エピローグ①
ファンダメンタル・ピュア・ゴールドが発見された翌日。
私たちはピクニックをした。
アリスのミゼットの後部座席に立つ、旗を持つエラリィを先頭に行進。
目指すはコプリ広場。
このピクニックには全員が、もれなく参加した。
皆、それぞれ、違う表情で。
ファーファルタウの民謡を歌いながら。
丘を越え行こうよ、
口笛ふきつつ、
空は澄み青空、
牧場をさして、
歌おう朗らかに、
ともに手を取り、
ランララランラン、ララ、ランラ、ランラ、
ランラララ、アヒルさん
ランラララ、ヤギさんも
めぇえ、
ララ、歌声あわせよ
足並みそろえよ
今日は、愉快だぁ
ピクニックを元気一杯歌いながら。
コプリ広場の中心を目指した。
その中心、噴水のあった場所、ゴールドが噴き出した場所には、再び円形の硬いプレートで蓋がされていた。
その上に大きなシートを敷き。
その上にバスケットを並べ。
そして。
周りを囲む、素敵なピンク色の花弁を眺める。
「これじゃあ、ピクニックじゃなくて、」マイコは視線を上に向けて言う。「お花見ね」
「お花見?」
「日本ではね、桜を見上げてお酒を飲むの、春って、そういう季節なの、シンデラでも同じ季節を味わえるとは思わなかったな、」マイコはアルコール濃度の高いウイスキィのボトルに口をつけて、傾ける。「でも下から見上げるのは、初めて、いつも天守から眺めていたから、とても、ええ、綺麗ね、青い空が桃色に染まるのって」
そのとき。
風が拭く。
桜の花びらが舞う。
羽根のように、ゆっくりと、私の手の平に落ちた。
そして、その日の夜。
私は今。
ミケのピアノに合わせて歌を歌っている。
場所はゴールド・シンフォニィ。
ミラーボールの下。
一段高くなった円形のステージで。
賑やかな夜。
賑やかなお客さんたちを目の前に。
私は歌を歌っている。
ファンダメンタル・ピュア・ゴールドによって治癒したミケの指によって奏でられるピアノ。
それに合わせて、一緒にアレを歌っていた。
私は歌いたかった。
派手な歌を。
そういう気分だったのだ。
ステージに一番近いテーブルにはサブリナ、ミッキィ、ドナルドが座っている。
サブリナは頬を指で触り、私を見てずっと微笑んでいる。
私はサブリナとしばらく付き合うことに決めた。
サブリナに、私を解き明かしてもらおうと思った。
私の中のミステリィ。
難解なトリック。
未来。
それが分からないままなのは、とても不愉快。
ヒステリックが溜まる。
ずっと変化のない、私の心の中の現象。
しかし、でも。
サブリナが、解き明かす。
そう言っているのだから。
サブリナが私を見て、微笑んでいるのだから。
すぐに見つからなくても。
きっと。
後できっと、見つかるだろう。
見えるだろう。
私の未来。
だからこの、ヒステリックだって。
私はしばらく、抱き締めていようって。
そう思ったのだ。
私の未来は、私のものなんだから。
誰に委ねるのも、私の自由。
私はサブリナを選ぶ。
黒頭巾の、サブリナを。
派手な曲が終り、私とミケは袖に下がる。
その際、入れ替わった人に私は驚く。
マイコだった。
スカートの短い、真っ赤なドレスを着たマイコとすれ違った。
彼女は私に軽快なウインクを見せた。
マイコの後ろに、ピンク色のドレスを着たリンプとピンク色のスーツ姿のケンタロウが続く。
マイコを中央に、三人はステージに立った。
ミラーボールが回転。
その光に照らされて。
ゴールド・シンフォニィの派手な演奏が開始される。
マイコの派手な歌。
三人の派手な踊り。
私のパフォーマンスよりも、ずっと派手だった。
後ろの二人の踊りはぎこちなかったけれど。
とても面白くて、楽しくて、それは涙が出るほどだった。
マイコの歌が響く中。
「ソフィア、」ミケが私に言った。「サクラメントに帰ろうか」
「そうね、」私は笑顔のまま頷いた。「帰ろっか、……でも、いいの?」
「何が?」
「彼のことは?」
「ああ、そっか、」ミケは暗い天井を見て、短く考え、笑った。「ファーファルタウの時みたいに置き手紙でも書けばいいかな、それでもう、帰る、早く帰りたな、私の日常はもう、クァンドのピアノの下だから、なんだか特別な時間が長すぎて疲れちゃったよ」
マイコの派手な歌が終わった。
袖から客席を覗き込むと、スタンディング・オベーション。
アンコールの声で溢れている。
マイコが袖に戻ってきた。
そしてなぜか、私とミケの手を掴み、ステージの方に引っ張った。
「一緒に踊りましょう!」
『え、踊る!?』私とミケは顔を見合わせた。
「いいでしょ? ほら、早く!」
私の未来、これから。
それは派手な踊りを踊ることじゃないのは分かっている。
とにかく今は、踊るけど。
ステージに立ち。
大きく深呼吸。
「いくよ」マイコの声。
目を開ける。
派手な演奏が始まった。




