あと2日
湊が双と話せないまま下校の時間になった。昼休みも双の委員会があって話すことができなかったからだ。
湊はいつも通りに双の席まで行った。
「双、帰ろー」
今朝の出来事なんて何もなかったかのように、何気ない口調で湊は言った。
「帰ろっか。どっか寄り道でもしちゃうか」
双は答えてリュックを背負った。そしてそのまま扉へ向かう。湊は双について行く。
あのことはもう聞かない方がいいよな。
特に理由もなかったが、直感的に湊は思った。
「今日はいいや。また今度行こーぜ」
「おいおい、ノリわりーぞ」
双が少し冗談っぽく言う。
「今日弁当食いすぎたんだよな」
「ふはっ、まあそんな時もあるよな」
不貞腐れた顔で言う湊に双は笑いが堪えれず、笑いながら慰める。
正直、双がいつもの感じで安心した。
2人で並んで帰っていると、分かれ道まで着いた。
「じゃあな」
「おぅ、また明日な」
2人は手を振って、それぞれの道を帰った。
湊は帰る途中で近くのコンビニに寄ることにした。例の手紙の場所に行くための準備をしておこうと考えたからだ。自動ドアをくぐって、旅行用品のコーナーに寄る。そこには、女性用の保湿やらメイクやらがずらっと陳列されてあった。
湊はその棚の横に置いてあった無地の歯ブラシを手に取った。そして飲料製品が置いてあるコーナーへ行くと、お茶のペットボトル6本をカゴに入れた。
これだけあれば足りるかな。
実は何日かかるかなどの詳細は全く書かれていないので、湊は3日と予想して準備をすることにした。
服は家にあるもので済まそう。
湊は会計をささっと済ませて、店を後にする。家に戻った湊は少し早いが、荷物をバックに詰め始める。ついでに湊の大好きなお菓子や家にあったカップ麺も入れておいた。これで大丈夫だろうと思った湊は、夕飯の準備をすることにした。
「これで十分かな」
リュックの中身を見ながら呟いた。リュックとは言っても、いつも学校に持っていっているようなものではない。もう1サイズ大きい、旅行や登山などによく使われるものだ。理由は言うまでもなくあの手紙。双は両親に見つからないようにそっとリュックをもとあった場所に戻すと、母のご飯できたよーと呼ぶ声が2階の双の部屋まで聞こえてくる。今行くと返した双は部屋を出て、一階にあるリビングへ階段を降りた。
「「「いただきます」」」
父と母、双はたわいもない話をしながらご飯を食べ始める。食器棚の横には、父と母、そして双ともう1人、女の子があどけない笑みを浮かべていた写真が置いてあった。