進軍直前
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「ハァハァ────ラス!!大丈夫か!?」
大丈夫なわけあるか。と自分で自分に怒鳴りながらも、オプロはとりあえず安否の確認の声をかける
ラテュロスのくれた"眼型遠隔監視ユニット"のお陰でこちらの様子はわかっている。ノースの手刀をラテュロスが受けたときは血の気が引いた
だがそれ以上に、その傷から血が流れすぎている。端正な顔は血の気が引き、青白くなっていた。
「─────────すまない!!」
オプロはラテュロスの服に手を掛ける。だが無論欲情したわけではない
テルスにも、君にも恨まれるかもしれないが、致し方ない・・・・・・傷を焼く!!
オプロは"スクロール"から簡単な火の魔法を取り出────────そうとしたところで、その手が誰かに遮られた
「・・・・・・・・え?」
「たく・・・・・・このスケベやろー 年頃の娘の服を脱がそうとするんじゃねえよ」
「ラテュロス!!」
手を遮ったのはラテュロスだった。オプロの声が一瞬で歓喜に包まれるも、その後焦った口調で話す
「いや違うぞ!! これは君を助けようと・・・・・・ってそれより!! 早く傷を塞がなければ!!」
オプロとて素人ではない。多少の傷なら応急処置が出来るが、今は救急セットもない。このままでは──────
「焦んな・・・・・・・私の右のポーチに、緑っぽい塊みたいなのと、なかが透明な瓶があるはずだ・・・・・・とってくれ」
「あっあぁ・・・・・ええと、これか?」
言われたとおりポーチを漁ると、なにやら物騒なものと共に黒ずんだ緑色の塊と、透き通るような色をした薬品瓶があった
「へへ、よかった割れてなかったな・・・・・次はその塊に瓶の中身をかけてくれ」
言われたとおりにする。すると、塊はまるで命を取り戻したかのように、大きくなり、色は新緑色になる。これは
「包帯・・・・・・・だろうか?」
「塊の方は傷を癒す効果がある包癒草を包帯に加工して、脱水してカピカピにしたもの。
瓶は脱水した時に出たエキスに各種薬草を追加したもの。
普通より長持ちするし、効能も高い──────さて次は」
「おっおい!! 何をしてるんだ!!」
「いや、何って・・・・・・・包帯巻くんだから普通脱ぐだろ・・・・・? さっさと巻いてくれ・・・・・・・・」
「僕がか!? ムッ無理だ!! 婚姻前の淑女の服を剥ぐなんて───────!!」
「オマッ、言ってる場合か!! こっちは死にかけてるし、さっきもやろうとしてたんだから今さらだゴフゥ!!」
「オワァァァァ傷がぁぁぁぁ!!」
オプロは迷う。彼女自身に言われた通り、ラテュロスは死にかけている。今はプライドを優先している場合ではない。わかっている。わかっているのだが・・・・・・・・・
──────ええぃままよ!!
その後、ラテュロスの顔を直視できないオプロの姿を、駆けつけたテルスが不審がって見るのは、今から数分後のことである
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「全員───────揃ったな」
テルスに運ばれて、オプロと共にやってきたのは、新しい隠れ家──────という名の洞窟だった
運ばれてる途中で目が覚めたが、自分を運ぶテルスには傷ひとつなかった。どうやらアスピダが相手を変わってくれたらしい
そのアスピダも、五体満足でピンピンしていた。ノースと互角と言われる"氷像"のクタヴァーとか言うやつと戦った後とはとても思えない
まあそんな疑問を抱きつつも、あるのは一人も欠けることなく集まれた安堵感だ───────この数日で、だいぶ情が移ったものだ
今はお互いの戦利品を確認しながら、戦闘の様子を話し合っている。もっとも──────私はアスピダ側の戦利品に、目が釘付けなのだが
まさか"氷像"が"神器"の使い手とは、まあ、自分の最高傑作を使ってアスピダにあの程度のダメージしか与えられなかったというのだから、ノースと互角というのは嘘っぽいとは思ったが
────────アスピダも影武者どうか疑うレベルには弱かったと言ってたし
まあここでは一度"神器"の話は置いておこう。目下の問題は・・・・・・・・
「こいつだよなぁ・・・・・・・・」
私含む全員の視線が集中したのは、足元。正確にはそこから飛び出ている、ノースの頭だった
一見すると絶叫モノだが、何もブチッともぎ取った訳ではない。その証拠にノースの目は一応開いている
テルスが私たちをここへ連れてくる時、役に立つかも、ということで連れてきたらしい。まあオプロいわく、荷物の方がまだマシな扱いだったらしいが
それで連れてきたわいいが、こいつに対する有効な拘束手段も思い付かなかった為、地魔法で縦穴を開けて、そこに一応縛っておいたノースを埋め、周りの土をテルスの引斥で固めまくった
抜け出す事自体は出来るだろうが、少しは時間を稼げるはずだ。その間に逃げるなり、攻撃をするなり、何もやらないよりはマシだ
で、縛っているということは一応コイツは捕虜という扱いになる
「どうする? こいつのパーティーに交渉して、ポイントを差し出させるか?」
そう言うのはオプロだ。まあ確かに、現実的に考えられるノースの一番の利用価値と言えばそれだろう。なのだが・・・・・・・
「全員耳を貸してくれ、後、ノースさんよ。今から話す内容はこれからのあんたの扱いにも繋がるから黙って聞いててくれよ」
「・・・・・・・・・・・・」
だんまり、だが一応聞いてくる気なノースを見ると、全員を見渡す
「私が思うに、コイツのパーティーは、人質交渉に応じない気がするんだよ」
「理由は?」
「聞いた話だと、ノースもパーティーメンバーも元々は盗賊なんだろ? それなら頭の代わり位普通に用意してあると思うんだ」
「・・・・・・・・なるほど。むしろ居なくなってくれた方が嬉しいって可能性もあるのか」
アスピダも納得してくれたように相づちを打っている
「そこでだ────────私は別に、もうコイツらと戦わなくてもいい気がするんだよ」
「はあ? おまえ何言ってるんだよ。それじゃポイントが・・・・・・」
「この試験の合格条件は?」
「何って、ポイント上位者百名───あ、そうか」
「気づいたか、ノースのパーティーは聞くところによると五十名前後らしい。お前らがクタヴァーを倒したから、今ポイント上位者は私たちがトップなはずだろ?」
「・・・・・・・・クタヴァーの残党からポイントを奪えば、必然的に俺らの試験突破は確実ってわけか」
「そゆこと・・・・・・・って感じなんだけど、ノース、どう? この話、あんたらにも得があるはずだ」
「・・・・・・・・・話はわかった。が、俺が断った場合は、俺の身柄をどうするつもりかね?」
「────────断らないさ。あんたは必ずこの話を受ける」
「どうして断言出来る? 二つ名持ちとしてのプライド、ギルドに所属するものとしてそんな話は受けられない!!────────そうやって断る可能性だって、十分あるはずだ」
「フッ、そうやってプライドとかしか断る理由がないのが何よりの証拠だよ───────そんなことを理由に断るやつが、勝つためとはいえ敵前逃亡なんてするかよ」
「・・・・・・・・・・・」
「おまえは目的のためなら、自分のプライドを捨ててでも合理的な判断が出来るやつだ、同類の私の勘が言ってる」
「・・・・・・・・はぁぁぁ、お見通しってわけか。わかったよクソガキ、その条件を飲んでやる」
その時、ノースの周りの土が盛り上がり。さも当然のようにノースが這い出てきた
「・・・・・・・・・はい?」
「何を驚いてやがる。もしかして本気であんな拘束で俺を繋ぎ止められるとでも? まあ様子見はするつもりだったがな」
一瞬本気で腰が抜けるかと思った。ホントに心臓に悪いやつだ
だが、勝った。先程あれほど苦戦したノースが、今回限定とはいえ仲間になるのだから
「とりあえず、『誓約』で正式な契約の後。その傷治療してやるよ」
「ケチ臭いヤロウだ─────────嫌いじゃない」
そうして一時休戦がわりの握手のために、お互いの手を差し出す───────その時だった
私とノースを含む全員が全員が───────その悪意を感じ取ったのは
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そこは地獄だった
ただし本物ではない。そのあまりにも生を冒涜した光景を一言で表すとしたら、その言葉しか出てこないだけで
「──────────ヒッヒい!!」
そこにはたくさんの服があった。ただし、死にきれていない。という無機物にはつきようのない前述がつくが
「──────────」
「ヒッヒい!! ヒヒヒ!!」
無造作に捨て置かれている服に、群がるもの達、虫や、蛇のような何か──────それが、本当に服を着るかのように入っていく
「・・・・・・・・・・」
その光景を見下ろす者が居た。先に断るが断じて人ではない。一言でいうのなら───────さまざまな動物の特徴を合体させたキメラ、だろうか
だが見た目とは裏腹に、感情など読み取りようもないその目でさえもわかるほど、その目は慈愛に満ちていた。とても暗く、歪んでいることを除けばだが
「──────────さあ我が子らよ。勝ち戦の支度は十全か?」
「「「「──────────────!!」」」」
まるでさまざまな人の生体を無理やりつなぎ合わせたような、歪としか形容できない声で、先程の視線と同じ雰囲気の声でかたりかける
それに呼応し、金切り声をあげる、その者の子供達──────────その光景は、常人が見れば発狂はまぬがれるほど、不快で、耐えがたいものだった
「行くぞ─────────我らに歯向かいしおろか者共への神罰。まずはその第一歩だ」
勝者の軍勢が、その歩みを始める
ラテュロス達の知らぬ間に、大戦の火蓋が切って落とされた
次回─────────ラテュロス達に迫る、生命の狂気




