06 - 魔物の乗り方、抱きしめられる、抱きしめる
「まじ……? これに乗るの……?」
後日、リチャードからアルバートの屋敷に『援助』として送られて来たものは、五頭の魔物と魔物の調教師二名、リチャードの私兵三名、ティザーン王国内で使える通貨、魔道国入国の際に使える身分証明書、魔道国内で売却し金にするための稀少本を数冊、残りは衣類と食料品だった。いったいこれら用意するのにどれほどの財が必要になるのか、千秋には分からないが、桃太郎の出発準備でも揃えないような念の入りようだ。
千秋は援助の品々をありがたくチェックする前に、まず魔物――彼の身長の二倍はある漆黒の細身のクマのような生きものにくぎ付けになった。そこで、調教師にこれが富裕層が使う一般的な移動用の魔物なのだと教えられたのだった。
「旅中、千秋が乗りものに乗りたいと言っていたからな。リチャード様が欲しがっているものはないかと聞いて下さったときにお話しておいた」
「い、い、言ったけど……! 言ったけど……。噛まれたり引っかかれたりしないか?」
「我々の命にかけて、そのような商品をリチャード殿下とアルバート様の大切な方にご提供するわけがありません。万一の事故があった場合、打ち首にしていただいて結構でございます」
「物騒すぎる! 命なんか賭けなくていいよ。調教師の皆さんが顔見せて届けてくれたんだもん、信用してるよ。うん」
調教師コンビは揃って膝をつき、まるで裁きを行う真実の剣の前に首を差し出すような仕草をした。千秋は慌てて彼らを立たせ、自分と同じくらいにあるがっちりした肩を気軽に叩きながら、ヘラヘラと笑って見せた。実のところ、内心では彼らの信用がどうこうというよりも、まず未知の生物自体に耐性がないだけなのだ。
こちらの世界に来てすぐ魔物に追いかけられるという体験をした日から、まだ一ヶ月も立っていない。少し思い出しただけで、後ろから迫りくる例えようのない圧迫感と死の恐怖がまざまざと千秋のうちによみがえってくるようだった。
「千秋?」
ぶるりと身体を震わせた千秋に、ジャックが不思議そうな目を向けた。
「あ、いや。なんでもない。問題ないよ。他にオレが見ておかなきゃいけないやつ、ある?」
「そうだな。お前は計算が出来ると言っていたし、後で通貨を一緒に確認しよう。次に身分証明書にお前のサインを。残りは確認せずとも構わないが、……本でも読んでみるか?」
「いや……。文字全然習ってないから読める気がしないっす。つかマンガならまだしも、本は開いたら眠くなるんだよなあ。子ども用絵本だったらまだいいけど」
「装丁の見事な童話集が一冊あったな。挑戦してみるのもいいだろう」
それって、寝る前に絵本読み聞かせとかいう子どもへの教育文化じゃないだろうな、と千秋は冷や汗を垂らした。ジャックの行動は基本的に千秋を子どもだと見て判断しているため、有り得るのだ。この世界にも同じような文化があるかは分からないけれど。
「あのっ、お話し中のところ、失礼いたしますっ」
「ん?」
ジャックと千秋が話をしていると、旅装の短い赤毛の男が一人小走りで駆け寄ってきた。がばりと最敬礼で頭を下げ、左胸を右手でぎゅっと押さえるような仕草をして口を開いた。
「リチャード殿下より、お二方の護衛役に拝命しました。隊長として代表してご挨拶申し上げます」
「え、え……? えっと、誰すか?」
「自分をお呼びになる際はキリルという名をお使いください。残りの二名は目つきの悪い長い赤髪がシリル、髪の毛を刈り上げた者がセイカーという呼称を使っております。普段はリチャード殿下所有の私兵として極秘任務を行っております」
キリルがきびきびと背後に立つ二人をそれぞれ手で示して教えてくれた。どうやら、教えてくれた名前はすべて偽名のようだ。秘密結社のコードネームみたいなものかもしれない。
三人の外見は装備も含め兵士、というよりも、ジャックと同じく旅装の剣士というふうに見える。気になるところは少しだけ動きにムダのなさが見えるところくらいで、装備もそれなりに使いこまれたような修繕跡が見えた。千秋の目には違和感はない。
もっとも、ジャックも貴族や王子がいる時点で普通の剣士ではないような気がするから、比較対象として正しいのかは分からない。
「特殊任務係の兵士さんなんだ。ってか、そういう専門の人たちが三人もいるんなら、オレいらなくない?」
それなりの技能のある人間が行って調べたほうが、スパイ行為の成功度も上がるというものだ。プロフェッショナル三名を動かせるなら、素人の千秋を含む二名を勧誘する必要も、大がかりな援助品を用意する手間も省けたはずだ。
「いえ。自分たちが御同行するのは、魔道国との国境の直前の街まで、となっております。我々ではティザーン王国に忠誠を誓っておりますから、魔道士の前で嘘をつくことはできません。入国の際に首を刎ねられるでしょう」
「えっ? すいません、すげー物騒な言葉が聞こえてきたような気がしたんですけど」
「魔道士たちは主を持つ者を見分ける魔道を持つのです」
「壮大な嘘発見器ってやつ……? オレらはなんで平気なの? リチャード様に色々協力関係を結ぶって約束しちゃったんだけど」
「あれは、忠誠とは違う」
千秋の質問に、極秘任務兵士の隊長が説明する前に、ジャックが端的に言い切った。やはりよく分からなかった千秋の様子を見てか、それとも絡みたくなって絡んできたのか、アルバートが千秋の肩を抱くように腕を回し、千秋とジャックにだけ聞こえるような小さな声で囁いた。
「その説明は俺からするねぃ。兵士さんたちが言う、『忠誠を誓う』ってのは、千秋がやった口約じゃないんだよん。魔法あるいは魔道を用いて『主』のために自分の命を捧げる誓いをすることを言うんだ。ねえ、ジャック」
「……ああ」
「え? ジャックは忠誠を誓ってないんだろ?」
「今は」
ジャックは言葉少なく呟き、眉を寄せ視線を僅かに逸らした。なんとなくこの話題を続けていたくない、と言っているように千秋は思えた。
「うんまあ、そっか。じゃやっぱりオレたちがやんなきゃいけなかったってことなのか。身元もよく分かんないようなやつを雇うって手もありそうだけど、それじゃ信用ならないもんね。うす、頑張ります! 短い間ですけど、よろしくお願いします。キリルさん、シリルさん、セイカーさん」
ぱっと話題を切って、兵士三人にそれぞれ礼をし、アルバートとジャックをそれぞれ腕を掴んで引っ張るようにしてその場を離れた。二人は抵抗する様子もなく、またお互いがお互いを探るような目つきをしていて自発的に話をしようとしない。
お互いに友人のはずなのに、なぜこんなに険悪になっているのか、千秋はよくわからない。原因はきっと忠誠の話なのだろうが、自分で突っ込んで掻きまわすのはもっと雰囲気を悪くするような気がしてできなかった。
「えっとえっと、ジャック、アルさん。オレ、心配なんだよねー」
「ん? なあに、何が心配なの、かわいこちゃん。俺に教えてごらん。パパッと解消してあげちゃうよん?」
千秋がない知恵を振り絞ってざっくりと話題を振ると、意外にもジャックではなくてアルバートが反応した。てっきりジャックが返してくると思って旅のことを話そうとしていた千秋は一瞬言葉に詰まる。「ああ」だの「うう」だの言葉にならない声を出し視線を彷徨わせていると、ふと、調教師に手入れされている移動用魔物(五体)が目に入った。
「アルさん。オレ、ちゃんとあの魔物乗れますかね? 動物に乗るとか、ポニーの乗馬体験以来やってないんすよ。えっと、ポニーってのは、オレの国のもっと大人しそうで小さい生きもののことです。そんなんでも、いけるんすか」
「ん? 乗る気? ジャックと一緒に乗るんじゃダメなの? てっきり一緒に乗るんだと思っていたんだけどねぃ」
「え。でも五体いますし、三体はキリルさんたち、一体はジャック、で、残り一体はオレ用でしょ」
というよりも、なぜ一体に二人で乗ることが当たり前のように考えられているんだ。友人と自転車に二人乗りは経験があるが、乗馬の場合は二人乗りじゃ格好がつかないように思った。
「ジャック~? チアキちゃんがこんなこと言っちゃってるよん」
「千秋がやりたいようにやればいい。自分で乗りたいのだろう?」
「頑張る! 乗りたい!」
「コツがいるけれどね。体を動かすことに自信があるようなら、練習してみよっか」
アルバートが先生役として姿勢や細部の指示をし、ジャックが千秋が振り落とされないようにフォローするという役割で魔物の乗り方講座は始まった。
「こいつらの名前はモレククアって言うんだ。モレーって略すこともあるね。人懐っこくて、早々暴れたりはしないよ。大きな図体だけれど、食べるのは専ら木の実、木の根、草と草に張り付いた微小生物だよ。そうじゃなきゃ、長旅に使われるなんてことはないだろうからね。」
「はい、アルさん!」
「襲われないから、大丈夫大丈夫。背筋を伸ばしてぇ、ああ、怖がっちゃだめだってば、怖がってるのがモレーにバレるよ。揺れに合わせて重心を移動させるんだ。判断するのはチアキだよ。自分を信じるんだ」
「オッス、先生!」
「甘い甘いっ。やさしく恋人に接するように扱ってあげるんだよー。なんでも許してあげる。これ大事。こっちが思っていることは、ぜんぶモレーに伝わるからねぃ」
「り、了解っす!」
アルバート先生の指導を千秋はひとつひとつこなしていった。モレーが止まった状態で背中に乗り、教えられた姿勢を保つことは出来るようにはなった。が、実際に走らせようとするとスピードを上げた際に後ろに飛ばされるか、方向転換をした傾きで脇に転がり落ちて危うく轢かれそうになってしまう。
危ない目に遭っては、ジャックに助けられるという出来の悪い生徒に、先生の指導も最終的に「考えるな、感じろ」というような大雑把な精神論に変化してきた。
出発まで、あと何日もなかった。
■ ■ ■
王都を離れ、キリルさんたち三人の兵士とジャックと千秋の五名は一路魔道国との国境の街フィラートへ向かっていた。
モレーとは別種の魔物を使って移動する商人や旅行者、徒歩の人間を追い越しつつ、盗賊や魔物の脅威は一切感じることなく旅程は無事、半分を過ぎたところだ。
モレーの背中の毛に埋もれるようにしてうつ伏せになり、千秋は新幹線の最高速度よりも早いんじゃないか、というくらいのスピードで流れていくのどかな風景を見つめていた。田園風景と村、ただただ広い平原、林、川、小高い丘にぽつぽつと見える何軒かの集落など。至って平和そのものだ。
盗賊団の根城にふさわしいものと言えば視界を遮る森の中や山の洞窟などだが、林では規模が小さすぎるし、街道から丸見えの丘の集落では奇襲も出来なさそうで都合が悪いだろう。三人借りる必要があったのか不思議なくらい、平和だ。
「はぁ……」
「どうした? 千秋」
「今まで緊張してたんだけど。もうさすがに王都を出てから一週間経ったし、何も起こらないでフィラートまで無事行けそうだよね」
「それはどうだろう。あまり気を張り詰めすぎるのもいけないが、かといって警戒を完全に解くには危険だ。私も、リチャード様の兵とはいえあれらをすべて信用できない。千秋は戦闘になっても、私からけして離れないで欲しい」
腹のあたりに回っていたジャックの腕が、千秋の身体を自分の身体にくっつけるように引き寄せた。背中や肩や後頭部に、ますますジャックの固い防具や筋肉の感触が感じられるようになって、千秋はうっかり離れたいですと答えてしまうところだった。
千秋はジャックの操るモレーに乗っていた。勿論、不慮の事故で千秋のモレーだけ怪我をした――というわけではなく、出発日になってもモレーにうまく乗ることが出来ないため、ジャックとアルバート、そして兵士三名の全員に反対されて、ジャックと相乗りすることになったのだった。
アルバートの魔物の乗り方講座に費やした時間はなんだったのだろうか、と思う。いや、魔物に乗るということに慣れただけでも大きな一歩ではあったのだ。
だが、それでは足りないのだ。具体的には、ジャックが腕一本を巻き付け、足の間に千秋の身体を固定させていなければ、千秋が簡単に吹き飛んでしまうという情けない事態をなんとか回避したかった。
叶わずに、その避けたい状態が今まさに行われているわけなのだが。
「なんで抱っこ……この歳になって抱っこはない」
「だが、お前はこうしていなければ飛んでしまう。私としては、千秋から抱きついてくれていたほうが、守りやすいと思う。両手が空くからな。モレーに乗ったまま剣も扱えるだろう」
「無理無理無理無理無理! 正面から抱きつくとか無理ゲーです!! 嫌すぎる!! 後ろからならまだ……まだ耐えれるけど」
「だが、私はお前を視野外に置くことはしない。……何度目だろうな、この言い合いも」
ふ、とジャックが息を漏らすように笑った。言い合いというが、ジャックが考えた千秋の身を守る為の最善の手に、千秋がただただワガママを言っているだけだ。自覚はしている。
「自分の身くらい自分の手でどうにかするつもりで、アルさんにモレーの乗り方習ったのになあ。つか、モレーに乗れないって分かった時点で、方針切り替えればよかったんじゃん? あー、ちくしょう。分かってたよな、途中で。ワンチャンないって思ってた、うん」
「突然、どうした。違う方針、とは何だ?」
「んにゃ。なんか別な、旅に役立つこと教わっておけばよかったと思ってさ。時は金なりだよー、戻んねえよ」
しかも、この考えに至るまでフィラートへの旅程の半分を使っている。なんとバカだったのか。
落ちこみそうになるが、反省したところで時間は戻ることはない。平和だな、だの、ジャックに抱きしめられてるのが嫌だな、だの、そういうことを考えている暇があるなら、今後に役立ついい案を考えておいた方がよほど為になるというものだ。思考力の低い頭を無理矢理前向きに切りかえる。
「オレがオレの身を守る方法を学んでたらよかったなってこと。戦う方法ね。剣の扱い方とか、魔法の使い方とか」
「……千秋はそんなものを学ばずとも、私が必ず守る」
「じゃなくて。ジャックが守ってくれてんのは知ってるし、信用してんだよ。でも、オレやってねーじゃん。剣を習うのも、魔法習うのも。今回みたいに、モレーに乗ろうとしてみたけどやっぱ無理、ってのは試したからわかることじゃん。試さずに可能性削んのは性に合わないんだよ」
「試してみたいというだけか?」
「試したいのは、うーんと、やれるかどうかじゃなくて、もちょっと先の話で。戦術って言うにはお粗末だけど、こう、ジャックが守りながら戦いづらいような敵――すんげー強敵でも、複数の雑魚に囲まれたとかでもなんでもいいんだけど――と遭遇したとするじゃん。で、そん時、実際オレのこと守ってちまちま攻撃してたとすると、戦闘が長引くだろうし体力削られるしじり貧だろ? オレが最低限自分で自分の身を守ることができたら、ジャックもオレを守るために使ってる力を、すぐに決着つけるために使えるだろ。結果的にオレも危なくないし、ジャックも全力注げて成功確率上がるし、いんじゃないかな」
千秋は身体をひねるようにして、ジャックを振り返った。すぐ近くに、ジャックの首筋があり、視線をあげると顎から耳にかけての引き締まったラインが見えた。顔は、彫りが深いせいで出来た影のせいで表情が読めなかった。考えこむように、彼は口を閉ざしている。
沈黙に耐えかねたのはやはり千秋のほうだった。ことさらに明るい声を出して、わざとらしくでも構わず笑った。
「実際守られてるだけって男として何か恥ずかしいんだよね。やっぱオレ、自分のことは自分で出来るようになりたいって思ってるんだ」
「私は要らないと?」
「違うよ! 別にジャックが必要ないわけじゃない。だって、ほら、さっき言った、すぐ決着がどうのこうのって話は、ジャックがいるの当然ってか、お前ありきで考えちゃってるしさ。えっと、一人だけでどうにかしようと思ってるんじゃないんだ。なんてったって、お前とは一蓮托生だからな。今だと、ジャックにばっか負担が大きいからな。オレがもちょい頑張って、お前と対等な位置になりたいんだ」
千秋はそう言って、照れたように頭を掻いた。その後バランスを崩しそうになって、慌てて彼は両手でモレーの首を掴んで耐え、ジャックは腕に力を込めて万一の事態を防いだ。無事に耐えることが出来て、千秋はほうっと息をついて、後は黙ってしまった。
ジャックは千秋の言った『対等な立場』、という言葉に、ふと――、千秋がリチャードの頼みを承諾したときのことを思い出した。
『ジャックのためになるって、どういうことすか?』
王子に返事を促され、隣に座っていた小柄な子どもがまず聞いたことがそれだった。
『詳しいことは、僕の口から語るべきことじゃない。彼が乗り越えなければならないことだ。ジャックが嫌がるから、僕はもうこの件に関しては喋らない』
『ん。そうすか。――願いのこともそうだし、ジャックには、言えないことがあんのか。あんま、聞くのはな。……乗り越える、つったら、悪いものっぽいけど、なんだろ。助けてもらいたいって考えるやつには見えないけど。オレになんか出来たら、対価になるんかな』
リチャードに返事をしてから、千秋はぶつぶつと独り言をつぶやいた。隣に本人がいるというのに、まったく配慮をしていない。独り言をしているのに気づいていないのかもしれなかった。
対価を――と素直に考えてしまう千秋は、無垢な子どもそのものだ。対価は確かにこの国の、この世界の常識として正しい。けれど、対価が即ち対等であるかどうかは関係がないのだ。ジャックは苦悶に眉を寄せた。
『オレ、やります』
『その言葉を待っていたよ。よく決断してくれたね』
『つっても、あの、ジャックが嫌じゃなければ、なんすけど』
『大事なのはきみの決断だよ。ジャックは否定しない。きみはきみの思うとおりに行動するべきだよ』
八重の花が開くように笑う王子の前に、千秋は頷かざるをえなかった。彼がジャックに意見を求めたのは、王子の言うように決断できないからではない。ジャックは知っている、彼は優しくて無垢なだけなのだ。それゆえに騙されやすい。
ジャックは回想を終えて、ぎゅう、と千秋の身体を抱きしめた。
「千秋にはきっと私は敵わない」
「えー? どういうことだよ。ちょーつえーぞって話か?」
「逆だ、千秋を傷つけられない私は、お前に屈するしかないだろう、ということだ」
「なんかそれって、ちょい気持ちわりーけど、大丈夫か?」
「本当のことだ。私には子どもを傷つけられない」
「いやいや、最初の夜忘れたのかよ」
「……暗闇だったからな」
「言い訳くせぇー」
千秋はけらけらと笑い、ジャックの脇腹に軽く肘鉄をかました。分厚い筋肉に阻まれ、衝撃はまったくなかったが、なぜかジャックは少しだけ痛みを覚えた。脇腹ではなく、どこか別の場所に。
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