ミッション03;かつて父が教えてくれた紙飛行機占いのルーツを探せ
なろうラジオ大賞6に参加させてもらってます。
お題3つ目、「紙飛行機」にチャレンジです。
「せーのっ!」
小さな平屋の借家。キッチンからリビングに向かって立ち、開け放たれた窓を狙って弟と紙飛行機を飛ばす。俺のは窓枠に当たって落ち、弟のは窓をすり抜けて駐車場件庭に落ちた。
「やった、僕の勝ち!」
「チッ、しょうがねーな。お前が大きい方食え」
不格好に半分こされた見切り処分メロンパンの、やや大きい方に弟が噛りつく。給食をおかわりしても帰宅後には腹が減る小中学生兄弟、仕事を掛け持ちする母は帰りが遅く、ケンカしても仲裁する人はいない。
弟を力づくで我慢させるのも、兄だからと自分ばかり我慢するのも違う気がして、いつからか紙飛行機で勝負するのが定番になった。
「けど、アイツのが頭いいし器用だし、あんまりやらなくなりました」
ランチデートの帰り道、助手席という逃げ場のない空間で、手持ちの少ない俺が探した話題は家族のこと。ずっと仕事の話もアレだと思ったけど、興味ない?重い?
あ~、趣味も無ければ生活も地味で、ネタ無さ過ぎだよ、俺。
「ふふ、弟と仲良いんだ。でも、どうして紙飛行機?」
・・・ハル先輩、聞き上手か!
「父と、よく飛ばしたからですかね」
「勝負するか、健太」
ニヤリと笑う父が俺を見ると、ムキになって力強く頷く。どっちが新聞を取って来るか、どっちが風呂の湯を溜めに行くか、どっちが見たいテレビをみるか。
折り込みチラシで紙飛行機を折ると、二間続きの和室の襖を開けて、せーので飛ばす。幼児が加減しない大人に勝てる訳も無く、たまにある父の自爆以外は俺が負けた。
「あ、一番の大勝負はアレ、弟の命名でした!候補を書いた紙で飛行機を折って、みんなで飛ばしたヤツ。俺も書いていいって言われて考えたな」
「んぐっ!」
変な声を飲みこんだハル先輩と目が合ったかと思うと、そのまま沈黙が続く。会社に戻って駐車場に停めた途端、車内に先輩の大爆笑が響いた。
「スミマセン、俺、変な事言いました?」
俺、やらかした?こんな先輩は初めて見るし、マジで焦るんだけど。
「ちが、健太は悪くないよ。私が勝手にツボっただけ」
涙目の先輩がシートベルトを外して、ドアを開ける。
「ホントにゴメン。私の好きなアニメと同じだったから」
「アニメ?」
「うん、生まれた妹の名前を、家族みんなで紙飛行機飛ばして決めるんだ」
「へえ」
「けっこう昔の話だから、健太のお父さんも好きだったのかもね」
だったら俺の記憶と印象違うな、と新発見した気持ちで事務所に戻った。
読んで下さって、ありがとうございました。
このシリーズ、久しぶりに書いた作品で、感想いただけて嬉しかったので調子に乗ってます。
気に入って下さったなら、イイネや評価もいただけると嬉しいです。
お気づきの方も多いと思いますが、ハル先輩の好きなアニメはクレ〇ンしんちゃんです。