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まさかの呪いが、ボーナス特典になるなんて

「ん……。」


 気がつけば、まっ白な空間にいた。


 目の前には、長く滑らかな黒髪を持つ赤い瞳の美しい女性。


「初めまして。わたしくし、アメシリア侯爵家の娘、ユリアーナ・アメシリアでございます。貴女様は?」


 ひとまず、自己紹介をしておくことにしたのだが。


『ほほう。わらわを見て、自己紹介をした人間は、こなたが初めてぞえ。』


 うれしそうに目を細めていらっしゃる。


『今までの者たちは皆、わらわを見る度に、やれ『悪魔』だの『呪い』だの指さしては罵倒を浴びせ、泣き叫び、また怒鳴り散らすと散々だったというにのお。こなたは、礼儀がなっておる』


「恐れ入ります。」


「わらわは、『最後のアルーテーシア王国の王女、ターニャ・アルーテーシア第一王女じゃ。こなたらには『皇族の呪い』といわれているものじゃな。』


「そうなのですね、ターニャ王女とお呼びしても?」


『かまわんぞえ』


「では、ターニャ王女様、私、今後はどうなるのでしょう?」


『? なにも。』


「何も? でございますか?」


『だってこなた、やろうと思えばわらわを今すぐ浄化して、消し去ることができるのじゃろう?』


 あら?

 分かっていたのね?


『こなたの先祖は家名からするに、あの大賢者と言われた、『リョウタ・アメミヤ』と、聖女『ユキナ・マツシロ』なのであろう? あのバカップルの』


「よくご存じですわね?」


 そう。

 我が公爵家の先祖は、初代皇帝が皇帝となる前、つまり最後の王国と言われたアルーテーシア王国に異世界召喚され、魔王討伐をした勇者の仲間だった。


 でも、『バカップル』ってなに?


『ユキナの神聖力をそれほど受け継いでおるこなたに、わらわが敵うはずもなかろう』


 ケラケラと朗らかに笑いながらそうおっしゃった。


 そう。

 私は、たぐいまれな神聖力を持って生まれていた。

 それにすぐさま気がついた母は、父に利用されまいとすぐさま祖父に相談して、魔法具で私の神聖力を隠してくれていたのだ。

 それと。


『こなたは、リョウタの『鑑定眼』まで受け継いで居るのか? すごいのお。うらやましい限りじゃ。』


 もう一つは、『鑑定眼』。

 

 このおかげで、毒もすぐに見破れるのだ。


「ありがとうございます。では私に呪いは?」


『効かぬものを行使しても、しかたあるまい?』


「では、公爵様のお命は?」


『実は、もうこの国の皇族を呪うことにも飽きておってのお。なんせ千年以上呪い続けたし』


「そんなものなのでしょうか?」


『わらわは、昔から飽き性でのお。こんなに続いたのは初めてのことなのじゃが』


 うん。

 ふつう、千年以上も続けられる人は、自分のことを『飽き性』とか言わない。


『まあ、それだけ勇者=初代カナタ皇帝の女癖の悪さに、頭にきていたという事じゃ!』


 面白そうに笑っていらっしゃいますが。

 まさか。

 『皇族の呪い』の原因が、カナタ皇帝の女癖の悪さだったとは!


『わらわと結婚しておきながら、次々と女どもを孕ませよってからに!なにが『これぞ男の!!オレのはーれむ』じゃ!』


 そう言うなり、ブワーっと黒いもやのようなものが、彼女の全身を包み込む。


『じゃがもうよい。きちんと礼儀をもって返してくれたこなたのおかげで、今のわらわは気分が良い。』


「おそれいります。」


 そう言うなり、黒いもやはまるで霧のようにスッと周りに溶け込むように消えていった。


『わらわは、もう神の元へと上がる故、『皇族の呪い』はなくなるであろう。勇者の子孫には、そのように伝えるが良い。』


「寛大なるお心に、感謝いたします。」


『こなたは礼儀がなっていて、なかなかに良い。人目もはばからずいちゃちゃするあのバカップルどもの子孫とは、とても思えなんだ』


「そ、そんなにでしょうか? 私のご先祖様は……。」


 いちゃいちゃくらいなら、私にも分かるのですが。


『勇者がよういいおった。『リア充爆発しろ!!』と』


「?」


『まあよい、最後にこなたに、なにかひとつぷれぜんとなるものを与えようと思うのじゃが』


「プレゼント……ですか?」


『『ぼーなすとくてん』というやつじゃ。何か希望はあるかえ?』


 と聞かれたので。

 生まれてからこれまでのことをまずは話した。

 父と継母と義妹にされたことも全て。


 その上で。

 実はこの後予定していた、この国を出てどこか知らない土地に行って、自由に暮らす計画をしていることを全て話した。

 すると。


『では、これをあげようぞ』


 そう言って渡されたのは、何かの文様を書き記した、3枚の紙だった。


『こなたの先祖、リョウタの作った『転移魔法』なるものを印した紙じゃ。行きたいところを唱えれば、瞬時にその場に移動することができる。ただし……』


「ただし?」


『あの『のほほんうっかりてんねん』といわれていた、リョウタの作ったものじゃ。たまに誤差が出るのじゃが、そこは運まかせでのう。使うかどうかは、こなたに任せるゆえ』


 ご先祖様。

 『のほほんうっかりてんねん』ってなんでしょうか?


 あと。

 ちゃんと動くものを作ってください!


「まあ、なにもないよりはいいわよね?」


 これがあれば、瞬時に全く知らない土地に行ける。

 そこで、新たな人生が、私の自由な人生を送ることができる。


 自然と、笑みがこぼれてしまう。


 やっと。

 やっと、願いが叶うのだ。


 全身筋肉痛で動けなくなったときには、呪いを返してやろうかしらと密かに思ったが、結果良ければ全てよしである。


『それと、わらわはちょいと気が変わってのお』


「え?」


 突然、ターニャ王女が不穏な言葉を吐いてきた。


『こなたは、この国を離れるのであろう?』


「? はい。今すぐにでも!」


『では、こなたの住んでいた別邸をわらわに譲ってくれぬかえ? 少々、やり残したことがあってのお。』


「え? 皇族の皆さんにまだ何か?」


『否、そうではない。安心せい』


「? 別にかまいませんよ? ターニャ王女のお気の済むまで、あの屋敷をお使いください。ちなみにいらなくなったら、屋敷は灰にしてもかまいませんので。」


 もう戻ることもないしね?


『そうだのう。こなたは必要なものは全て、その下着の内側に潜ませておる小さな袋にいれておるしのう』


「あ、分かりました?」


 そう。

 我が公爵家の、祖父と母から受け継いだ遺産は全て、この『マジックバッグ』に入れてあるのだ。


『それはリョウタの作ったものでのお。勇者一行が長い旅路にとても重宝しておったものじゃて。懐かしのお』


 愛おしそうに、マジックバッグの隠れている位置を見つめている。


「ありがとうございます。」


 お礼を述べると同時に、次第に周りがぼんやりと形を失くしていく。


『では、さらばじゃ』


 ターニャ王女の言葉を最後に、私の意識はそこでぷっつりと途絶えたのであった。

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