表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(ゴールド・ラッシュ・ライク・ア)ピクニック  作者: 枕木悠
エピローグ (ゴールド・ラッシュ・ライク・ア)ピクニック
60/64

エピローグ①

ファンダメンタル・ピュア・ゴールドが発見された翌日。

 私たちはピクニックをした。

 アリスのミゼットの後部座席に立つ、旗を持つエラリィを先頭に行進。

 目指すはコプリ広場。

 このピクニックには全員が、もれなく参加した。

 皆、それぞれ、違う表情で。

 ファーファルタウの民謡を歌いながら。

 

 丘を越え行こうよ、

  口笛ふきつつ、

  空は澄み青空、

  牧場をさして、

  歌おう朗らかに、

  ともに手を取り、

  ランララランラン、ララ、ランラ、ランラ、

  ランラララ、アヒルさん

  ランラララ、ヤギさんも

  めぇえ、

  ララ、歌声あわせよ

  足並みそろえよ

  今日は、愉快だぁ

  

  ピクニックを元気一杯歌いながら。

  コプリ広場の中心を目指した。

 その中心、噴水のあった場所、ゴールドが噴き出した場所には、再び円形の硬いプレートで蓋がされていた。

 その上に大きなシートを敷き。

 その上にバスケットを並べ。

 そして。

 周りを囲む、素敵なピンク色の花弁を眺める。

「これじゃあ、ピクニックじゃなくて、」マイコは視線を上に向けて言う。「お花見ね」

「お花見?」

「日本ではね、桜を見上げてお酒を飲むの、春って、そういう季節なの、シンデラでも同じ季節を味わえるとは思わなかったな、」マイコはアルコール濃度の高いウイスキィのボトルに口をつけて、傾ける。「でも下から見上げるのは、初めて、いつも天守から眺めていたから、とても、ええ、綺麗ね、青い空が桃色に染まるのって」

 そのとき。

 風が拭く。

 桜の花びらが舞う。

 羽根のように、ゆっくりと、私の手の平に落ちた。

 そして、その日の夜。

 私は今。

 ミケのピアノに合わせて歌を歌っている。

 場所はゴールド・シンフォニィ。

 ミラーボールの下。

 一段高くなった円形のステージで。

 賑やかな夜。

 賑やかなお客さんたちを目の前に。

 私は歌を歌っている。

 ファンダメンタル・ピュア・ゴールドによって治癒したミケの指によって奏でられるピアノ。

 それに合わせて、一緒にアレを歌っていた。

 私は歌いたかった。

 派手な歌を。

 そういう気分だったのだ。

 ステージに一番近いテーブルにはサブリナ、ミッキィ、ドナルドが座っている。

 サブリナは頬を指で触り、私を見てずっと微笑んでいる。

 私はサブリナとしばらく付き合うことに決めた。

 サブリナに、私を解き明かしてもらおうと思った。

 私の中のミステリィ。

 難解なトリック。

 未来。

 それが分からないままなのは、とても不愉快。

 ヒステリックが溜まる。

 ずっと変化のない、私の心の中の現象。

 しかし、でも。

 サブリナが、解き明かす。

 そう言っているのだから。

 サブリナが私を見て、微笑んでいるのだから。

 すぐに見つからなくても。

 きっと。

 後できっと、見つかるだろう。

 見えるだろう。

 私の未来。

 だからこの、ヒステリックだって。

 私はしばらく、抱き締めていようって。

 そう思ったのだ。

 私の未来は、私のものなんだから。

 誰に委ねるのも、私の自由。

 私はサブリナを選ぶ。

 黒頭巾の、サブリナを。

 派手な曲が終り、私とミケは袖に下がる。

 その際、入れ替わった人に私は驚く。

 マイコだった。

 スカートの短い、真っ赤なドレスを着たマイコとすれ違った。

 彼女は私に軽快なウインクを見せた。

 マイコの後ろに、ピンク色のドレスを着たリンプとピンク色のスーツ姿のケンタロウが続く。

 マイコを中央に、三人はステージに立った。

 ミラーボールが回転。

 その光に照らされて。

 ゴールド・シンフォニィの派手な演奏が開始される。

 マイコの派手な歌。

 三人の派手な踊り。

 私のパフォーマンスよりも、ずっと派手だった。

 後ろの二人の踊りはぎこちなかったけれど。

 とても面白くて、楽しくて、それは涙が出るほどだった。

 マイコの歌が響く中。

「ソフィア、」ミケが私に言った。「サクラメントに帰ろうか」

「そうね、」私は笑顔のまま頷いた。「帰ろっか、……でも、いいの?」

「何が?」

「彼のことは?」

「ああ、そっか、」ミケは暗い天井を見て、短く考え、笑った。「ファーファルタウの時みたいに置き手紙でも書けばいいかな、それでもう、帰る、早く帰りたな、私の日常はもう、クァンドのピアノの下だから、なんだか特別な時間が長すぎて疲れちゃったよ」

 マイコの派手な歌が終わった。

 袖から客席を覗き込むと、スタンディング・オベーション。

 アンコールの声で溢れている。

 マイコが袖に戻ってきた。

 そしてなぜか、私とミケの手を掴み、ステージの方に引っ張った。

「一緒に踊りましょう!」

『え、踊る!?』私とミケは顔を見合わせた。

「いいでしょ? ほら、早く!」

 私の未来、これから。

 それは派手な踊りを踊ることじゃないのは分かっている。

 とにかく今は、踊るけど。

 ステージに立ち。

 大きく深呼吸。

「いくよ」マイコの声。

 目を開ける。

 派手な演奏が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ