新生活の始まり~一日目
王族から一般市民になったリム王子。
庶民の生活を頑張って馴染みながらも、周囲に起きる問題に
未だに抜けない王子様態度でぶつかっていく―
ほのぼのコメディーです。
―デルム王国暦、696年ー
オルド15世により、王政から共和政へと移行。また王族の管理下であった土地、国宝など財産全て仕分けされ、王族は一般市民として位置づけされた。一般市民と同じ生活区域に用意された住居、そして必要十分な財産を与えられて、一般市民として生活する事になった。
議会からの要望もあり、市民へと政権を譲ったオルド15世はデルム評議議員として国政に携わる事となった。
―王国暦697年、新年―
「ふふ、今日から余は自由の身か‥あの堅苦しい生活ともオサラバという訳じゃな」
一般居住区の内の一軒、誰もいない家の中で赤髪を揺らし、一人の少年が明るく呟く。住居の中は既に整えられており、必要な家財道具などの配置されていた。少年は早速、寝室に荷物を置き、まだ誰も使っていない寝台に身を投げて横になった。
少年の名前はリム・オルド。本来ならば、オルド16世として世間に広く知れ渡る事になっていた王子である。だが、既知の事実であるようにオルド15世は絶対王政から共和政へと政治体制を変え、王族という身分は消失した。
それにより、今現在王子は一般人として新生活を始める事となったのである。
(さてさて、明日はまず“仕事”を探さねばな‥‥‥にしても、硬いのう。まるで絨毯ではないか)
王子が寝ているのはウォーターベッドに加えて羽毛布団の上ではあるが、どうやらそれでも満足しないらしい。時折、寝苦しそうに何度も寝返りを打つ。
(‥仕方あるまい‥風呂にでも入り、身体を温めて心地よく眠るとしよう‥)
リムは起き上がるとふらふらとした足取りで風呂に向かった―
―が
「風呂が湧いておらぬっ!!!」
今までは当たり前のように受けていた恩恵。しかし今、目の当りにする無慈悲な現実とのギャップは王子をどん底に叩き落とすには十分なカルチャーショックを与えた。
あまりにも王宮と違う暮らし。衝撃の事実にしばらくの間、王子は思考停止していたが、やがて落ち着きを取り戻してきた。王宮から離れる少し前に爺やに家庭教師してもらった内容を思い出す。
(そうであった‥確か、風呂はお湯なるものを入れて、初めて風呂になると‥!)
ごく一般市民であれば子供でも知っている事だが、やはり王宮暮らしのリム王子にとっては庶民の暮らしの全てが、新鮮であり、初体験なのだ。初めての事であれば、戸惑うのも無理は無い‥‥‥かもしれない。
「うむ‥仕方あるまい、シャワーを浴びて寝るか‥」
リム王子も流石に蛇口の存在は知っていたが、直ぐに風呂に入れないと分かり、シャワーを手早く浴びた。
(今まで、余が知らない事はこんなにも身近な所にあったのだな‥しばらくは修行するのみじゃ‥)
何か家事を苛酷な物と捉えながらも、シャワーを終えると明日に備えるべく柔らか~いはずのベッドに身を沈めた。
(兎にも角にも、まずは仕事を手に入れねばな‥父上と母上からの仰せじゃ‥明日はきっと戦ごときものに、な‥ろう‥な‥‥)
明日の事を考える中、リム王子は寝苦しそうながらも心地よい眠りへと就いていった。
新生活のこれからを考えてか、その寝顔は満足しているかのような笑顔のまま―
初めてのトライだったので
不出来な点もあると思いますが、
長い目で見守って頂けたら幸いです。
この後、
本格ファンタジー、
カルマ・サクリファイスも載せるので
読者の皆様、ぜひぜひ
よろしくお願いしますー
\(^ω^)/