部になっている光景に親友の八夜九陽ややくよう君と僕はそれぞれのコメントをしました。


「あれもあいつらの愛情表現なんだろう。俺ら常識人には理解しがたいがな。」


「仲がいいことはいいことです。僕ら常識人には理解が出来なくても。」


「待ったぁぁぁ!!今の発言には異議を唱える!!」


先程、人を吹き飛ばしたほうである女性、暦皐月こよみさつきさんが猛烈な勢いで僕らのもとに来ました。彼女がいたところは離れていて、小声で話していたのに関わらず聞こえるとは相変わらずの地獄耳です。


「異議と言われても、何も間違っていないだろ?」


「間違いだらけだ!まずはアレと私を一緒にするな!あんなのと一緒にされるのは不愉快極まりない!それにお前らが常識人とは冗談にもならんぞ!」


失礼なことを言わないでもらいたいです。僕と九陽君はまっとうな一般人なのに。


「しかし、アレはお前の半身のようなものだろ?」


「確かにそうだがっ!私の人生最大の汚点とは一緒に扱われるのは納得がいかん!!」


「・・・さっきから俺の扱いが酷くね?」


「あ、もう復活したんですか。」


「さりげなくお前もひでぇな、コノヤロウ。」


顎を真っ赤に腫らして僕に話しかけてきた、暦葉月こよみはづき君は僕が応えてあげたのに恨めしげな目で僕を見ます。


そんな視線から僕を守るように九陽君と皐月さんが葉月君と僕の間に立ちます。


「愚弟、あまり雛に話しかけるな。馬鹿がうつったらどうする。」


「汚物、雛を見るな。雛が汚れる。」


あ、二人が言ってるのは僕のことです。僕の名前は宝良雛たからひなといいます。こんな名前ですがれっきとした男です。背が低くて、童顔で、声が高めで、女顔で、髪が腰まで届くほど長くても正真正銘の男です。


「俺の扱いが酷すぎだろ!?ってか、九陽なんか汚物って既に人扱いじゃねえな!え?姉貴、何だよ?その何をいまさら、っていう顔は!?」


葉月君が喚いていますが、二人ともちっとも気にしません。むしろ、視線が冷ややかになっていきます。


このまま彼が二人にウザイという理由でボコボコにされるのを見るのもいいですが、それで公共の道路を汚すのは忍びないので二人を止めることにしました。


「汚物は酷いですよ。ちゃんと名前で呼んであげましょう。」


「雛、俺はお前を信じてたぜ!」

「汚物が可哀相じゃないですか。」


「汚物以下だった!?」


「「それもそうだな。」」


「しかも納得しやがった!」


葉月君がうるさいですが、とりあえずは道路が汚れることはなさそうです。


「ところで、今度は葉月君が何をやらかしたんですか?言わなくても何となくわかりますが。」


「察しの通り、またナンパだ。」

頭が痛いと言わんばかりに溜息を吐きました。


「相変わらず懲りないのか。」


「男が女を求めて何が悪い!」


「それ自体には文句はない。しかし!やり方に問題がある!」


「何がいけないって言うんだよ!ただお茶に誘って、キスをねだって、夜の話しを持ち出しただけだろ!?」


「問題がおおありだ!この愚弟!お前と双子という事実だけで恥ずかしい!!」


言い忘れてましたが、彼等は双子です。二卵性なので性別は違いますが、顔立ちはそっくりです。違いと言えば、皐月さんが古風な感じな性格で黒髪をポニーテールにしているのに対し、葉月君は残念な性格で金髪を馬鹿っぽくツンツン立てているところでしょうか。


あ、ついでに言うと九陽君もイケメンです。知的な眼鏡とクール&ミステリアスな雰囲気が女性にはたまらないらしいです。


周りがこんなに美男美女なのですが、僕は『亡霊』なんて呼ばれていたりします。

そんなふうに呼ばれるのは僕の容姿に原因があります。

何しろ僕の顔は髪の毛に覆われて見えません。しかも、その髪が深紅で肌も病人のように白いものですから血染めのお化けっぽく見えます。おかげ夏休みはバイトに困りません。何故、顔を隠しているかというと、単に恥ずかしいからという一言に尽きます。恥ずかしがり屋な僕はこうしているのがとても落ち着くのです。


『亡霊』というあだ名も主に使われるのは夏だけですし、いじめにもあっていないですよ?むしろ、可愛がられています。


「あ、そういえば。」


あだ名で思い出しました。鞄を漁って物を取り出します。


「はい、今日の分です。右のが九陽君の、左が皐月さんので、今、踏みにじってるのが葉月君のです。」


「う、またか・・・。」


「すまんな。」


「何で踏むんだぼぉぉ!?」


二人に物を渡して、足元にすがってきた葉月君に蹴りを顔面に突き刺しました。


「鼻がっ!鼻がぁぁぁ!!」


何故か葉月君が悶えていますが、いつものことなので放置します。

「皐月さん、人の好意を邪険にしたら駄目ですよ?九陽君ももらうだけもらって無視するのは駄目です。」


「しかし、顔も分からない男にこのようなものをもらっても困る。」


「もらえるだけ有り難いと思います。僕なんか毎回もらうのは他の人宛てのラブレターばっかりで自分のはもらったことがないんですから。」


「『仲介人』様も恋がしたいか?」


「当然です。せっかくの青春を彼女がいないまま過ごすなんて御免です。」


九陽君達と一緒にいることが多い僕は何時からか彼等へのラブレターを預かることが多くなり『仲介人』と呼ばれるようになってしまいました。


「だ、そうだが?」


「なっ!な、ななな何故そこで私に振る!?」


「近頃のお前が男を振る理由が」


「言うなぁ!!頼むっ!それだけはっ!」


「・・・そこまで動揺すれば言っているようなものだが。」


「九陽君は皐月さんが告白を断る理由を知ってるんですか?」


「・・・もはや感心するな。」


九陽君は呆れたような顔で、皐月さんは顔を赤くしてホッとしたような残念なような複雑そうな表情をしています。


「ところで、今日はどうする気だ?」


「う〜ん、情報収集したいところですが大家さんに呼ばれてるので遠慮します。」


「そうか。ところで、いい加減にテレビぐらい買ったらどうだ?何なら俺がゆずるが?」


「あっても見る暇がないですからね。お金もないですし、無駄な出費はさけたいので。」


両親もいない身で一人暮らしは大変です。父親の友人である大家さんの好意のおかげで何とか住む場所に困っていませんが、出来る限り自力で頑張りたいので携帯を除き、テレビはもちろん、娯楽品は部屋に一つも置いてないですし、新聞もとっていません。そのせいで情報には疎くなってしまうので九陽君や葉月君の家で情報収集をしています。


「そういや、今朝のニュースなんだけどな。」


ゴキブリのようで復活した葉月君が思い出したかのように汚れたラブレターをはたきながら僕を見ます。


「お前のお気に入りの女優が離婚したらしいぞ?」


「・・・本当ですか?」


「ああ、突然のことだから随分騒がれてたぞ。」


「今朝のこととなると、燈鏡ひかがみくれないのことか?・・・雛はああいう女性が好みなのか。」


燈鏡紅とは、若いながらも国民的な人気を誇る女優で十年前に芸能界入りして、その二年後に十五歳年上のマネージャーと電撃結婚。容姿端麗、才色兼備であり天は二物を与えずという言葉を地で破り、話題性にことかかない女優で、舞台、ドラマ、映画、様々な方面で活躍し、その実力を遺憾なく発揮して国民だけでなく、同じ芸能界でも人気が高い。


僕は彼女の一ファンであり、彼女に関する情報だけは細かく集めている。記事もスクラップしているほどだ。


「好み、というのはまたちょっと違いますけど、大好きではあります。」


「どうだか?燈鏡紅のニュースのときだけ見る目が違ったじゃないか?え?」


いやらしい顔つきで肩を組んでくる葉月君を適当にあしらいながら、その後も雑談を交わしながら歩いて、みんなと別れると一人、町外れへと足を向けました。







〜〜〜〜〜〜〜〜







皆と別れて二時間、街から離れて建物が少なくなってきたところに、僕の住まいであるアパートはあります。


お世辞にもというか、どう見ても綺麗に見えない築百年以上はたっているであろう、さびれた外観の今時珍しいトタン屋根のボロアパートには外壁に蔓が絡みつき一種の心霊スポットのようにも見えないこともありません。外見の期待を裏切らず、設備もボロボロで雨の日は雨漏りをしますし、水道もある程度の頻度で壊れますし、電気もたまに通じないことがあります。かろうじて、携帯の電波が届くのが幸いです。立地条件、家屋の老朽化がひどすぎるためにここには僕と大家さんしか住んでいないのが現状です。


「お帰りなさい、雛ちゃん。」


「ただいま。大家さん。」


アパートの前を無意味に掃除している黒い長髪に黒いシャツ、黒い手袋、黒いロングスカートに黒い靴下を身につけ、白い肌と対照的な全身黒尽くめのこの女性が僕の父さんの友人でこのアパートの大家である大家瓜おおやうりさんです。僕を雛ちゃんと呼んで、父さんが生きていた頃から僕を可愛がってくれていた年齢不詳の美人さんです。ちなみに名前が嫌いらしく瓜さんと呼ぶと、羅刹のごとく恐ろしくなるので絶対に呼ばないようにしています。たまに何故か熱の篭った目で僕を見ているのですが、それ以外は特におかしなところのないいい人です。


「早くお部屋に行きなさい。」


「え?僕に用事があるんじゃないんですか?」


「用事は私じゃなくて部屋で待ってる人があるのよ。早く行ってあげなさい。もう三時間近く待ってるわ。」


「はい。じゃあ、また後で。」


「待って。」


僕が部屋に行こうとすると、大家さんに引き止められました。


「何か忘れてない?」


「あ、そうでした。」


僕はしゃがんでくれた大家さんの頬に顔をよせてキスをしました。父さんが亡くなってからお金に困っている僕がここに住む代わりに色々と変な条件を提示されて、このキスもその条件の一つでした。行きと帰りの際に大家さんの頬にキスをする、この条件には最初の頃は照れていたけど、今では自然に出来るようになりました。慣れって恐ろしいですね。


「はぁ・・・。」


大家さんがうっとりと息をしていましたが、僕はそれを気にせずに自分の部屋に向かいました。


誰が来ているのだろうかと思いながら、部屋のドアを開けると女物の靴が玄関にありました。ドアを開けた音が聞こえたようで部屋の奥から人が来る気配がします。


「雛?」


そこに現れたのは茶色い癖のある髪に柔和な顔立ちで大家さんに負けず劣らずな美人でスタイルは大家さんよりよろしいだろうという女性でした。


「あれ?何でここに?」


「雛!」


抱きついてきた女性に押し潰されそうになって、頑張って堪えようとしてみるが勢いが強すぎて押し倒されてしまいました。


「ゴメンね。ゴメンね、雛。もう一人にしないから。私が一緒にいるからね。」


涙声で早口にまくし立てる女性の顔をもう一度確認すると、やっぱり自分の知る人物に間違いありません。


「何でここにいるんですか?母さん?」


僕の母、燈頼琴音ひらいことね、改め芸名、燈鏡紅がそこにいました。



思いつくままに書いていくので矛盾した点や無理矢理な点、適当な点や無駄に凝ってる点などが目立つと思いますが、どうかご容赦ください。ご意見、ご感想のほうもどしどしお願いいたします。

ご覧頂きありがとうございました。

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