第零話「世界のはじまり」
第零話「世界のはじまり」
かつて世界はひとつの国であった。世界は魔法のチカラで繁栄し、生きとし生ける者全ては、それを扱えたのである。
全ての種族は平和を謳歌した。誰もが永遠だと信じて疑わなかった。
しかし、それは唐突に終わりを告げる。
一体の祖龍が異を唱えたのだ。
龍の名は霊龍。
祖龍は破壊する。大陸も、国も、文明も、生活すら。
抵抗した者もいた。武器を手に祖龍に挑んだ。
しかし祖龍は魔法を受け付けない。光を発するだけで、魔法は掻き消えたのだ。
そして国は滅び、生き残った者たちは、個々で生きていくしかなくなった。長い年月を経て、再び世界は団結する。
そして再び祖龍に挑む。
多大な犠牲を払い、神剣エアによって祖龍を倒すことに成功する。だが、流れ出る血は神剣エアを錆びつかせ、粉々にしてしまう。
それだけではない。祖龍は、死の間際に自身の体を石にして世界中にばら撒いた。
祖龍とエアは世界中にその破片を散らしたのだ。
再び訪れた平穏。国はひとつに戻るのかと思われた。
しかし、あまりにも長い歳月が世界を分け隔てたため、ひとつになることはついに出来なかったのである。
いくつもの動乱と戦争が起き、ついに世界は滅んでから千年の時が流れた。
この世界は幻想の不確定世界。
「魔王の申し出を断って良かったの?」
「けしかけたのは彼だからな」
女性と少年は水平線を眺める。二人は船に乗っていた。
少年の目つきは悪い。視線を交わした者は、慌てて目を背けるか、負けるもんかと睨めつけた。
女性は蒼い光そのもの。見た人はその存在に食い入る様に、時間を忘れるように見つめた。
見ているだけで周囲は満足なのか、それ以上近づこうとしない。
「二人きりの冒険なのよ! 邪魔者がいないんだからこれは久しぶりに」
女性は顔を赤らめて、期待を込めた眼差しを向ける。しかし受けた少年はどこ吹く風。呆然とした様子で水平線を眺め続けた。
「確か、ブランシュエクレールだったな」
~はじまる~