3分21秒間の死闘
まるで突風のような覇気が辺りをつつむ
先程までは、本気を出した俺に防戦一方だった猫獣人。だが今、本気を出したからこそわか
る─────こいつは危険だと
「待たせたな───────反撃の刻だ」
その言葉と共に、目の前から獣人が消えた
ッ!! どこ────────
「だ─────────がぁ!!」
一瞬の思考、だが、その誤差は腹部に伝わる激痛によってかき消える
だが、おかしい。先程はなんてことなかった一撃が、今は力が失われてしまったのか錯覚してしまうほどに重く、力強く感じる
「───────『龍気顕性』『性質変化』」
呟きのような声と共に、獣人の魔力は変化を始める
「爆ぜろ」
その一言が引き金になったのか、まるで粉塵爆発のように魔力が燃え、その勢いが爆発にまで至る
呻き声を発する暇もなく、爆発する魔力を纏った拳が雨のように降り注ぐ
「う・・・・・・・ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ハァァァァァァァァァ!!」
一度拳が触れるたびに、衝撃に骨が軋み、爆発で肌がただれて焼き落ちる
だが、それでもこの呪われし体は確実にダメージに適応しつつあった
「────────フン!!」
獣人の攻撃は緩む気配はない、が、それでも気合いを入れ直し、魔力放出をあわせて弾き飛ばす
だが相手もそう楽な相手ではない。即座に体勢を整えこちらに向かってくる
それでも、一瞬の自由は手に入れた
「んっ・・・・・・おえ・・・・・・」
背筋が冷えるような感覚と共に、口からあるものを取り出し、そのまま噛み砕く
瞬間、先程の傷が嘘のように完治していく。先程使った回復薬と同じものだ
念のため仕込んでよかった・・・・・・・・
これで先程レベルの攻撃なら、ダメージを半分程度に抑えられるだろう
それに──────────もうこいつの攻略法はわかった
さっきの連撃、あまりの密度に気付きにくかったが、最初の方と比べて、急所を狙う動きが少ない────────簡単にいえば粗かった
その理由は? 力に振り回されているか、もしくは─────何かに焦っているのか? ならばそれは
決まっている。劇的なパワーアップ、それにともなう焦り、つまりこいつの倒し方は─────────
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「なっ!!」
わたしは内心で舌打ちをする。なぜなら、私の弱点を見抜かれた上、それに対する最適解を出されたからだ
そう、やつは逃げたのだ
最悪だ。回復薬を使われたせいでダメージを初期化されたところまでは想定内だったが、まさかノータイムで逃げるとは───────やつという存在を、勝つために誇りを捨てられる人間ということを失念した私のミスだ
本来、龍核から生まれた龍気はそのまま使うのではなく、貯めてここぞという時に使うのが基本だ。だが先程の『龍気顕性』で貯蔵していた分は吹き飛んだ
今使っているのは、現在進行形で錬成している龍気だ────────そして今それに限界が近づいてきている
簡単な話だ、“許容量を越えた稼働をさせれば冷却が必要”という、単純な事実。問題は、その冷却が、今の状況では死を意味するということだ
準備期間が1ヶ月しかなかったことで、私の心臓は『龍気錬成』の負荷に慣れていない。ましてや限界を越えた稼働の反動──────考えずとも想像できる、苦しみ悶えて、その隙をノースにつかれる姿が
悪態でもつきたいところだが、今はいち早くノースを見つけて、戦闘不能にしなければならない
戦闘開始からの稼働時間、使用量から算出して、稼働限界まで残り─────3分弱
残り時間──────201秒
「”魔力感知"出力感度最大──────!!」
通常は数メートルで抑えている魔力感知の範囲を十倍、百倍と広げていく
あまりの情報量に目眩や吐き気、鼻から暖かいものまで出てくるが
──────居た!!
南方向、この反応的に────影の中!!
残り時間──────191秒
「《影遊泳》!!」
即座に影へと潜り、ノースの反応を追う
だが
クソッやっぱり速え!!
影魔法の練度では天と地ほどの差があるのはわかっていたが・・・・・・・・これでは追い付けない──────ならば
「『禁庫』解放」
取り出したのは弓───────いや、正確にはバネなどのボウガンの機能を備えた特殊弓だ
装填は既に済ましている
「いけ・・・・・・・!!」
残り時間──────152秒
機械が擦れるような音ともに放たれる矢、だがノースはそれをなんなく跳ね返す────────が、それを求めていた
この特殊弓は構造上通常の弓より長大だ、それにより、多少規格が大きい特殊な矢でも運用できる
「弾けろ─────炮烙矢」
真ん中でぶち折られた矢が弾けとぶ、無論強烈な光をともなって
光は影を照らし出す────────影の世界が崩壊する
残り時間──────122秒
「くそ・・・・・・・!!」
「ウオォォォォォ!!」
『龍気顕性』──────『性質変化』『五感強化』『出力最大・龍化』
現在重ねられる最大の強化──────それに今私が使うことができるなかで最強の技を掛け合わせる
"廻刃連断"────────先程は見事に玉砕してしまった技だが、威力に関しては私の技の中で右に出るものはない技だ
『禁庫』から取り出した二本の小太刀を手に構えながら、《影海》が崩壊したことで体勢を崩したノースに一太刀目を叩き込む
限界まで強化した一撃、だが、その一撃はノースの体を少し傷つけただけで止まってしまう
だがそれでいい、その小さな傷が欲しかった
通常の"廻刃連断"は、一撃目で体勢を崩し、一撃目の勢いをそのまま体勢の崩れた相手の急所に叩き込む二連撃技だが──────もしこの二撃目の威力を、同じ箇所に食らわしたらどうだろうか?
攻撃する場所を自由に選択できないというデメリットを考えても、あまりある切断力を発揮するのではないのか?
残り時間──────16秒
「"廻刃龍断"!!」
少し食い込んだ小太刀の峰の部分を狙い、二撃目を叩き込む──────────と同時に峰が弾けた
正確には、峰に纏わせた『性質変化』で揮発性になった魔力が弾けたのだ。これにより、一撃目の小太刀は、二撃目の衝撃を伴いさらに食い込む
だめ押しのつもりで、推進力になり得る魔法を片っ端から発動しまくる
ノースの目が驚きで開かれる。小太刀が己の鋼の肉体に侵入してきたからだ
だがそれでも、魔力を集中させ、肉体を限界まで硬直させ防御力をあげる
「いけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「とまれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
勢いがおさまりはじめる小太刀。だが、それでも確実に刃はノースの命を断とうと食い込んでいる
でも、ここでわたしは忘れていた。ノースのそれは天賦の、それも鍛え上げられた──────己の力は、借り物、ましてや未成熟だと言うことに
残り時間──────0秒
どくん
「ッグ─────!! ゲハァ!?」
瞬間。まるで糸の切れた操り人形のように、体から力が、魔力が、龍気が、まるで何かの白昼夢であったかのように霧散していく
小太刀を掴む手が離れ、力が抜けた体が落下してい重力に従い落下していく──────そしてそれをノースは見逃さない
背骨にまで達した小太刀によるダメージを微塵も感じさせず、手刀を横なぎに放つ。それだけ、たったそれだけで、私の体は紙切れのように両断された─────────ように見えた
「はぁはぁ───────あの一瞬で身を引いたか・・・・・・・一瞬で逝けたものを」
ギリギリ受け身が間に合ったお陰で、なんとか皮一枚命を繋ぎ止められた、まあ、吹けば消えるほど脆くはあるが。ホント笑えてくる
「─────────いや、これ以上は無粋だな。さらばだ、強き獣の少女よ」
ホントに、笑えてくるよ──────ここから逆転してしまう、私達の運命力に
瞬間、ノースの体を一発の銃弾が穿つ
「なっ!? がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ノースが絶叫をあげる。だが銃弾はそんなことは聞こえないと言わんばかりにノースの体に食い込み続け─────────無慈悲にも、ノースの体を貫いた
「ホント強かったよ"黒蜘蛛"。でもまあ、年期と・・・・・・・仲間運はこっちが上だったてことで────────」
途切れそうな意識の中で、わたしは静かに勝ちどきを上げた




