第六章②
チャイナ・タウン、三十二番街のファンシィ・キディ・ラビットのコレクターズ・ショップで、ネイチャは緑色の魔法を編んだ。
早緑色に輝く粉が産まれ、伊香保シデンを惑わせた。
粉を吸ったシデンは今、アンジュのことをルッカだと思っている。現実の世界のことが歪んでしか見えないようになっている。シデンはアンジュに寄り添い、とろんとした表情で囁き続けている。「もうどこにも行かないでくださいよ、ルッカ様ぁ、ルッカ様ぁ、ルッカ様ぁ」
「少し可哀想ね、」アンジュはシデンの髪の毛を触りながら、ネイチャに微笑む。「まだ小さいのに、特別な力を持ったせいで、悪い人たちに利用されてしまうのね」
「少しの間だけです、」ネイチャはラビットのグッズが並んだ棚を見ながら答える。「アンジュ様の十二年間に比べたら、それはきっと、とても短いものでは?」
「そうね、長かった、でも、お伽の国から帰ってきたみたいに、現実感がなくて、ええ、きっとそうね、あなたのせいね、あなたのお母様が髪の毛を短く切ったら、今のあなたにそっくりだと思う、だから現実感がないの、お母様と会話をしているみたい、不思議だわ」
「アンジュ様も、お変わりなく、美しいままで、」ネイチャはカウンタを挟み、アンジュの正面に立ち、ニッコリと微笑む。「世界一美しいと評された美貌は、そのままで」
「得意のナイチャ・スマイルね、」アンジュはネイチャを見つめてくる。「あなたもお母様と同じように、私に触りたい?」
「私はネイチャです、母とは違います、私の素敵な笑顔は、ネイチャ・スマイルです」
「そうね、あなたは違う人なのよね、でも、それを理解するのは、ゆっくりでいい?」アンジュは愉快そうに微笑む。「そうね、名前以外に、違うところは?」
「魔女としてのポテンシャルはおそらく、母よりも上かと、私の緑の方が濃いです」
「華麗ね、」アンジュはネイチャの髪を触る。「それから?」
「帝国への愛も」
「私への愛は?」
「それも上です、母よりも」
「言ったわね、」アンジュは睨むように上目でネイチャを見て、手を触った。「あなたの言葉を否定する、ナイチャはいないわ」
「信じるも何も真実です、」ネイチャは歯切れよく言った。「それではアンジュ様、シデンに命じて下さい、ダウジングをするように、我らがゴールド・ラッシュのために」
「我らがゴールド・ラッシュのために、」アンジュは可笑しそうにネイチャの言葉を復唱して、シデンの耳元に唇を近づける。「お願い、シデン、ファンダメンタル・ピュア・ゴールドを見つけて頂戴」




