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Itharia Chronicle  作者: 瀧宮 藤
第一章 再会を求める、不条理の幕開け
2/7

2話 増援、忘れ去られし神、契機の一撃


 「うっ……ここは」


 さきほどキャラ作成時と同じような、黒い空間に響く、先ほどよりずっと機械的で無機質な声がこだまする。


 「あなたは死亡しました。本来であれば自分が設定したセーブポイントで復活する手筈になっていますが、あなたはまだ未設定の状態ですので、死亡した地点に自動転送されます……ということをお伝えするために、ここにあなたは来られました」


 ふむ。体力が尽きたか、他に原因があるのか。


 「その、死因は?」


 「申し訳ございませんが、こちらから死因をお伝えすることはございません。ご自身の目でお確かめください。遅ればせながら、初めての敵撃破おめでとうございます」


 「は、はあ……」


 現状にまだ少し困惑しているが、無事ではないが強敵を倒したわけだし、喜んでおこう。


 「それでは、元のいた場所に転送致します。準備はよろしいでしょうか」


 「あ、うん。お願いします」


 ゲーム始めた時と同じように、僕は大きな穴に吸い込まれていった。



 目が覚めると、横たわる巨大な蛙の死体を目のあたりにして、我ながら感心した。


 (本当によく勝ったな僕は……それにしても、最後はどうやって死んだんだろ、腐食でHPが尽きた?それとも……)


 それを検証すべく、僕は蛙の上顎を持ち上げ、中を覗き込んで……粘着質な黒い液体が流れ出てきて、納得した。


 (ああ、なるほど……脳を貫通した後に溜めた腐食弾を発射したのか。このスキルが死んだ直後でも発射ができるのか、それとも単に僕が間に合わなかったか……)


 蓋を開けてみれば、大したことはなかった。それよりも……まずは安全確認をしないとなと思い、周りを見渡した。


 入口は変わらず、きめ細かい泡で塞がれているが、儚い見た目とは裏腹に、泡の壁が嵐で剝がれたりはじけたりしそうな様子もなさそうで暫くは持つ、とは思いたい。この洞自体の大きさは平面での広さはたいしたことないが、縦軸的には天井が見えない程には広い。とても自然に出来たか、蛙が拵えた大きな洞とは思えないが、その反面蛙の生活している痕跡は見たところかなり少なく、まるで……そうだな、一度何某かがここを放棄して、それを蛙が一時避難所として使っているか、新しく越してきたばかりのような、そんな感じがする。本来はかなり薄暗くじめじめしているはずだが、壁に生えているキノコが発光していて、思ったほど暗くない。


 自然的で幻想的な光景とは対照的に、奥には人工的で、やっつけ工事のような、掘ったばかりで整備していない一本の通路がどこかにつながっている。


 とりあえず洞の中は通路抜きなら危険はなさそうだが、どうも、この通路から魔物が来そうで不安だ。ただこの嵐の中で外に避難することもできないので、暫くここを拠点にするしかないなと思った。とりあえず現状確認して、蛙の死体をどうにかするか。


 蛙を観察すると、背中の茸の長さ分を含めないとすると僕の倍の高さくらいで体長が僕12頭分くらい。口元から血とどす黒い液体が垂れ出ていて、汚した地面からじゅわじゅわっと音が立つ。腐食液だろう。よく見ると、口回りも徐々に溶けだしている。自分の体から生成されたものなのに、耐性はないのか?少しならともかく、長時間口の中に腐食液が溜まっているのを想定していないような体の構造だろうな。だとしたら、腐食弾というのは蛙自身にとっても、もろ刃の剣だろう。だから、余り打ちたくないのかもしれないな。


 そしてその奥に転がっている、僕と同族のようなキノコが横たわっている。特に意味はないが、同族でもあるのでなんとなく両手を合わせておく。


 僕はふと、強烈な違和感を覚える。


 なぜ、この蛙は、捕まえたばかりの僕を、帰ってきてすぐ食べようとしたのか。


 この蛙はここに落ちてる茸の魔物をすぐ食べずに残しているのか。


 この呼吸するのにも命がけといってもいいほど天候の中で、捕まえてきた餌を貯めていたはずなのに、此度は”気まぐれ”ですぐ食べようとしたとはちょっと思えない。もう十分な量を貯めたから一つを食べてしまった?そんな可能性もあるけど、どうも嫌な妄想が頭にこびりついて、不安を拭えない。


 この茸のサイズは大体蛙の三分の一程の体積はある。それを僕も含めて、13体分。嵐がどのくらい続くかわからないし、食事量もわからないが、現実世界で考えたら一人で数回食べきれる量ではないし、貯蓄の食料にしては多すぎる気がする。


 更に奥に開通したばかりのような通路。詰まるところ、僕が今一番懸念しているのは、敵は今倒した一体だけじゃないのではないか?


 タイミングを計らったように、奥から「ゲコッゲコッ」と、蛙の鳴き声が聞こえてきた。


 (ま、まずい)


 何か、凌ぐ方法はないだろうか。どっかに隠れる?うーん、隠れそうな所もない。他の茸に紛れ込んで死んだふり?いや、死んだふりは、下策も下策だろう。迎え撃つ?どうやって?


 現状、僕には何もかも足りていないが、一番不足しているのは殺傷力。それを補うには、やはり外部の力を借りるしかないか。


 部屋に茸十二個、蛙の死体一つ。奥に一本の細い通路。外に極彩色の嵐。さて、どうする?


 (……あの蛙がここに確認しに来るなら、あの通路を通るなら、地の利を利用できるな。問題はこの非力な体で如何に……いずれにしろ、まず時間を稼ぐか)


 そう思い立って、僕は茸の死体を順次に転がすように持っていき、通路に栓をするように詰めて塞いだ。幸い、僕でも持ち運べる軽さではあった。


 (さっきのやり方はもうやりたくない……というか、リスクが高すぎる。さっきは偶々うまくいったが、パワー負けして飲み込まれるなり、先に絞殺されるなり、いくらでも負ける要素はあった。なにか低リスクでいい方法はないか……)


 何か弱点のようなものはないかと、まずは、蛙の死体を観察することに。


 数分後、体に地面から微かにリズミカルな振動が伝わり、それが徐々に大きくなっていくのを感じる。いよいよ最終決戦か……僕はどうにか震えを抑えて、自分を奮い立たす。


(情けないことに、また、天に頼むことになります……僕は今からもう一度、僕よりずっと大きい化け物と戦います。いずこかの見知らぬ神様……どうか、今一度ひとかけらの勇気を分けてください……)


 二度目の、いるかどうかもわからない神様に、僕は祈りを捧げた。


 そうしているうちに、塞いだ入口がはじけるように爆発し、蛙が堂々と入ってきた。左右きょろきょろと見渡して様子を見たが、死体を見た途端、”文字通り”目の色が変わった。真っ赤に燃える瞳に映る死体の光景、それを見てお前はどう思うか想像に難くなかった。しかしこちらにも押し通さなければならぬ正義があり、手前の都合で悪いが、お前をここで殺す。


 ……脳内でサムライごっこをするくらいには、思ったより余裕がある自分に思わず苦笑したが、さて、蛙が死体に気を取られている今のうちに、いざ参る!


 僕は勢いよく、上から飛び降りて蛙に飛び乗った。そう、正面戦闘では絶対勝てないと思い、僕は足を伸ばして上の壁に張り付いて、奇襲をかけることにした。背中の衝撃で蛙は驚いているようで後ろ振り向くが、何も見当たらないのか左右をきょろきょろ見回す。恐らく僕が軽すぎて、単に後ろから何か物を当てられただけで、乗っているとは気づいてない。僕は足を蛙の背中の寄生している茸の生え際に足を食い込ませて、傷口を広げて、同時に背中の茸を引っこ抜こうとする。それに気づいた蛙は左右に体を激しく振ったり、高く飛び上がったり、とにかく背中の異物を振り落そうとする。


 「ビンゴか!ぐぬぬぬぬ……よし、やっと食い込んだ!」


 蛙の死体を観察して、この蛙と背中の茸は共生関係にあるのではないか?仮にそうでなくても、背中に根付いた茸を引っこ抜けるなら大ダメージを与えられるのではないか?と思って実行したが、結果はあたりだったみたいだ。背中の寄生茸の根本の穴を広げるように、僕は足を伸ばす。蛙はそれを嫌がるように、一層激しさをました。


 (ま、まずい……これは耐えきれん)


 足をもっと深く刺して蛙の体に固定しようとするが、もう背中にしがみつくのが精一杯だった。振り払われたらもう二度とチャンスは来ないだろうと頭ではわかっていた。


 (そこの茸、助けてあげますから、今から指す場所まで蛙を誘導なさい)


 ここかと導くように、一部の床が微かに光出した。


 え?こんなときに誰だ?どこから話しかけてきてる?いや、こんな状況でどうやって誘導するんだよ!と頭の中で疑問だらけだが、こうなっては自分一人ではどうしようもないから、声の主を信じることにした。僕は咄嗟に考えが浮かんで、足を引っこ抜き、わざと振り落されて、地面に叩きつけられた。


 (ぐ……立ち止まってる余裕はない……あそこにいかないと)


 どんどんと、地面の揺れから後ろから蛙が迫ってきているのがわかる。僕は転がるように、光ってる地面の方に移動して、舌で捕まれないよう距離を取りつつ、蛙と自身の直線上に光ってる地面を通るように移動した。蛙が僕を追うように飛び跳ねて、光ってる床を踏んだ途端ドンと、巨大な泥岩の塊が蛙の頭に直撃した。蛙は「ぐえっ」と声を上げて大人しくなった。


 (ほら、そこの茸、まだ死んでないからとどめを刺しなさい)


 声が響いてはっと我に返り、僕は蛙に飛び乗って、四苦八苦して背中の茸を引っこ抜いて、断末魔の声を上げて蛙は今度こそ死んだ。



 「はあ……はあ……」


 強敵との対峙の後の恐怖や興奮やら、大がかりな動きやらで動悸が止まらない。


 床にへたり込む。しかし、催促するように、緊張を帯びた女性の声が再び響く、


 (気をつけなさい、まだ来ますよ)


 「まだいるの!?」


 立ち上がろうとするが、もう既に体力が尽きて、体が重力に逆らえず、再び床に伏す。通路の方から微かな移動音が聞こえてくる。蛙とはまた違う魔物か……?


 緊張した視線が向く先から現れる姿は、頭蓋骨。思わず「ひっ」という悲鳴が喉から漏れる。ああ、ここで終わりか……と、目を閉じていよいよ観念する。


 近づいてくる気配がする……が、いくら待ってても、何かされる様子はなかった。


 恐れ恐れ目を開くと、ゼロ距離で頭蓋骨が目の前にいる。


 「わっ!」


 「ギャーーーーーーー!!!!!!」


 思わずびっくりして叫ぶ。


 「あはは!驚いた?」


 一見陰気の頭蓋骨から、明るい男の声が伝わってくる。


 「え?え?」


 状況が飲み込めず、目を白黒させる。


 「驚かせてごめんね!君を襲う気はないよ!僕は朝日、君は?」


 ぐいぐい来て、顔がくっつきそうになり、勢いに押される。


 「ひ、ヒロ……」


 「じゃあ、ひっちゃんだね!ねえひっちゃん、僕と友達になってください!」


 「い、いいけど……」


 「やったー!!初めての友達ゲット!」


 その場で小躍りする頭蓋骨。実際はその場で回転してるだけだが、コミカルな動きに思わず毒気が抜かれる。


 「あ、でもごめんね!さっき蛙と戦ってた時、本当は助けに行きたかったんだけど、通路でひっかかっちゃって……」


 「なんとかなったから大丈夫、助けてもらったし」


 と、ここで女性の声を思い出す。落ち着いた頃合いを見て、見知らぬ女性の声が囁く。透き通った声に心が落ち着き、水紋のように広がっていく。


 「ふふ、敵ではなかったみたいですね。今度こそ、もう何も周りに気配は感じませんよ」


 よ、ようやく安全になったか……。周りを見渡すが、誰一人見当たらないので、仕方なく上に向いて返事をする。


 「あ……助けて頂いてありがとうございます。つかぬ事を聞きますが、どちら様でしょうか」


 (私?うふふ、誰だと思いますか)


 うわ出た、聞いたことを聞き返される、面倒くさいパターン。


 (もう、冗談ですよ。そんなあからさまにめんどくさそうな顔しなくてもいいじゃないですか。一応神を務めさせていただいております、どうぞよしなに)


 「神……さま?」


 「わっ!、神様なんてすごーい!」


 本当に、本当に神様はこの世界に存在していたんだ。しかも、ゲームを始めたてで出会ってしまうとは。こんな悪天候どころじゃない場所に放り込まれて、蛙に食べられそうになって、神様に助けられる。運がいいんだか悪いんだか。


 神様手前、失礼のないようにしないと。


 「無礼にお許しを。先ほどは助けて頂いてありがとうございます。よろしければ、ご尊名を伺ってもよろしいでしょうか」


 (こほん。私の名は七里、停滞の事象を司る神です。うふふ、そんなにかしこまらなくていいですよ)


 「やったー!じゃあもっと楽に話すね!」


 「いえ、そういうわけには」


 (いいから。あなたがどう私を呼ぼうと、私は気にしないし、それを咎める人はここにも、ましても世界中を探してもいないんですよ)


 彼女の意味深な言葉に眉を顰める。


 「……それはどういう」


 彼女はそれを気にするなと言ったかのように、話を遮って続ける。


 (ところであなた達、一つ私を助けてくれませんか?」


 「もっちろん!何をすればいいのー?」


 「それは私でも助けて差し上げられることでしょうか」


 (そうですね。むしろ、今、あなた達にしかできないことです)


 「それじゃ、僕達は一体何をすれば?」


 (そうですね……まずは、敬語をやめることからですかね)


 「ふざけてい」


 (まあまあ、そんなにカリカリしないで)


 彼女はまた遮るように、僕に向かって言った。


 (私はね、あなたと友達になりたいんですよ。対等にね。あなた、面白いから)


 明らかにからかっているような言い方に、僕はムッとした。


 「あのですね、僕はあなたに見せるために死闘を繰り広げたわけじゃないんですよ。人が必死に戦ってたというのに」


 (あはは、やっと少しは普通に話してくれましたね。気を悪くしたらごめんなさい。ただ、茸一体がその何倍も大きい寄生蛙に戦って、挙句の果てにそれに勝ってしまうんだもの。私は素直に関心したんですよ。だから、2体目が来た時には流石に厳しそうでしたので、ほんの少し手を貸して上げました。他に誰よりも、あなたの努力を私が評価します)


「僕も途中からしか見てないけど、ひっちゃんすごいよ!一人であんな大きい蛙を倒すなんて!尊敬しちゃうねっ!」


「はあ、とにかくありがとうございます……」


(あなたの二度の祈り、届きましたよ)


……聞いてたんだ。あれを聞かれたの少々気まずくて、ポリポリと頬を掻く。


「……ねえねえ、僕とは友達になってくれないの?」


(うふふ、勿論、友達になりましょ)


「やったー!」


 頭蓋骨をあっちこっちに転がして、全身で大げさに喜びを表す旭に、思わず笑みが零れる。


(所で。ヒロくん、旭くん。あなたたち私の信者になりません?)


「……は?」


 また突拍子もないことを言う。


「信者!面白そう!」


 暗闇のはずの眼窩を輝かせる。


(ねえ、あなたたち、神の死ってなんだと思いますか?)


 頭を、文字通り傾げる旭。


「……うーん、わかんないけど、もしかして、忘れられたら神様っていなくなっちゃう?」


(鋭いですね。まあ、神の死といっても様々な死因はありますが……一番多いのは、旭くんのいう通り、世界中の誰にも忘れ去られて、存在し得なくなることです。多くの神々は人々によって生み出されたものなんですから)


「……つまり、あなたは今、死に瀕しているということでしょうか?」


(有り体に言えば)


「元気有り余っているように見えますが」


(ふふ、空元気ですよ。……私ね、今信者が殆どいません。だから、誰でも歓迎、未経験も歓迎!誰もいないから昇進確定!今なら神の権能付き!ほらほら、こんなにいい条件他にありませんよ)


「言ってて悲しくなりませんか……。てか、そんな求人みたいに言われても」


(まさに人を求めています)


「……確かに」


(では、私の信者に)


「いや、なるとは言っていませんが」


(お願いします!後生ですから!)


 見かねたか旭が助け船を出す。


「ねえ、七里さんも本当に困ってるみたいだし、助けようよ」


……まあ、実をいうと、断る気はサラサラなかったが、このお調子者の神様を少々困らせたかったのだ。我ながら幼稚な仕返しだとは思うが。


「……僕には断る理由も、謂れもありませんよ。なぜなら、あなたも、僕の窮地に手を差し伸べてくれたんですから」


(ヒロくん……!あ、ありがとうございますぅ~!ううう、久々に信者が増えましたよ)


「あなたは一体……どうしてこんな所に?なぜこんな僕を助けようとしたんですか?」


(言ったでしょう?あなたは面白いと)


「それで納得できるとでも」


(もう、頭の堅い人ですね。納得できないなら、『気まぐれで』、『切羽詰まってたから』、『今日は天気がいいから』、この中から好きな理由選んでいいですよ)


「そんなご無体な」


 最後の理由に至っては現状とかけ離れすぎてもはや意味不明。


(とにかく、理由なんてどうでもいいということなんですよ。私がそうしたいと思ったから、そうしたまでです。私がなんでこんな所にということに関しては、今はあまり重要ではないので追々説明するとして……初めに、あなたたちが私の信者になるにあたって、少しこの世界の神の仕組みに関して説明しないといけませんね。まず、この世界では八百万の神が存在します。神の在り方というのは様々な形がありますが……共通しているのは、信仰している生命体がいること。さっき説明した通り、神は信者がいなくなると、人々に忘れ去られると、存在し得なくなるんです。だから、私は今まさに風前の灯火だったんですよ、あなた達が信者になってくれるまで)


「ねえねえ、結局僕たちはどうやったら信者になれるの?」


 黙っていた朝日が口を開く。


(まあ、色々やってもらわなきゃいけないことはありますね)


「では僕たちは一体何を?」


(そう焦らない、まだ大事なことが説明してませんから。神というのは、一つの事象、または概念に力を宿し、その力を信者にほんの少し、分け与えることもできるんですよ。最も、どの程度の力を授けるかは神のさじ加減ですが。つまり、神は信仰してもらうことで存在し、信者は神から力を分けてもらう、一種の共存関係……はちょっと違いますか、相互利益関係の方が正しいですかね。だからつまり、私が言いたいのは、その、あなたたちにも後悔はさせませんよ)


「……なるほど。それで結局のところ、あなたが言っていた『停滞の事象を司る』とは一体、どういう意味でしょうか」


(文字通り、停め滞らせることですよ。物事を遅延したり停めたりすることができます)


……いまいちピンと来ないが、まあ、それ目当てというわけでもないので、そのうちわかるだろう。


(まあ、さっきも言ったように、力を授ける為に色々やらないと行けないことがありますね。だから、その、まず……改めて、と、友達に、なってくださいますか?)


 彼女は言いにくそうにお願いしてくるのを聞いて、キョトンとする。


「あはは、何を今更。僕たちもう友達だよねっ」


「成り行きでここまで来たら、もう友達にでも信者にでも、なんでもなってやりますよ」


(ふふっ)


 よどみのない二つの返事に彼女はうれしそうに笑う。


「所で七里様」


(様はやめてください)


「……では七里さん。つかぬ事を聞きますが……あなたは一体どこに?」


(あっ……失礼しました。今は諸事情により、そこの宝珠が本体のようなものです)


「宝珠?」


 そんな小奇麗なものなど見当たらないが……まさか。


 僕は思わず、蛙のかち割れた頭に鎮座している、コケやらツタやらを纏わりついた、巨大泥団子のような何かを二度見した。

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