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第1話 その罪、火をもって滅す


 深夜2時。ネオンが消えかかった路地裏に、下卑た笑い声が響いていた。

「マジで笑える。あの動画、もう500万再生いってんぞ」

「俺ら、もはやインフルエンサーじゃね?」

 スマホの画面を囲んでいるのは、数日前に世間を騒がせた『集団暴行動画』の主犯格たちだ。動画の中では、一人の少年が泣き叫びながら地面を這いずっていた。それを撮影し、嘲笑っていたのが彼らだ。

「おい、顔出しはマズいんじゃねぇの? 学校退学とかよ」

「知るかよ。どうせ俺ら未成年だし、少年法があるだろ。最悪、俺の親父が弁護士に金積めばなんとでもなるしな」

 リーダー格の少年が煙草を地面に捨て、靴で踏みにじる。

 彼らにとって、他人の人生を壊したことは「バズり」のためのスパイスに過ぎなかった。法も、社会も、大人も、自分たちを裁くことはできない――そう確信していた。

 その時。

 ふっと、街灯の明かりが消えた。

「……あ? なんだ、停電か?」

 静寂が訪れる。

 先ほどまで遠くに聞こえていた車の走行音も、酔客の怒鳴り声も、すべてが深い霧に吸い込まれたように消失していた。

 暗闇の中から、足音が聞こえる。

 コツ、コツ、と一定のリズムで近づいてくるその音に、少年たちは本能的な恐怖を覚えた。

「誰だ……? 誰かそこにいんのかよ!」

 スマホのライトを向けた先。そこには、一人の男が立っていた。

 漆黒のコート。顔は深く被ったフードの影に隠れて見えない。

「……罪深き者よ」

 男の声は、地底から響くような低音だった。

「法は貴様らを許しても、火は貴様らを許さない。そのかんばせに刻んだ傲慢とともに、滅せよ」

「は? 何言ってんだ、この不審者……。おい、お前ら、やっちまえ!」

 少年たちが殴りかかろうとした、その瞬間。

 空気が爆ぜた。

「ぎ、あああああああああああああああッ!!?」

 炎。

 それも、ただの炎ではない。

 少年たちの『顔面』だけが、青白い炎に包まれた。服も、髪も、背景のゴミ箱すら燃えていない。ただ、彼らの目、鼻、口、その醜い笑みを浮かべていた皮膚だけが、音もなく溶けていく。

「熱……! 熱い、熱い、助け……っ!」

 声にならない悲鳴が路地裏に木霊する。

 男は動かない。ただ、崩れ落ちる少年たちを見下ろしている。

 数秒後、炎が消えた。

 そこに転がっていたのは、命こそあるものの、顔という個性を完全に喪失し、焼けただれた肉塊へと成り果てた少年たちだった。

「……ひとつ、滅した」

 男が踵を返すと、その姿は霧に溶けるように消えていった。

 翌朝、SNSには新しい噂が駆け巡ることになる。

『例のいじめ加害者、顔が焼けて発見されたらしい』

 ――それが、逃れられぬ断罪の始まりだった。

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