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直前

「は? え? は?」


絶句。その言葉をここまで意識して思ったことはないだろう


もちろん、その原因に眼下の少女のことは含まれるが、ラテュロスの一番の問題はそこではない


「食料・・・・・ 二週間分の・・・・・ 俺らの食料・・・・・」


つい一人称が戻ってしまうほど、これは衝撃的で致命的だった


だってそうだろう、こんな海のど真ん中どころか中心みたいなところで食料を全部食われたのだ


怒りたい気持ちもあるが、それよりも今は困惑と絶望感が大きすぎるが


だが、皮肉にもその後ろ向きな思考が冷静で的確な判断を生んだ


「どうしよっかな・・・・・・ 取り敢えず起こす? いやまずユダを・・・・・」


「・・・・・・・・ん」


「お・・・・・・!!」


どうやらこっちが起きる方が早いようだ。


(そろそろユダも違和感感じてきてくれるかな、て言うか来てくれないと困るんだけど)


と、そうこうしてるうちにこのラテュロスの悩みの大原因である少女が、のそりと体を出し、床に足をつける


あっちもこちらを認識したようだ


ラテュロスは目の前の少女を観察する


自分より少し体格が良いことを除けば、こちらとそれほど変わらないと歳と分かる顔立ちに、肩口までの長さの艶がかかった瑠璃紺と水色の髪、他には鋭い金色の瞳だろうか? 今にも人を殺しそうだ


だが、最も目を引くのはその体の半分を閉めるほどの大きな尻尾だろう


尻尾は青みがかった灰色で、そこからナイフのように鋭いヒレが突き出ている


(見たところ鮫の獣人だけど、一体どうして箱の中に・・・・・・・)


それに何故か感じるこの懐かしさは・・・・


するとジロジロ見ていたラテュロスが気に触ったのか、不機嫌を隠そうともせず、食事泥棒は開口一番


「おい、そこの毛玉、腹が減った、飯をよこせ」


その瞬間ラテュロスの心中に浮かんだ懐かしさは


(ああ、コイツクソだわ)


それ以上の相手の態度に対する不快感で塗りつぶされた


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「えっ、て言うか毛玉って私のこと!?」


「当然だ、他に誰がいる、それともチリ毛のほうがよかったか?」


「チッ、チリ・・・・・・!?」


普段なら、2000年以上の時を生きたラテュロスは、このようなあまりにも見え透いた挑発には応じない


それが更なる事態の悪化を招くことを身をもって知っているからだ


だが、


「そう・・・・ そうかそうかい、そっちがその気なら・・・・・!!」


それはペオニアだった頃の話


ラテュロスが、『誓約』により完成した創造支配者(ドミネイター)を、目の前の傍若無人の擬人化のような少女に向けようと


「おいおい待て待て待て!!」


「!?」


しかけたところで、ユダによる待ったがかかったのだった 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「・・・・・・何の用? ユダ」


「見ての通り、とりあえず構えとけ、そこの鮫女もだ」


「・・・・・・・」


スッ


そうして両者の戦闘態勢が一旦解けたところで


「さて、早速質問だが、お前誰だ? 何のつもりでうちの飯食ってくれてんだ?」


どうやら話の流れはわかっているらしく、少しピリつきながらも目の前の鮫女に冷静な質問をかけるユダ


その問いに対し


「フン!! 腹が減ったから、目の前の飯を食った、それだけだ。 お前らこそ、我はまだ空腹だぞ? 早く飯をもってこい」


この言い様である、こいつは思いやりと空気を読む力をお母さんの腹に置いてきたのだろうか?


「それはずいぶん勝手な物言いだな、こちとら急ぎの用があるってのに、お前のせいで飯を調達するために寄り道しなきゃならん、どうしてくれるの?」


「知るか、勝手に死ね、だが、そんなに私に貴様らの要求を聞かせたいなら」


すると鮫女がニッと嘲笑う(笑う)とそこから鮫にふさわしきナイフのような歯が現れる


「私を屈服させてみろ、ただし強さでな」


「・・・・・・ずいぶんと物騒だな、こっちは出来れば話し合いで・・・」


「・・・・ユダ」


「?」


すると、この話し合いに沈黙を貫いていたラテュロスが、遂に怒りを抑えられない様子で話しかける


「私が闘る、ここから一番近い陸地に止めてくれ」


「・・・・・冷静になれ、メリットがない」


「あるだろ、少なくとも頭数は増える」


「?」


わかっていない様子のユダを横目に先程とは打って変わって、ラテュロスは鮫女にフレンドリーに語りかける


「おい、魚女」


「・・・・・・口を慎め無礼者」


「おうおう、怖い怖い、ってのは嘘で」


ラテュロスは先程鮫女がしたように、ニッと嘲笑(わら)った


「私と、一発()らね?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


()る? 私とお前が?」


すると鮫女は突然狂ったように笑いだす


「フフッ、フッ、冗談はよ・・・」


ピッ、トン


笑い終えた鮫女は笑かけながら反論しようとするも、それは右頬に感じた痛みに中断された


「ッッ!!」


刃物だ、ラテュロスがどこからか取り出した刃物を投げつけたのだ


だが、それをお互いに何か言うわけでもなくただにらみ合い続け、そして


「・・・いいだろう、望みどおりにしてやろう」


先程の空気すら生ぬるく感じるほど、鮫女が発した肌を突き刺すような殺気が、試合決定の合図だった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その後はお互いに何か言うでもなく、鮫女は倉庫にそのまま、ラテュロス達は操縦席の方に向かった


その途中


「・・・・アイツ、強いぞ」


「わかってる、それも計算内だ」


ユダの心配もわかる、ガリには及ばないものの、やつもかなり強い、直感でわかる


だからこそ、ちょうどいい


(本当俺って、こういう時ついてるぜ)


自らの能力(チカラ)を試すのにちょうどいい相手が自分から喧嘩を売ってきたのだから


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


約30分後


二人の獣人はお互いに突き刺すような視線を交差させていた


そして、その様子をユダが傍観している


この沈黙に対し、最初に切り出したのはラテュロスだ


「そういえば、お互いに名乗ってなかったな。私はラテュロスお前は?」


「フン、弱者に名乗る名などない」


「あっそ、獣ではあっても戦士ではないと」


「・・・・何?」


「だってそうだろう、戦士にとって名乗りは誰もが知る基本的な礼儀だぜ? それすら知らないとか獣以外の何でもないだろ」


「・・・・テルス」


その答えに、ラテュロスはニッと笑う


「んじゃ、始める前にルールを三つ」


そういってラテュロスは指を三つ上げると、我慢ならないと言うようすで鮫女、もといテルスが怒鳴る


「ルールだと? 戦いにそんなものは必要ない!! 舐めているのか!!」


「戦いならな、こりゃ試合だ、呼んで字のごとく試し合い、力比べだ、そこに命のやり取りは必要ないだろ?」


なおも納得いかない様子のテルスにラテュロスはやれやれといったようすで代替案を出す


「じゃあ生殺与奪は勝者のものにすればいいだろ、それにルールだってそう難しいものじゃない」


ルール1:相手が敗けを認めるか気絶したら終了


ルール2:敗者は勝者の言うことを聞くこと


「本当なら、ここに不殺を入れたかったんだが、やむ終えんな」


「・・・・御託は終わりか?」


「・・・・・ああ、もういいぞ、といいたいが、その前に名乗りと握手だ、やんないならいいけど」


すると、テルスが渋々といった近付いてくる。さっきの煽りが相当効いてるらしい


そしてお互いが近付いていきその距離が1メートルを切ったとき


「・・・・・テルス」


最低限の名乗りを済ませ、手を差し出してくるテルス、それに対しラテュロスは


「あぁ・・・・ ありがとう」


その瞬間、お互いの間を灰煙が包んだ


その噴煙に、堪らず目を閉じたテルスに


「風掌」


腰を低く、全身を稼働させて放つ打撃に風を纏わせ放った


その衝撃は破壊の波紋となって、テルスの内臓をちぎれるほど揺す


だが


「へえ、これで倒れないのか」


「ぼ、ぼばぇええぇぇぇ!!」


「あ? なんだ?」


「おばぇ、戦士、の礼儀・・・・は!?」


「ああそれか・・・・」


といいつつ、ラテュロスは全く悪びれた様子もなく、笑いながらいい放った


「嘘だよ、ばーか♡」


それが、テルスの誠実さに対する、ラテュロス(反則魔)からの答えだった

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