学校だけに
===== ピピピピピピ!!!! =====
うるさい目覚まし時計の音だ。今日も一日が始まる。僕はベッドから飛び起きた。何故なら二度寝により寝坊したからだ。なんで家族はボクを起こしてくれなかったのだろうか。
そう例えば・・・・。
===== お兄ちゃーん!! =====
ユッサユッサと僕の身体を揺らしてくる。でもこんなものでは、僕の眠気は覚めない。そしてさらに・・・。
===== もーう!! 起きなよ!! =====
「ふわっ!?」
なんと妹は仰向けに布団を被って寝ている僕に馬乗りになったのだった。そしてユッサユッサと体を揺らしている。チラッと上を覗き見たが、妹はもう制服に着替えていた。そんな格好で馬乗りになられたら・・・・。
~~~~~ まずいだろ、これは ~~~~~
本人はどうゆうつもりなのかは分からないが、これはまずい・・・・。いくら血のつながった妹とはいえ・・・・。自分の腹の上でユッサユッサと腰を揺らすなんて・・・。
「ふわあああ!」
その欲望を抑えきれなくなった僕は、妹の腰を両腕でガッチリと掴んだ。
「えっ!?お兄ちゃん?」
流石に妹は戸惑っていた。それでもそんな事、お構いなしだ。そもそも挑発してきたのは妹の方だ。その欲望に歯止めが利かなくなった僕は、妹の腰を自分の顔まで無理やり手繰り寄せたのだった。意外とそれは容易だった。妹は必死に抵抗するのかと思ったのだが、彼女はまるで成り行きに任せているかの様子だった。
「お兄ちゃん・・・。」
完全に妹は諦めている表情だった。僕は妹のスカートをめくりあげ、彼女の股間に顔をうずめた・・・。
(はっ・・・!)
ふと僕は我に返った。何を妄想しているんだ僕は・・・。こんなことを考えているから、ますます時間が無くなってしまった。そもそもボクには妹なんかいないのだ。
現在の僕は母親一人に育ててもらっている。理由は良く分からないが、父親の方は家を出て行ってしまっている。離婚したのかどうかは、僕は知らない。
そして母親は朝が早く、もう出勤して家にはいないのだ。だから自分自身で朝ご飯は食べなければいけない。
===== チーン =====
トースターの音が鳴った。服を着替えて身支度を整えたボクは、躊躇わずにそのトーストを咥えた。そうなのだ。
まるでマンガの様に僕は、食パンを咥えながら走って投稿する羽目になったのだ。
「はあっはあっ!」
まだ食パンは咥えたままだ。でも考えてみたら、当然の話である。何故なら食パンを咥えた状態で、食するなど無理な話なのだ。トーストを食べたければ、椅子に座って食べるべきだ。真に非効率な行為を、このボクは実行していたのだった。しかし間もなくそのトーストは、僕の食するところでは無くなるのである。何故なら・・・・。
「うあああ!!!」
「きゃあああ!!!」
まるでマンガの様に曲がり角で出合い頭に、女の子と衝突してしまったのである。
「いてて・・・。」
転倒した僕は尻餅をついていた。僕と衝突した女の子も同じだった。彼女は余り見ない制服を着ていた。まさか・・・。
「大丈夫?怪我とかしていない?」
ボクは勿論、彼女が心配だ。しかし不覚にも・・・・。
~~~~~ この僕の視線は彼女の股間にあった ~~~~~
これは不可抗力と言えるのであろうか、はたまた自分の願望によるものであろうか。その見慣れない制服の女の子は、まるで童女のようにだらしなく脚を広げて腰を落としていたのだった。だから・・・、僕は見てしまった・・・・。
「だっだっ・・・、大丈夫ですっ・・・・。」
明らかに彼女は、僕の如何わしい視線に気が付いていた。すぐさま脚を閉じた。でも温厚な性格なのであろうか、戸惑いながらも決して怒った様子は見られなかったのである。少し俯いて恥ずかしそうに頬を赤らめていた。
「貴方こそ、大丈夫ですか・・・?」
健気にも女の子は、僕の安否を気遣ってくれた。
「うん、大丈夫だよっ!」
僕は安心して、合槌を打った。
「じゃあ、御免なさい・・・。」
足早に彼女は去って行った。そんな女の子を、僕は何も言わずに見送るしか無かった。まあいいのである。このパターンなら、そう時間も置かずに、また再会を果たすであろう。
===== キーンコーンカーンコーン =====
「ふうううーーー。」
ギリギリセーフだ。寝坊して事故があったにも関わらず、なんとか遅刻せずに済んだのであった。
「おはよう。」
担任の先生が教室に入ってきた。
「今日は欠席者は無しだな。じゃあ皆、授業頑張れよ。」
(あれ?)
そのまま朝のホームルームは終わろうとしていた。いやそれは可笑しいだろ。僕は思わず声をあげた。
「せ、せんせい!」
「ん?なんだ?今井。」
今井とは僕の苗字である。でもそんなことは、どうでも良い情報である。
「て、転校生はいないんですか!?」
「は、はあ!?」
僕の問に対して、担任の先生は呆気に取られたような表情だった。隣の女子も僕の方を見て、「キモッ」といった嫌悪感マックスの顔だ・・・・。
これはどうやら完全に僕の妄想であった・・・。これから僕はキモイ奴として、クラスの皆から扱われるであろう・・・。一つの失敗がイメージの定着に繋がる・・・。取り返しはつかない・・・。
学校だけに・・・・。
~~~~~ こんなもんだろう 学校だけに ~~~~~
僕は食パンをかじりながら、ソファーに寝っ転がっていた。こうしていれば何もトラブルは起こらないし、何も悩む事などない・・・。
学校に行かなくなって、どれ位になるだろうか・・・。
「ん?」
僕は鏡に映った自分自身の顔を見た。
「ああ・・・・。」
そのとき悟った。もう自分は学校に行くような齢では無いのだ。嫌であろうが、もう学校に行くことは叶わない。
その鏡の中には、一人の初老の男がいた。
~~~ 学校だけに ~~~ <終>