混乱の三つ巴
「・・・・・・・なあ、外が騒がしいし、漁夫の利狙った方がいいんじゃないか?」
「バカ言え、ちょっと見てきたけど私らの手におえるもんじゃなかったよ。おとなしくここで力を蓄えろ。
この試験は最終的なポイントの数で勝負が決まるんだ。最初から全快なんて魔力と体力の無駄遣いってもんだろ。ポイントもだいぶ集まってきたしな」
ノースとクダヴァーの激突の最中、ラテュロス一行は、洞窟の中へと身を隠していた
地魔法による部屋の設計で風呂やキッチンを完備
さらに入り口には闇魔法の魔術である幻覚魔法による隠蔽もバッチリの安心設計である
そして極めつけは、ラテュロス達が全員集まっているリビング(仮)に設置されたテレビ型のホログラム
そこには森の風景や、受験者であるパーティーも写っていた
『視覚共有』。ラテュロスが作った眼型の魔術具に『付与』されたこのスキルは、文字通りその媒体に写る情報を主人であるラテュロスへと送ることが出来る
ラテュロスはこの媒体を十数個用意することで、森の情報を入手。今やこの森の情報においてラテュロスより詳しいものはいない
そして、その情報を元に罠を設置。すでに数組のパーティーを捕獲、ポイントと装備の奪取に成功している
「ここまでうまくいくとは、さすがに予想外だったがな。後は残り数人になるまで作戦を練るなり鍛練したりして待とう────────アスピダ。考えの擦り合わせをしたいから来て」
「おう」
ラテュロスと共にパーティーリーダーのアスピダが試験終盤の作戦を練る中、その二人を複雑そうな目で見るものが居た
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「────────────どうしたの? テルちゃん」
「・・・・・・ん?」
洞窟に作られた一室の隅に座っている自分に、パノプリアは隣にドカッと座り問いかける
テルスがその問いの真意を見いだせぬ中、もどかしくなったのかパノプリアから話し出す
「こんなとこでなにうじうじしてんのって気になったの。で、どうしたわけ?」
「・・・・・・あぁその事?───────別に何でもない」
「まあ言われなくてもわかってるけどさ────────嫉妬したんでしょ。あいつらの関係に」
「!!」
テルスが見透かされて驚いた顔をするが、逆にあそこまで露骨にしていてバレていないとでも思ったのだろうか
「まあ気持ちはわかるけど、仕方ないじゃん。僕たちに作戦立案なんて向いてないし、それに少なくとも二人にそんな気は無さそうだしね」
「んなことわかってる・・・・・・・・わかってるんだけどさ」
パノプリアはその様子に嘆息しながらも、どこか乙女チックなテルスを微笑ましげな様子で見つめる
「・・・・・・・そういえば聞きそびれてたけど、何で三人はこの試験に? 私達はギルドカードの恩恵目当てだけど」
温かいパノプリアの視線に耐えきれなくなったのか、テルス強引に話を曲げる
「同じだよ。けど・・・・・・・僕はその特典で貰える地位で学校に行きたいんだ。」
「・・・・・・・・? ガッコウってなんだ?」
「あっそこからか・・・・・・・ んーまあ、勉学とか・・・・・・とにかく面白い所!!」
「なんだよそれ、意味わからん」
パノプリアの曖昧な答えに厳しい言葉をかけるテルスだが、その声にはトゲはなく、どこか吹っ切れたような清々しい様子だった
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試験開始から、既に2日たった頃
ラテュロス達五人の元に、新たな風が吹き込まれようとしていた
「ウォラァァァァァ!! ルール追加の時間じゃぁぁぁ」
「うっせぇな!! いま何時だと思ってんだ!!」
真夜中の洞窟に、プラズマの奇声とアスピダの怒号が響き渡る
その声に就寝していた女性陣とオプロが飛び起き、二人に恨めしげな視線が向けられる
だが、いつまでも険悪ムードが続くわけではなく、空気を読んだラテュロスがプラズマの回りに座り、それに全員が続くという形でこの場は落ち着いた
そして、プラズマが若干申し訳なさげにコホンと息を整えると
「あー、受験者の数がたった今をもって百人を切った為。今から最終的な合格者を決めるための“ランキング”を発表する」
「・・・・・・・試験にランキングなんて概念があったなんてな、それで? 私達はいま何位なんだ?」
「三位だ」
「─────────はい?」
あっさりと言われた順位に思わず間抜け声を出してしまったラテュロスを、プラズマが小馬鹿にした表情で見下ろす
「三位だよ、トップ10入りで合格だからこのまま行けば大丈夫だぜ」
その言葉に五人の反応は半信半疑であったが、やがてその全てが安心や喜びに塗り替えられる
だがその様子をプラズマは冷ややかに見下ろしながら
「あぁ言い忘れてたが───────────ここからは、上位ランカーにはある程度ハンデを追って貰うぜ」
その言葉と共に、洞窟の壁が轟音と光と共に砕け散った
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「──────────で? なんなのお前ら、家壊れてるんだけど」
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
ラテュロスの苛立ち声に反応するものはいない
パーティーメンバーの四人は荷造りをしているため。そしてその他、つまりラテュロスの足元でノビている五人の男は、既に生きているのが不思議なくらいボコボコにされている
ラテュロスはその様子にさらに苛ついたようで、ボリボリと頭を掻く
「こいつらはここに置いてくるとして・・・ったく移動しなきゃならんとは、プラズマの野郎め・・・・・・」
実際にはプラズマではなく運営側なのだが、それは今は置いておくとしてだ
プラズマの言った上位ランカーへのハンデとは、顔写真とポイント保有数、そして位置情報であった
先程『眼』で確認したところ、三位かつ頭数の少ない自分達の所にかなりの人数が集まってきていた
一人ずつなら問題にならないが、ここまでの人数を揃えられるとさすがに部が悪い
「おい、ラス」
「しゃべんな、今考えてる!!」
「じゃあこれは俺の独り言だが──────────来るぜ、“一位”と“二位”」
その言葉に、ラテュロスが反応する暇すらなく
「「「「「ぐぎゃぁぁぁぁぁ」」」」」
後続の他の受験者が、情けない悲鳴と共に吹き飛んだ。
「これで」
「終わりだ」
黒き狩人と白銀の剣士の潰しあいに、ラテュロス達も巻き込まれることが確定した




