戦闘
書き忘れてしまいましたが、ラテュロスの『誓約』の内容は
1創造できるのはふれたことのある金属、鉱物、結晶に限る
2支配できるのは自分の能力で創造した物のみ
「・・・・・・・何で、そう思ったんだ?」
ラテュロスがユダに指摘してから、体感時間で数分ほどたったときの最初の言葉がそれだった
「勘違いしてほしくなんだが、別に責めてる訳じゃない、いきなりいなくなっても困るってのと、訳を知りたくて」
「・・・・・そうか」
するとユダは観念したかのように話し始めた
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「簡単だよ、どうしても、やらなくちゃならんことがある、ただそれだけだ」
「具体的には?」
「ノーコメント」
「そうか・・・・・」
ラテュロスはそれ以上は聞かなかった
こういう時にこいつは例え拷問されても言わない、なんとなくな直感だが、妙な確信があった
なので、話題を別のものに変える
「じゃあさ、何で私達に知識を教えてくれたんだ? お前一人の方がスムーズだろ?」
「んー いやさ、なんというか寝覚めが悪いというか・・・・ まあ偽善みたいなもんだよ」
「そっか・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
この後、ラテュロスが空気に耐えかね、無理やり話をぶったぎるまで、この沈黙は続いた
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翌朝
朝ごはんを作るために、ラテュロスは朝早くから森を駆けていた
「最低でも肉、贅沢いえば野菜も欲しいな。私もテルスも成長期だし、効率良く栄養価をとらないと・・・・」
と、今朝のメニューを考えていたところに、ふとあるものが目に入る
それは─────イノシシ
だが、それがただのイノシシでないことは、見た瞬間理解した
瞬身大猪
見た目はただの大きい猪たが、キメララットと同じく立派な魔獣だ
(確かアイツは、全身から衝撃を発する種族能力を持っていたはず)
さらに肉は栄養価が高く、猪肉に牛肉のような上質な油を持つとか
「なるほど、練習台と飯にはちょうどいい」
そう言って笑みを溢しながら、ラテュロスはクロスボアの前にさっと立ちふさがる
クロスボアは最初は警戒した様子を見せたが、直ぐによだれを滴しながらこっちを見据えてくる
こいつは豚の癖に肉食、つまりこっちを餌だと認識したようだ
だが
「相手が、悪すぎたな」
そうして、ラテュロスは腰を低く落とし、カウンターの体制をとる
突然だが、武術とは本来、対人間のためのものである
それは武術が人間同士の戦争で生まれたことからも明らかだ
よく漫画で、虎殺しやら熊殺しの武術家とかを見かけるが、実際にはそこらの野良犬ですら武術は苦戦してしまう
その理由を、そいつらが武術はあくまで対人であるということを忘れているからだと、ラテュロスは考える
例えばだ、ボクシングのジャブによる顎のヒットや、柔術の関節技、これらは人間が人間を壊すために、人間の体に有効な技術だ
その人間専用の技術を人間じゃない奴にそのまま使おうとするからおかしなことになる
ならどうすればいいか
答えは単純、対人を対獣へと変えればいい
例えばこいつの構造は、ただ大きいだけでイノシシと変わらない
つまり、鋭い牙すら通さない厚い毛皮に、鋭い牙を持っている
故に、打撃や関節技はあまり効果がない
と、くれば
(突進に合わせて、相手の勢いを使える投げで仕留める)
もちろん簡単なことではない
本来投げは組み付いて放つ技なことに加え、イノシシは時速4~50というスピードをもつ、コイツに関しては衝撃波を用いるため、速さはさらに上を行くだろう
だが、ラテュロスには見えて、否、感じていた
魔力の動き、筋肉の動き、内蔵の活動まで全て
魔力感知・極
ラテュロスが便宜上そう読んでいるそれは、通常の魔力感知とは一線を画す
そもそも、魔力感知は魔力を薄く引き延ばし、それを闇魔法で隠蔽するという高等技術だ
だが、この技術は本来あまり使われない
その理由は単純明快、費用対効果がすこぶる悪いのだ
何せここまでして得られるのは、引き延ばした魔力の中にある魔力を感知する、ただそれだけだ
それでいいじゃんと思うかも知れないがそうではない、これはつまり魔力を持たない野生生物や魔力を消したものにたいしては無防備であることを示す
それこそ暗殺対策とか、どうしても相手の位置がわからない時にしか使われないし、使えば維持でまともに動けない
だが、ラテュロスのそれは、性能から使用用途まで違う
まず、ラテュロスの魔力感知は魔力を引き延ばし闇魔法で隠蔽するのはもちろんのこと
更に火魔法の魔術、熱魔法による熱源感知、風魔法による魔力感知の有効範囲内の風の動きの感知、光魔法のX線による透視
これら全てを合わせることで、ラテュロスは有効範囲内のすべての情報を把握できる
だが、本来、人はここまで多くの魔法や動きを併用できない
理由は単純、物事の情報を2つ以上同時処理する並列思考能力が決定的に足りないからである
この魔力感知・極は言うならば、高校の全教科を全て同時に解きながら、500キロのフルマラソンを走るようなもの、つまり理論上は可能だが不可能なものなのだ
だが、ラテュロスはこの問題を、先程言った並列思考を増やすということで解決した
常人が一度に処理できる情報は多くてもおよそ4つまで
だが、ラテュロスはその25倍、つまり100個同時に処理できる
(まあ、全盛期と比べると、十分の一程度なんだけど)
そして場面は現在に戻る
意識を戻せば、クロスボアが自分を自慢の角で貫き、肉を貪ろうという意志が垣間見える
そして、爆音と共にクロスボアが消える、ように見えるが、凄まじいスピードで突っ込んできているだけだ
そして、魔力感知・極によって相手の心音まで感知していたラテュロスにとってそれは
「甘い!!」
そう叫び、必殺の突進が激突する瞬間、ラテュロスは海老反りになり、角の根本をつかんだまま
クロスボアの勢いに自らの力を加え思いっきり解き放ってやった
そのまま、クロスボアは態勢を崩したまま転げていき
ゴン!!
鐘を叩くような音と共に、額が割れ絶命してしまっていた
「へへ、こりゃ数日持つな」
そういって、ラテュロスは剥ぎ取り作業に移るのだった




