縁の下の力持ち
小説を見直して添削しています、良ければ見てくれると幸いです
「嬢ちゃん、鍛冶ギルドの公式ルールは知ってるか?」
「なにそれ?」
「知らんのか、鍛冶ギルドは一年に一回ギルド会員の作品の品評会が行われるんだが、その評価基準が公式ルールだ。
主に、実用性、美しさ、経済性、汎用性を元に100点満点で評価を下す、今回は、隣の万屋のばあちゃんと鍛冶仲間四人に審査員をやってもらう、文句はあるか?」
「特には、早くやろ」
「ふん、その減らず口がいつまできけるか」
店の奥へと入る前に、その服装でやる気かと服をチェニックに変えられ、革グローブにエプロン、ゴーグルや手拭いまで手渡された
ここまで公平に気を遣っているなら、不正の心配は少ないだろう
作るのは無難にナイフらしく、奥の戸棚にある素材はすべて使っていいとのことだった
まずは素材を吟味する
あるのは、鋼、木材、石炭と幅広いが、今回は上記三つでいいだろう
「魔法は使っていいの?」
「当然だ、でなきゃ時間がかかりすぎるしな」
ラテュロスは静かに頷くと、釜の前に静かに座る
絶妙な金属臭にサウナのような暑さが釜から放たれるが、馴れるとこれがまた心地のいい
「それでは、始め!!」
そのなつしさを動力源とし、何十年ぶりかの動作を始めるのだった
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「そこまで!!」
その声と共に、最終確認の手を止め、お互いの作品を見あう
(いい作品だな、刃の美しさもさることながら、強度が光沢となって現れている。さすがドワーフ)
だが、こちらも負けてはいない
取っ手には木を使い、切れ味も何度も確認した、ここに来てから初めての鍛冶だったがかなりいい出来になっているはずだ
審査員の四人が、ナイフを手に取り、覗いたり、物を試し切りしたり、議論したり、かなり本格的な審査を展開している
30分後、結果が出たのか、全員がナイフを置きこちらに向き直った
ドワーフの点数
実用性:21
経済性:25(満点)
美しさ:19
汎用性:25(満点)
合計:90点
その結果にドワーフは満足げに勝利を確信するが、まだ勝負は決まっていない
ラテュロスの点数
実用性:25(満点)
経済性:16
(チッ、経済性にも気を付けるべきだったな)
実用性は満点だとしても、残り最低でも50点、つまり満点を取らなければならない
結果は
美しさ:25(満点)
汎用性:25(満点)
合計:91点
「っし!!」
「あねごぉぉぉぉ!!」
半泣きのテルスが鮫の巨尾を振り回しながら、飛び込むように抱きついてくる
それにしても嬉しい、ここまでの喜びと達成感は何年ぶりか
ドワーフの方は悔しそうに顔を歪めた後、何も言わずに大きな鞄を手渡してくる
「完敗だ、最初の非礼を詫びよう、素材も器具も全部持ってけ!! そこに入ってるのと今着てるのだ」
「ああ、でも、あんたの作品を見て、いいインスピレーションを得たし、良ければまた越させてよ、今度は商品も買ってくからさ」
「・・・・・・ほんっと、かなわんなぁぁ」
「おいおいソイル!! お前自分より年下の嬢ちゃんに負けたからって落ち込みすぎだぞ!!」
「そうそう!! 若い才能を喜びやがれ!!」
「うるせぇぇぇ!! お前らに今のお前らの気持ちがわかるかぁぁぁぁ!!」
そうして殴り合いを始めたドワーフ達だったが、その顔には笑顔が浮かんでいる
「ねえねえ姉御」
「ん?」
「私らなんか忘れて・・・・・・・」
ガーン、ゴーン
「おっ昼の鐘だな、嬢ちゃん達も何か食ってくか? 奢るぞ」
(ん? 鐘?)
『鐘が鳴るまで少し待っててくれない? この後講習会があるから、遅れたら駄目よ』
オクレタラ、ダメヨ
「あっ・・・・あぁぁぁぁ!!」
「あっ姉御!? どうし・・・・・ うわぁ!!」
テルスの首根っこを掴み、風のように走り出す
「嬢ちゃんどこ行くんだよ!!」
「わすれてたぁぁぁぁぁ!! 遅刻だぁぁぁ!!」
ラテュロスの虚しい叫びが、賑わう市場に響くのだった
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側近二人を引き連れ、ここ総合ギルド、カルカス・ソーナー支部、その支部長であるハド・ウォーカーは今日何回目かの講習会のために絨毯の敷き詰められた廊下を歩いていた
(今回も数が多い・・・・ 上の意向もわかるが、もう少し入会条件を難しくしてもらはないと、こちらが過労でつぶれてしまうぞ)
ここ総合ギルドに入会したいもの達は山どころか海にいる魚のようにいるが、そのなかでハドたちが求めるような強者や将来性を持つものはほんの一握り、実際ここ最近はそれらしき者の気配すらない
(とはいえ、私が手を抜いたら、ここにいるもので実力が見極められずに本当に有用なものを逃すという悪循環に・・・・ 全く、形だけとはいえ重要拠点の支部なのだから、もう少しマシな人材を派遣して欲しいものだ)
溢れるため息を押し殺し、講習会の会場の扉をあけ、そこにいるもの達を値踏みする
(駄目だな、弱すぎる)
大半が特権目当ての一般人、そこそこ良さそうなのはいるが、あくまでそこそこだ
何より立ち姿や魔力で、すでにコイツら落第点以下だ
立ち姿はもとより、魔力を使いなれたものは、無意識のうちに、体にうっすらと膜のように魔力が張る
これは"纏魔"といい、魔法や体術などの基礎能力が大幅に上昇し、ある程度の実力者は寝ていてもこの状態を維持できる
この中にも使っているものはいるものの、そのすべてが意識下に使用している、それではダメなのだ
(今回もつまらないものになりそうだな・・・・・)
「私はここの支部長のハド・ウォーカーだ、これより講習会を始め・・・・・」
ドン!!
「すいませぇぇん、遅れましたぁぁぁぁ!!」
扉を蹴破る勢いで入ってきたのは、二人の少女
顔をしかめるハドだったが、すぐに言葉を失う、二人が勢いよく入ってきたことにではない
その二人の"帯魔"が
一方は凪のように、もう一方は金粉を散りばめた夜空のような
そんな、美しいと思えるほどの"帯魔"に、言葉を失ったのだ
この時のハドは、自分の人生と世界に大きく関わるこの二人の新星について、何も知らない
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