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シオン色の離任式

「なあ、ユダ」


そうして、火によって木が破裂する音と、食事をする音しか響かなかった三人の食事に、最初に話題をふったのはラテュロスだった


「私さ、こういう時に沈黙ってのが一番困るから、ほら、お前なんか話したいことあるって言ってたろ? それ言ってくれよ、多少気が楽になるから」


すると、まずユダが顔を歪め、そして遂に堪えられなくなったように笑い出す


「なっ・・・!! 何がおかしいんだよ、私の顔になんかついてたか!? あぁ?」


「ククク、いやなに、少し意外だったんだよ。お前そういうの気にするタイプなんだって」


「・・・・悪いかよ」 


「んや、ぜーんぜん、なに、ここいらでいっちょ自己紹介でもしておこうぜって話そうと思ってたんだ」


自己紹介


改めて考えてみると、確かにお互いにお互いのことを何もわかっていなかったと、ラテュロスは思案する


(まあ、これからやっていくなら必要かな)


「わかったけど、言い出しっぺからな」


「そういうと思ってたぜ、じゃあお言葉に甘えて、とその前に、言っておきたいことがある、おいテルス!! 真剣な話だから聞け!!」


いきなり豹変したように怒鳴るユダ


その声に未だに飯を食べ続けているテルスは驚いてむせてしまっていた、


その行為を咎めようにも、さっきとは別人のようになったユダのあまりの真剣な顔に、言葉がつまってしまう


「・・・・この自己紹介では、能力(スキル)の情報もある程度開示して貰う、俺も含めて」


「・・・・・・なッ!?」


能力(スキル)の情報の開示の要求


それは、相手によっては打ち首にされても文句は言えないほどのノーデリカシー行為だ


だがユダの要求が、今のこの状況において最善だということも理解できる


(・・・・・・魔獣の強さはピンキリだ、ここに俺ら全員が戦っても勝てないレベルの奴が生息してる可能性は捨てきれない)


そのときに必要なのは、お互いが何を出来るか、何が出来なくてフォローが必要なのか、それを判断するためのお互いの手の内の情報


正直、話したくないというのが本音だ、例え表面上の情報だけであっても、どれだけ必要なことだとしても


だって話してしまったら・・・・・


(ッッッ!! 落ち着け!!)


ラテュロスはこの言い表せない恐怖を、気迫と意地で押さえ込む


(ここは、言わなくちゃいけない・・・・・・ ここで意地を張ったら、ここでの生存率は大幅に下がる)


「・・・・・わかった、でも、さっきも言ったけど言い出しっぺからだ」


するとユダは、いつものようにムカつく顔ではなく、ただ純粋に敬意を示すような視線を向けて、こちらを見てくる、それが少しくすぐったい


ユダは、ゆっくりと話し出した


「名前は知っての通りユダ、好きなものは酒なんだが、ここにはないので少し寂しい、あとは本だな、古い文献とかも大好きだ、能力(スキル)の方は、これだな」


するとユダは、どこからともなく、丸形の光り物を取り出す


「それは、銀貨か?」


「その通り、俺は銀貨を消費し、その金額に応じた物体を生成することが出来る、ちなみに、シータンクもこれで用意した」


「・・・・・能力(スキル)の強さに驚きたいところだが、正直今はシータンクの安さの方が驚きだな」


「そっちかよ、普通にレンタル料でも適応できんだよ、まぁ実際の貸出期間も反映されちまうがな」


(・・・・・・だとしても、だ)


正直言って、開いた口が塞がらない


考えても見てほしい、コイツは軽く言ったが、要は金額の付くものならどんなものでも具現化出来るわけだ


そういうとコイツの規格外さが伝わると思う


正直言ってもう少し問い詰めたいところではあるが、これ以上は踏み込みすぎというものだろう


「ああ、ちなみに、具現化出来るのは銀貨30枚分の価値のものだけだからな」


・・・・・・そんなラテュロスの気遣いは、コイツの前では無意味だったようだ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「えーと、じゃあ次は私が・・・・」


おずおずと手を上げるテルスが自分の身の上話をする中、ラテュロスは失礼を承知で、ずっと気になっていたことを口にする


「なあ、お前二重人格か何か?」


「いや、言い方」


「えっ!! えっと、私、たまにああなっちゃって・・・・・・スイマセン!!」


話し方はめちゃくちゃだが、一応謝罪してるのはわかった


それにしても、これがあの傍若無人とSKY(スーパ空気読めない)の擬人化みたいなのと同一人物とは到底信じられない


かなり短い自己紹介を終えると、遂にラテュロスに順番が回ってくる


まずは、ありふれた身の上話と、昔のことをあまり知らないというテルスと同じことを言う


驚いたテルスの顔を見て微笑んだ後、ゆっくりと息を吐き覚悟を決める


「私の、能力(スキル)は・・・・・・」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「へー、なかなかすごい能力(スキル)だな」


「・・・・・・えっ」


それが、能力(スキル)を開示した後、好奇の目を向けられるであろうと確信していたラテュロスの、最初の言葉だった


「いや、反応薄くね・・・・・・?」


「ん? もっと腰抜かす位驚く位の方が良かったか?」


「いや、そうじゃなくて、私の能力、使おうと思わないの?」


そう、それが、ラテュロスがペオニアの頃からずっと抱え続けた恐怖の種であり、ここまで能力の詳細を避けたがった理由であった


今にもたまに夢に見る、自分が、ペオニア死ぬ前のそうなるまでの経緯


最初は、自分の能力の詳細が外に漏れたことだった


勿論対処したが、最初はそこまで脅威とは思っていなかった


自分の能力は、どんなにバレようと一定以上の実力は出せるように調整しているのだ


今思えば、自分はもっと別のことを警戒すべきだったのだ


そう、それは













人間の、深海のような、大穴のような、とにかく底のない悪意(欲望)


魔王(ペオニア)はそれを見きれなかった


だから、死んで、ここにいる


だというのに


(なんなんだ、こいつら・・・・・・)


ユダは、なんとなく事情を察しているのか、優しく、安心させるような瞳をむけている


テルスに関しては、まず何でラテュロスがここまで渋ったのか理解できていない様子だ


ラテュロスの脳内は、今までに無いほど活発に動き、動き動き動き、ついに、ある結論にたどり着く


(あぁ、そうか、違うんだ、こいつらは)


ラテュロスにとって、自分と最初にいた仲間以外は、自分へ悪意(欲望)を向けてくる奴と同類だと思っていた


そう信じて、遠ざけてきた


だが、そうか


「もう、いいのか・・・・・・」


それが、歴史に刻まれることはないが、本当の意味で、魔王ペオニアが、一人の少女ラテュロスになった瞬間だった






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