氷像
タラントをリトロンに変更しました
───────────────痛い
「ガハッ!! ゴホ・・・・・・・・何で、私何を」
全身の痛みを何とか飲み込んで、からだを少し起こすし、あらぬ方向に曲がった左腕をみやる
左腕はもとより、あばら骨と片肺もつぶれている
その痛みに顔を歪ませながらも、流れ作業のように『禁庫』からそれを取り出す
「まさか、この序盤でこれを切らされることになるとはな・・・・・・・・」
それは、紙。たがただの紙ではない
使い捨て魔法紙
紙を触媒とし、魔力を使わず、かつ本来自分の使用できない魔法すら使用可能になる代物である
そのぶん高位の魔法を閉じ込めるのは相当な労力が必要だし、一度使ったらその時点で焼ききれるが
今回使うのは二枚
一枚は聖属性魔法の治癒魔法の最高位。《再生治癒》
部位欠損すら直す超魔法だ。普通ならガス欠になる
そしてもうひとつ。こちらも聖属性、生命を蝕む呪いを打ち消すことができる、《退呪》
そう、今現在私の体は絶賛腐り落ち中であった
呪属性魔法
その名の通り、聖属性魔法とは対をなす存在であり、説明は端折るが、ようは悪影響をかけまくれるのである
骨折だけでも大事なのに勘弁してほしいものである
スクロールが燃え尽きると、刻まれた魔法効果が発動され、瞬時に傷は癒え、呪いは消えていく
だが当然、こんなものがたくさんあるわけがなく、すでに品切である
つまり、もう受けることは許されない
「っと、早速来たか!!」
影から凄まじい勢いで腕が伸びてくる。おそらく影を伝って来たのだろうが、めんどくさいことこの上ない
その上先ほどとは比べ物にならないほどの高機動力を手に入れたようで、パワーも上がっているようだし、いよいよ隙がない
極めつけは
「まっじで、固すぎるだろうがぁぁぁぁ!!」
「それが取り柄だ」
つい本来の荒々しい口調になってしまう、だが叫んでなければやってられない
固い、とにかく固い。鋼鉄の塊かなんかを鈍器で叩いているような感じだ、攻撃したこっちの手がしびれる
先ほども固かったが、今は切り傷すらつかない。魔法攻撃もさほど効いてるようには見えないし───────いよいよ打つ手がない
「とらえた」
「見えてる!! 《聖盾》」
だが守る手はある、用意した使い捨て魔法紙のうちの一枚、呪い無効と同時に圧縮した結界を出す魔法、《聖盾》
それと盾を組み合わせて、受け止める───────とはならず、勢いを押さえるだけだったが、それでも十分回避できるレベルまで時間を稼げる
この魔法は使い勝手がいいため十枚ほど用意してある。あと数発は耐えられるが─────ダメージを与えられない以上、じり貧でこちらが負ける
さーて・・・・・・・どう勝ったものか
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「─────────フフッ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
硬質な金属音が、夜の森に響いている
その音の主たちは意図してないだろうが、その様はまるで舞踏のようであった
まさに必死といった様子で剣を振るっているのは、ノースと互角とされる受験者───────クタヴァー・アロガンス
それに相対するは、長く武骨な槍でクタヴァーの剣撃を相殺し続ける、鮫の獣人───────テルスだ
どうしてだ、とノースは己の状況を整理する
ノースは、もとをたどれば上級貴族の出である
そんな自分がギルドなどに所属している理由は、ある欲求を満たすためである
人形愛好家
簡単に言えば、動かない、かつ美しいものを本能的に愛すというものだ
最初は、それこそ女物の人形で満足していたが、次第によりリアルに、より美しいものを求めるようになっていった
そしてついに、それに手を出してしまった
月だけが自分のこの行為を見ているようだった、そんな背徳感を受けながら───────土を被ったそ《・》れの蓋をあける
そこには、女性が眠っていた
不死者にならぬよう聖水に浸けられ、喪服を着させられた女性
それは何を隠そう、今日埋葬されたばかりの、己の母だった
そして────────それを
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの日から、自分は生まれ変わったと思う
美しさにより関心を持てるようになり、そして美しくすることができる己の才能にも目覚めた
クタヴァーは、水。風。火の属性をもっていた
そのなかでも、水と風を合わせることでできる氷属性魔法に目を付けた
数百年の時すら超えて状態を止めることができる氷は、まさに自分が求めるものだった
だが悲しいかな、上級貴族という立場はそれを許さなかった
礼儀作法。舞踏会。領地経営──────夢を追うにはあまりにも不向きな境遇
それでも諦められなかった、少しずつ技を磨き、王や父を説得し、支部長に力を見せ取り入った、優秀な人間を引き込みその成果をおのがものとした
それも全てこの欲求を満たすため
だが、こいつが現れた
最初は美しくないと思った、顔は良かったが強さがないと、私の作品には中身も大事なのだ
だが、どこからともなく槍を取り出すと事態は急変した
舞踏のようにこちらの剣を弾き、こう威力の魔法を発動してくる
下腹部に熱いものが込み上げてくる、欲しい。なんとしてもこいつが欲しい!!
「《氷波》!!」
「収束風砲」
触れたものを凍りつかせる致死の氷風を、風の砲弾で相殺される
先程から、こちらの攻撃は相殺され、あちらの攻撃も相殺するという泥試合に突入していた
だが、それはこれがなかったらの場合だ
「ふふ・・・・・美しいぞ、その強さ」
「うるさい早く死ね。 《引斥》」
獣人を中心として、体が引き寄せられていく
先程から時々使って来るが、引力の場合は必殺領域に強制的に招かれ、斥力の場合は技の出だしを潰される
「厄介。だが美しい!! 氷刃」
迫り来る肉厚の槍穂に、氷を纏った剣がぶつかる
お互いのボルテージが最大にまで上がったとき
「《レーザー!!》」




