交渉
「・・・・・・ギリギリ遅刻ではないな、だが以後気を付けるように、それでは改めて講習会を始める」
どうやら間に合ったようだが、息も絶え絶えでそれどころではない
すると前から紙が配られてくる、講習会の大体の内容や終了後のことなどが書かれていた
どうやらこの講習会が終わればすぐにでも依頼を受けれるらしい
講習会の内容は大体のユダに聞いた通りだったが、面白いことも聞けた
「なおこの後、有料で魔獣の生態本や地図などの参考書を出すつもりだ、是非購入を検討してもらいたい、以上だ」
(参考書か、お金には余裕あるし、ちょっと見てみようかな)
講習会が終わると、参考書が並ぶ棚をみやる
(依頼の評価基準や魔獣の生態書───か、今の手持ちだと、三冊しか買えないな)
宿は門兵に聞いて、値がはるが安全性が高いものまで教えてもらっているので、その金額で1ヶ月ここで住むとなると、これ以上は確実赤字になる
残りの参考書を泣く泣く見送り、三冊の参考書を買うのだった
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「姉御はなに受けるか決まりましたか?」
「そうだな、報償金が多い討伐系かな、テルスも?」
「はい、収集系とかはあんまりわかんなくて」
ラテュロス達は壁一面にはられた依頼を選んでいた
すると、ある依頼が目に止まる
『クロスボア一体の討伐』
(・・・・・・もしや)
「テルス、ちょっと待ってろ」
テルスを待機させ、ラテュロスは足はやに受付へ向かい、受付嬢に質問する
「すいません、討伐系の達成条件って何ですか?」
「討伐系? 討伐系は依頼書に書いてある特定の素材をギルドに提出すれば達成したことになるけど、あなたじゃ・・・・」
ゴト
ラテュロスは無言で依頼書と、そこに描かれたいるクロスボアの角を置く、これが証明の素材の中一覧に入っていたのだ
それを見た受付嬢は最初は疑う素振りを見せたが、みるみるうちに顔色をかえ、ばっ、とこちらを見る
それに、笑顔でラテュロスは
「これで達成、ですか?」
「・・・・・ちょっと待っててちょうだい・・・・ 鑑定、そう鑑定をしなきゃいけないから」
あり得ないっしょ、とこぼしながら受付嬢は走るように奥へと行ってしまった
数分後
「・・・・依頼達成、おめでとう」
「毎度あり」
ラテュロスは五枚の金貨を手に納め、テルスと共に逃げるように去っていった
「今日はご馳走だな」
そう嬉しそうにこぼして
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宿のチェックインを済ませ、テルスがどうしてもと懇願した一人用のベットに肩を寄せあい、二人はこれからの仕事の方針を話し合っていた
「やっぱ一番割いいのは護衛系だな、縁故も出来る、でも戦闘経験や私の能力を最大限活かすとなると討伐系なんだよなぁ」
「副産物で回復薬とかもらえるので採集系も捨てがたいですね」
「・・・・まあ、いまここで考えても仕方ないし、やることないし、腹も減ったし、ドワーフのおっさん達と飯食いに行こうぜ、そこでおすすめを教えてもらえれば・・・・・」
コンコン
立ち上がろうとしたラテュロス達だが、不意のノックに虚をつかれる
扉を開けると、そこにはこの宿の受付嬢がおり、どうやらギルドからの呼び出しを伝えに来てくれたようだった
速めに来てくれとのことだったのですぐに着替え来た道を戻る
数分ぶりのギルドに入ると、これまた数分ぶりの受付嬢にうやうやしい態度で奥へと連れられる、しばらくすると、支部長室と書かれた扉にたどり着く
扉が開かれると、そこには実用性を求めました、と言わんばかりの飾り気のない景色が広がる
その最奥に腰かける部屋の主は、部屋の真ん中のソファーを勧め、受付嬢を退室させる
お互いが腰かけると、パッと見物腰柔らかそうな話し方で自己紹介を始めた
「初めまして、私のはバト・ウォーカーというものだ、扉に書いてあったと思うがここの支部長をしている」
「・・・・・・・そんなお偉いさんがなんのご用で?」
「そう警戒しないで欲しい、私が今から話す話しは、お互い利がある」
「具体的には?」
「話が早くて助かるね、ではこちらも簡潔に───────今から一週間後に始まる五級選抜試験を受けて欲しい」
五級選抜試験
さすがのラテュロスもこれは想像していなかった
ちょうど先程読んだ参考書に試験のことが書いてあったが、ギルドから実力が認められなければ受けられず、早くても加入から一年はかかると書いてあったが
訳を聞くと、クロスボアを狩猟出来るなら問題ないとのことだった
「もちろん断ってくれても構わないが、上にあがらなければそのうち潰されるかも知れない、今受けるのが得策だと私は思うがね」
どうやらこっちに選択権など端からないらしい
「──────どうやら受けてくれるようだね」
苦い顔をするラテュロスに、バトという名の男は心底楽しそうに語りかける
よく言う、という言葉を飲み込み、ラテュロスは冷静に試験の期日や必要なものを尋ねる
「持ち物は自由だ、武器でも魔術具でも、けれど準備期間は1ヶ月、あと、君たちの他に三人ほど試験を受けることとなっているから、その子達とも協力しながら試験を受けてくれ───」
その後も、終始あちらが話を進め、ラテュロス達は半ば強引に五級選抜試験を受けることとなるのだった
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「どういうつもりですか? 支部長」
そういって自分が自分が唯一連れてこれた秘書であるテン・パルンは、少し呆れたようすで自分に問う
「どうも何も、才能がありそうだから試験に推薦しただけさ」
「・・・・・・才能がある、それは確かでしょうが、あの程度の実力で試験に望むなど──────」
「速すぎる、でしょ? でもさ、もうなりふり構ってられない訳よ」
支部長の仕事はなにも講習会だけではない、選抜試験への推薦も立派な仕事のうちであり、一回の選抜で、最低五人の推薦をしなければならない
「まあ猫の娘ほうは気づいてるっぽかったし、あの娘達の才能なら1ヶ月でもかなり伸びるでしょ、その他三人もいるし」
「─────堕ち増したね、神眼も」
「・・・・・・その名は捨てたよ、誇りと共にね」
そんな二人にしかわからない掛け合いが、誰もいない執務室にいやに響いた




