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永久を統べる少年  作者: 水下たる
■本編
14/18

13 - ジャック VS ユリウス

「何より、私がお前を守る。必ず」

「……ああ。信じてんぜ、そこはな」


 ジャックの力強い言葉に、千秋も真剣な顔をして頷く。穴に落ちる前に聞いた、キリルとの会話を思い出す。すなわち、ジャックの『守る』という言葉は、千秋が思っていたよりも重く、先のことまで考えた言葉だということ。

 自分に対するジャックの行動のひとつひとつが思い出される。『守る』と彼が約束してから、ジャックが千秋を裏切ったことなんて一度もない。むしろ過剰なくらいだった。千秋とジャックが約束したことはたったひとつだった。千秋が帰るまで、ジャックが守ってくれる。それだけは信じられる。


「オラオラオラ、さっきからこのオレ様を無視してくれちゃってェ。ふざけんじゃねェぞォ、てめェ。誰がザコだァ。死にてーのか、自殺希望者様ァ!」


 ユリウスは待ちくたびれたように大剣をぶらぶらとさせながら叫んだ。ジャックがやる気を出しているので、早く始めようという催促だ。

 奇襲を行わないのは、自信の表れなのか、相手を殺すことよりも戦闘にのみ喜びを見出しているからなのか、剣を交じ合わせた時にジャックの技量を計ったからなのか。あるいはすべてかもしれない。


「ザコ、だと? そんなことは一言も言っていないが?」

「オレ様は貴様に負ける、ただの魔道士じゃねェっつってんだよォ!! さっさと始めようぜェ。遊ぼうじゃねェの! 殺し合おうじゃねェのォ!」

「断る。私は貴様を殺すつもりはない。生け捕りにする」

「あん?」

「勿論、殺されるつもりもない」

「あはァ! そうかよォ! せいぜいがんばりなァア!」


 ユリウスは蒼と白が混じり合った髪を掻きあげて、相手の初動を待った。

 楽しむだの、相手の力量を計るだのという考えは、ジャックの中には無い。あからさまに見せられた隙に、誘い込まれているようだが、迷わず動いた。千秋をその場に留まらせたまま、地を蹴って直進する。正面、上下左右、どこへ剣撃が来ても千秋には届かない。

 素直すぎる動きにユリウスは、鼻で笑い、ゆらりとマントを翻してジャックの心臓を狙える位置に回るように移動する。ジャックから見て右手、ジャックが剣を持っているほうだ。

 まるで剣で狙ってください、というように剣に近付いてきたユリウスを、ジャックはワンテンポ遅れて理解する。ユリウスはセオリーで動いているわけではない。気ままに、殺すために、楽しむために、動いている。感覚に頼るほうが余程戦える。

 ジャックは先に剣を振るった。空振りだったが、想定内だ。ユリウスが突きだす心臓への一撃の瞬間、半歩踏み込んで剣筋の軌道を変えるため、柄で相手の手首を叩く。

 ユリウスはニヤリと笑って、持ち手を変えて大ぶりの剣を自分の正面で回転させた。瞬間、後ろに跳んで回避する。

 ジャックの攻撃、ユリウスの攻撃が二回で、どちらも変わりないようだが、ジャックの動きはユリウスの戦い方への対応から来るものだ。自分の形で攻撃できていない。


「オラッ、もっと来いよォ! もっと出来んだろォ!」


 ユリウスが高らかに笑いながら、煽るようにジャックに二連撃を放つ。どちらもジャックが身を引くだけで回避できたが、そもそも相手はその攻撃を当てようだなどと思ってはいまい。

 続く大ぶりの袈裟掛けの斬撃も、まるで「早く来い」と言っているようだった。

 ジャックはぐっと剣を握り直すと、二回目の左上から右下への斬撃を剣で弾き返した。ノックバックが発生したところに、地を跳んで後ろを奪い、長いマントに覆われた背中を斬る。布が裂ける激しい音が聞こえたが、肉を捉えた手ごたえはなかった。

 ジャックの目の前にある背中がブレて、空中にぱっと霧散した直後。

 ユリウスが正面から切り込んでくる。ジャックは素早く足を開いて体勢を整え、ユリウスの剣が放つ強撃を自分の剣で受け止めた。


「ひゃっはァァァァァ! やるなァァアア! 見破ってたってかァ!?」


 力で押し切るのが無理と分かるや否や、ユリウスはゆらゆらと左右に揺れながら後退し、剣筋の通りに斬り込みを入れられたマントを引きちぎった。どこまでが実体だったのか。

 ギリギリになるまで分からなかったはずはないから、ジャックが誘われた形なのだ。


「誘われたことに理解できていればよかった」

「あーはァ。理解早いなァ! いーぜ、いーぜェ。もう一度騙してやんよォ」

「もうマントはない、二度は使えない」


 剣の交じり合う音。土を蹴る音。腕を振り抜く音。

 ジャックは再び誘いこまれる形で側面からユリウスに攻撃しそうになったところで、踏みとどまった。ゆらりと目の前のユリウスがブレたように見えたからだ。二度目か。いや。

 ワンテンポズレた攻撃の手を、戦闘狂が逃さない手はない。ユリウスは自身の小手で、愚かな剣士の得物を弾くと、大ぶりの剣を彼の頭上から振り抜いた。

 静かに観戦していた千秋は、彼の初めての危機に、思わず声をあげそうになった。


「ジャッ……!」

「平気だ」

「は!?」


 すぐ隣から聞こえた声に、千秋は心臓が止まるかと思った。さっきまでユリウスの前で無防備になっていた男が、なぜかすぐそばに立っている。


「え? え? 今、斬られ、え?」

「平気だ」


 千秋はまだ、状況が把握できていない。ジャックはユリウスと自分の顔を見比べて首を傾げる少年の前に立つと、剣を構えて相手を見据えた。

 ユリウスはまるで試し切りでもするかのように、剣を振るっている。


「先ほどのは、実物だったか」

「あーはァ。どっちでもイケたぜェ?」

「それほど発動が早いか……。厄介だな」

「てめェは、糞早ェなァ。剣はともかく、そっちは全力ってかァ?」


 ジャックは否定しなかった。殺すつもりならまだしも、殺さずして無力化する剣術を知らなかったからだ。殺さずに解決することを学んだのさえ、つい先ほどのこと。盗賊団の一件だ。

 今回は、素人同然の人間が相手ではない。ユリウスの様子からいって、隙を見せれば相手に逆に殺されるだろうことは間違いないだろう。


「オレッ、様もっ、全力! 出し、てェ、ぜェ!」


 ユリウスが六回、袈裟掛けと上から下、右から左へ剣撃をうつ。あからさまに一撃から次の一撃に入る動作速度があがっている。まるでジャックの回避方向が分かっているような絶妙な連撃。最後の一撃以外はすべて受け止めざるを得なかった。

 最後の一撃を、横跳びで避けられると、ユリウスは鼻を鳴らして追撃を諦めた。振り抜いた剣の勢いは止めることなく、ぐるぐると頭上で大剣を回すパフォーマンスをした。


「まァ、全力なんて、出さねェけどよォ!」

「出さない? なぜだ」

「ひゃはは。聞く? 聞くかァ。この後ォ、お遊びも残ってんだよなァ。楽しい楽しい虐殺がよォ……! 分かっちゃ居るんだけどなァ。虐殺は抵抗なくてつまんねーからなァ。素質見つけんのは楽しい作業だけどよォ。あァ、今度は、どのくらいの、ガキが、オレ様の、モノに、なんのかねェ!」


 ハシバミ色の目が歓喜に細められ、まるでその場に、死の恐怖におびえる一般市民がいるかのように、一人、二人、と首を断ち切るような動作をした。ブンッと風を切り、ユリウスの大剣が真一文字に閃く。想像通りなら、断末魔をあげて首が飛び、血をまき散らす人間がいるはずだが、そこには勿論誰もいない。

 ジャックは自分の手のひらを見、千秋にちらりと視線をやった。人殺しを極端に嫌う少年は、興奮状態のユリウスを見つめ、顔を青ざめさせて硬直している。すべて聞こえているのだ。


「また、お前たちは、同じことを繰り返す気なのか」

「あん?」


 ぴたり、とユリウスが空中でのパフォーマンスを止め、ジャックにぐるりと顔を向けた。


「百年。五十年。二十五年。十五年。五年。三年。段々、狩りに出る間隔が狭くなってきたな。そんなに、子どもが少ないのか?」

「あーはァ。そういうことかァ。ま、これは隠してねーし。知ってんのもおかしかねェがァァァ。<殺戮兵器キラーマシン>といい、てめェは、どこまで知ってやがる?」


 ジャックは一瞬、言葉に詰まった。


「<殺戮兵器>が狩りのために必要なものだということ」

「ひゃははははははァァァ。まさか、<キラーマシン>の哀れな被害者様だったりすんのかァ?」

「だったらどうする?」

「十八年前までのことだったらァ、謝ってやってもいーぜェ? オレ様のせいだからな」

「やはり……お前が、今の<殺戮兵器>なのか」


 ジャックの問いかけに、ユリウスは耐えきれずに吹き出し、腹を抱えて笑う。ユリウスにとっては、<殺戮兵器>だなんて古臭くて黴の生えた素質名のひとつだ。確かにもてはやされた時代もあったが、今は違う。


「ひゃははははははァ。<キラーマシン>? だっせーぜェ。やめろォ、オレ様をそんなシングルの素質で呼ぶんじゃねェ!」

「……なんだと?」


 どうやって、目の前の黒い男がその名称を知っているのかは分からない。が、どうせ魔道国の外にいる人間は、過去にばかり気を取られて、魔道国が変化するのについてこれない。

 <キラーマシン>は自分のアイデンティティの一部を構成していることには違いないが、自分の価値はそんな小さなものだけで表しきれないのだ。


「だって、オレ様の素質は、<キラーマシン>だけじゃねーんだぜェ! 素質をあげてけばキリがねーくらい、オレ様、超万能。超最高のォォォ、<混血児ハイブリッド>様よ。かっけェだろ? ニューエイジ! 時代の寵児!」

「<混血児>、だと?」


 ジャックは聞きなれない単語に眉根を寄せた。


「さすがに知らねえかァ。でも、隠そうとしてる訳じゃないんだぜェ? 教えても、全員生き残らないからなァ。面倒で、教えねェだけよ」

「魔道国に何が起きてる? 狩りの間隔が早くなったことと関係があるのか?」


 固い表情を見せた相手に、ユリウスは肩をすくめて見せた。魔道国が何をしようと、狩られる側には関係がない。知ったところで、ただただ搾取されるだけなのだから。


「あーはァ? 知らねェなァ! ――うらァ!」


 真実を追い求めるあまり、剣を構えるのを愚かな被害者に、ノーモーションで距離を詰め、突きを放つ。体重を乗せた、ブレひとつない一撃。完璧だったが、その攻撃は空を切った。


「……ちっ、外れか」


 ユリウスは舌打ちすると、おもむろに顔面の前に剣をかざした。次の瞬間、キンッ、と剣身同士が弾き合う鋭い音がした。ジャックの反撃を、盾のように剣で受け止めたのだ。バックステップで互いに距離を開け、二人は対峙した。


「魔道国は、何をやろうとしているんだ?」

「そりゃァ、いつでも同じよ。子ども拉致ぃの、この世界を取り戻そう、的な? オレ様が世界を救う、的な?」


 魔道国の求めるものなんて、単純明快、子どもでも分かることだ。すなわち、世界に選ばれた民だけが、生き残ること。あるいは世界に選ばれた民が統一する国を作ること。

 ユリウスの言葉に、ジャックはかっと目を見開き、剣撃を放った。首元を狙った一撃。この時だけは、彼は『殺さない』という戒めを忘れていた――、だが互いに力を抜いて互角の勝負をするような人間を、簡単に殺すことなど出来るわけもなかった。


「おっと。何よ、何よ。人が喋ってんだろォ? お怒りかァ、早ェけど、雑だぜ?」


 ユリウスはジャックの剣を手で掴んだ。どうなっているのか、素手で剣に触れたのに、斬れた様子もない。魔道で鎧をつけているのかもしれない。


「チッ、放せ」

「あん?」


 自分の得物を取られた状態となったジャックは、振りほどこうと剣身を揺らした。が、ユリウスはより深く剣を握りしめ、ジャックに近付いた。

 ハシバミ色の目にジャックの顔が正面から映り込む。


「お前、どこかで見たことがあんなァ? どっかで会ったかァ?」

「どこにでもいる顔だ」


 鼻と鼻が触れ合いそうな距離まで来た時、ジャックは重心を落とし、回し蹴りを放った。ユリウスはまるでそのタイミング、勢い、振り抜き方が分かっていたかのように、ゆらりとかわし、剣をジャックに押し戻す。

 たたらを踏んだジャックに、ユリウスはニヤ、と酷薄な笑みを浮かべた。


「いや、見た顔だぜェ。そうだなァ、どこだったかなァ……。記録写真だったかなァ」

「……!」


 動揺したようにジャックの瞳が揺れる。千秋の視線を感じる。彼に聞こえている。

 ジャックは地を蹴り、連撃を試みた。一撃一撃の重さは考えない。速さだけ、何も考えずに、振るえるだけ振るう。


「必死、必死! んな必死にあがくなよォ。思い出してぇのに笑っちまって思い出せねェじゃねェかァ――」


 ユリウスはおかしくてたまらないと言ったように身体を揺すりながら笑う。心の乗っていない剣撃なんて、構える剣の位置をわずかに変えるだけで勢いを殺せる。まるでお遊びだ。

 どうしても、続けて欲しくない話題なんだろう。ユリウスは、他人の嫌がることをするのが大好きだ。人を傷つけるのが生きがいだ。人が絶望する顔が嬉しい。苦悶に頭を掻き毟り、「やめてくれ」と懇願するのが溜まらない。

 『殺さなれない、殺さない』などと大きなことを言ってのけた冷静な男の変貌ぶりは、ユリウスの嗜虐心を煽った。


「なんだ……? 何を焦ってるんだ、ジャックは?」


 千秋は、いきなり我を忘れたように剣を振りまわすジャックの姿にうろたえた。相手の出方を見、隙を狙うような今までの戦い方とはまるで違う。千秋にもわかるくらい、太刀筋がめちゃくちゃだ。

 嫌な予感がする。


「んー、なんだっけなァ?」


 わざとらしく首を傾げ、ユリウスはより一層雑になった一撃を受け止めた。ジャックの隙だらけの脇腹を蹴りあげて、相手を自分から引き離す。

 ユリウスは、もうすっかり、『思い出して』いた。より効果的な戦い方すら分かってしまった。だが、実践しない。焦る男が楽し過ぎて、もう、永劫にいたぶってやりたいとすら思う。

 ニタニタと唇の端をあげたユリウスの耳に、どたばたどたばた、うるさい足音が聞こえてきた。大きな眼鏡に、ぶかぶかのローブを引きずった少年――ギルだ。


「へい……ユリウス様ああ! <ウィザード>たちを連れてきましたですぅぅ!! ミレイユも準備いーですです!」


 相変わらず、言ってはならない呼び方で呼びそうになりながら、おつむの足りない眼鏡っ子はぶんぶんと小さな腕を振って存在をアピールした。

 グォオォォォオォオォ、とその場を揺らす、まるで突風のような鳴き声もどこからともなく聞こえてくる。命令を下せば、その声の主はすぐに来るだろう。


「……げっ!? ヤバいんじゃないの!?」


 千秋は、轟音に耳を塞いで耐えながら、悲鳴を上げた。ジャックは脇腹を押さえたまま、苦しそうにうめいている。十二対一では、どう考えても分が悪すぎる。


「おォ、いいところに来たな。ギル。お前にしちゃァ、上出来だ」


 ユリウスは珍しくギルを褒めると、ジャックの元に走り、下から上へ突きあげるような一撃を放った。当然、ジャックは下に構えるようにしてその勢いに耐える。

 顔が見える。ユリウスは喉奥でおかしそうに笑い、ギルを振り返った。


「お前、この男の顔に見覚えがないかァ? どーも、物忘れしちまっていけねーぜェ」

「ひゃう? そいつの顔ですぅ? んんー。んんー? わわわ分かんないですよぅ。どっかで会ったんですぅ? ボク、人の顔覚えられないですですぅ」

「バカなてめえでも分かるから聞いてんだよォ。日常的に見てんぜェ?」


 会話を聞いたジャックは、ユリウスの攻撃を受け流そうとして力を緩めた。そうはさせない。ユリウスはねじ伏せるように手首をひねって持ち直し、今度は上から下へジャックの剣を抑えこむ。


「ええ? ――あ! 『英雄』様にそっくりです!?」


 ぴくり、とジャックの肩が震えた。

 間違いないようだ。ユリウスは、押さえきれない衝動に、歯を剥きだしにして笑う。バカすぎる部下でも知っているような、超有名人。


「あァ、そうだ、そうだ……。お前の顔はァ、魔道王サマの――『陛下』の、執務室に飾ってある顔。でもって、歴史の教科書にもなっててェ。オルランドの塔のギャラリーにもあるウチの国の英雄にそっくりだなァ?」

「……」


 ジャックは答えなかった。さっと剣を抜き、その場を跳んで離脱する。


「あは? ビンゴか?」


 これでは、自白したようなものだ。ユリウスは最高の気分で、大笑いする。


「ひゃははははははは! <キラーマシン>ナンバーイレブン、の顔。そのまんまだぜェ。英雄様の兄弟でも、ガキでも、親族でもねーな!? 本人だろォ!」

「……」

「えええっ!? 英雄様ご本人なんです!?」


 ユリウスの言葉に、ジャックは沈黙で返した。

 ギルが大仰に驚き、<ウィザード>たちも、敵と上司の一対一の勝負から一転した、唐突な英雄の登場に動揺を隠せない。誰かが噂し合い、否定し合い、それを聞いてまた誰かが「まさかそんなはずは」と信じられないといったふうに呟く。だが、その場の誰よりも、ユリウスの言葉は影響力を持っていた。


「何が被害者だァ? お前も、加害者側じゃねェの!! なァ!? オレたちにとっての英雄様!」

「え? え? なんだ? ジャックが英雄って、どういうことだ?」


 その場で何も分かっていないのは、千秋だけだった。<キラーマシン>がなんなのかも、『英雄』の意味も、さっぱり分からなかった。

 ただ、それが、彼が隠したがっていたことなのかと――、どこかでぼんやりと思った。何か、よくないことなのだと。


「ひゃははははは、っかしィぜェ!!! なァ? ギル。おかしいよなァ? あァ? 笑っちまうよなァ!?」

「え? え? 何がおかしいんですぅ? わ、わかんないですぅ」


 ユリウスは上機嫌で両手を広げ、天を仰いで笑っている。あまりにも機嫌がよすぎると、落差が怖い。ギルは地雷を踏まないよう、びくびくしながら尋ねる。


「何がおかしいってェ、死んだはずの! 英雄様が!! ここに!! いることだろォが! バカメガネェ!」


 一体何を学んで来たんだ、と言いたげに、ユリウスが出来の悪い生徒に教える教師のような口ぶりで言った。


「ジャックが……、死んでる、はず、だって?」

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