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第十二話「王都攻防戦開幕」

第十二話「王都攻防戦開幕」






 ひとりの少年がヴェルトゥブリエの王都に着いたのは、フェリシーたちが出立した直後である。彼は気の向くままに旅をして、たまたま通っただけである。

 到着したその日は物々しい雰囲気に驚いた。すぐに戦争をしたことを知る。出店で働く人達の話だと、楽勝であるという話。兵力差を聞いた少年も納得した。

 しばらく街並みを見て彼は疑問に思う。壁や地面は石造りなのだが、家は木材で出来ていた。

 石で作ったほうが、頑丈だろうと彼は思ったが、直後に太陽を直視する。思わず手で日差しを遮った。

 木材で夏の暑さを対策をしているのだと、理解する。なるほどなと少年は家を眺めていく。

 そのまま少年は王都で四日過ごす。そろそろ旅路につこうと、彼は思案する。

 円柱の道具を取り出す。マナ濃度計だ。

「ここは、マナの濃度が低いままなんだな」

 自己確認するための独り言。それに通りがかった男が反応する。

「そりゃあご神木のおかげさ。オルフォール教じゃなくっても、祈りの時間参加してもバチは当たらないぜ」

 祈りの時間は一日に一度。午前と午後の間に行われる。

 オルフォールの一般的な宗派は東に向かって、祈りを捧げる。ヴェルトゥブリエの宗派はご神木に向かって祈りを捧げるのだ。

 せっかくの申し出ということで、彼は祈りの時間を迎えて祈る。

 神や宗教の類を信じているわけではない。ただ、この夏の日差しを遮ってくれる神木にお礼を言いたくなったのだ。

 少年は旅の支度をするために、あれこれと買い込む。

 買い物をする人も売る人も、笑顔でやり取りをしていた。

 なんの変哲もない日常。それは門が開かれると、脆くも崩れた。

 泥まみれの兵士が数人。王都に帰還する。早馬で一足先に帰ってきたのである。

 そして王都は敗戦を知る。日は傾き始めていた。夕暮れとともにノエルたちが王都に帰還。

 門が閉じられてしまう。少年とそれ以外の旅の者は一斉に門に詰めかける。

「出られないのか?」

「グリーンハイランドの軍が迫っているんだ。開けられない」

「いつになったら出られる?」

 門を守る兵士はわからないとかぶりを振った。

 少年はすぐに諦めて宿へ向かう。すると宿からすぐに出てほしいと言われる。

「宿無しで過ごせと言うのですか?」

「これからみんな宿がなくなるよ。荷物はちゃんと自分で管理するんだよ」

 老婆は少年に丁寧に説明していく。

 この王都は区画整理を頻繁に行っているのである。日照などの関係、人口が増えた場合などは限られた土地をやりくりするためだ。

 そして特例で王都が戦場になる場合にも行うことが決まっていた。

 ヴェルトゥブリエの土地は貧しい。持てる資源を最大限、再利用して有効活用するのである。故に、敵に資材を奪われることを嫌う。

 王都や各デューアルブルが戦場になった場合、家を全て解体して、中央に集める決まりがあるのだ。

「ぼ、僕らはどうなりますか?」

「外に飛び出ようとしなければ、悪いようにはしないさ。ここの王様は優しくなった」

 少年は荷物をまとめると、夜の街へと繰り出した。同じく宿を追い出された人々がたむろしていたので、仲間に入れてもらう。

 皆戸惑いながらも、不安に負けないように笑う。

 しかし、ひとりがそれを煽る。

「兵士が話をしているのを聞いた話だがな。どうもグリーンハイランドは異教徒を徹底的に排除しようとしているらしい」

「どういうことだ?」

 男たちの会話を黙って聞く少年。

「どうもプリュトンデューアルブルのご神木が燃やされたらしい」

「なんて馬鹿なことを」

「今出ても、俺達も襲われるかもしれないな」

 困ったもんだと全員が途方に暮れる。






 翌日グリーンハイランド軍は王都を取り囲む。その日のうちに攻撃を開始。すぐさま弓矢や魔導で応戦するヴェルトゥブリエ軍。

 丸太や梯子を手に壁に殺到する。

 壁の一角にグリーンハイランドは殺到し、人海戦術で一気に梯子を駆け上がっていく。

「くそ! 人手が足りねーよ!」

 ついにひとりが手をかけた。

 緑の閃光が走り、その手を吹き飛ばす。血飛沫を上げながら手を吹き飛ばされた男は落ちていく。

 突破出来るかと思われたが、男が落下した拍子に梯子は折れてしまう。

「今だ矢をありったけ浴びせてやれ!」

 グリーンハイランド軍は蜘蛛の子を散らすように、退いていく。

 ヴェルトゥブリエ軍は見慣れぬ少年がそこにいることに気づいた。

「お前がやってくれたのか?」

 少年はなんでもないようにええと応じる。

 程なくして少年は兵士に伴われて、第二の門をくぐり、そのまま第三の門も通される。そして王宮に連れて来られたのだ。兵士に案内されて、一室に通される。

 そこには色素の薄い金髪の男がいた。ノエル・ヴェルトゥ・ソレイユだ。

「なぜ助けてくれた?」

 ノエルは単刀直入に問う。

「出られそうに無いですし、飛び出ても殺されそうだ。それならばあなた方をお手伝いして、勝って安全に出ようと思いましてね」

 少年は両手を広げて肩を竦めてみせた。

「名前はなんという?」

「タカアキ――と申します」

 ノエルは名前を聞いて、小首を傾げる。

「アズマの方の出身か?」

「いえ、生まれはオオサカです」

 ノエルはなるほどと頷きながら、能力を問う。

「魔導師みたいなものです。このように」

 言いながら彼は緑の光を張り巡らせる。マナで作った糸。それを蜘蛛の巣状に展開しているのである。

「どの角度からでも撃てます」

「見事――兵士を貸す。しばらく時間を稼いでくれ」

 タカアキはどれくらいだと聞く。

「一日、二日はほしい。まだ外の撤去が終わっていない」

「わかりました。やってみせましょう」






~続く~


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