出立
翌朝
筋肉痛と倦怠感、更に眠気を感じつつも、ラテュロス飛ぶような勢いで起床した
軽いストレッチと朝食を済ませ、すぐさまユダのところへと赴く
ユダは食事場から徒歩3分ほどの場所で寝ているらしいが、なぜか場所を聞いたときこちらを見る目が妙に生暖かった気がする、気のせいだろうか?
しばらくするとそこには即席のテントが張られており、ラテュロスは迷うことなくその扉をあけ、ユダを認識したと同時に
「オッスユダ、『誓約』教えて」
「・・・・・・・・・・いやはええよ、今何時だと思ってやがる」
「・・・? 朝の6時だが?」
「見てわからない? 寝てるの俺、せっかちにも程があるぞ」
そうユダは言うが、ラテュロスの方も死活問題なので譲れない
「速く教えろ、じゃなければお前を水魔法でびちゃびちゃにするぞ」
「わあーた、わあーた、じゃあほら、手」
「? おう」
そう言ってだるそうに手を求めてくるユダに、疑問を持ちつつも手を出した
すると
「ッッ!?」
ラテュロスは、反射的に顔を酷く歪める、その理由は今現在進行形で握っているユダの手から送られてくる、魔力? ではない、近いがそれではない。とにかく不快な何かとここでは言っておこう
「うっ ギッ・・・!!」
この内側を毛虫が這い上がるような不快感を、大声で叫び放出しようにも、そこからはうめき声がか細く出るばかりで叫ぶとは程遠い
そして、そんな永遠とも思えた地獄は、唐突に終わりを迎えた
ユダが手を離したのだ
「ッバァ!! ・・・・フーフー」
「大丈夫か?」
「ンバァわけ・・・・ ゼェ、ゼェ、ベエだろ・・・!!」
この苦しみを味わわせてくれたクソヤロウであるユダは、ラテュロスと比べて憎らしいほど涼しい顔をしている
その怒りをそのまま言語化しようと口を動かそうとしたその時らラテュロスはある違和感に気付く
確かに持っていた、でも今まで失っていたそれに
(これは・・・・・・ 『誓約』?)
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「・・・・・・・説明カモンヌ」
「妙な言い回しだな、そこも転生者特有だ。て言うか説明って・・・・・・」
「い・い・か・ら!!」
飄々とするユダに少し声をピリつかせると、お手上げとばかりに両手をあげる
その動作も顔もいちいちしゃくに触る
「お前も承知の上かと思ったんだよ。だからこの話を聞いたときは耳を疑ったぜ? こっちだって」
確かに、同じ立場なら自分もそう思ってしまうかもしれない
まあ考えても仕方ない、『誓約』も使えるようになったし
「じゃ、またな!!」
「おいまて!! 礼の一つでも・・・・!!」
ユダがまだ何か叫んでいたが、今の浮かれきっているラテュロスにはその言葉は届かなかった
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時は大きく飛び、出発日
「・・・・・・荷物多いな、ユダ」
「お前が少なすぎるだけだぞ」
ユダがそういうのも無理はない、だってラテュロスの装備は、奴隷時代から着ている麻袋風ファッションにと、妙に凝ったバックだけなのだから
それに対しユダは服が長袖長ズボン、山にいくような服の着こなしをしていた
さらにその後ろには4つほど木箱が積んである
「別にいいだろ、入れるような物ももってねぇし。 逆にお前は何いれてるんだ?」
「生活必需品や金目の物、あとは全部食料だな。二週間は持つように島中の食料をかき集めてきた」
(・・・・・・素直じゃないなー)
ラテュロスは見ていた、その食料が奴隷の人々からの餞別として貰った物だと
あとついでに女の子から告白されてるところも
だが納得の結果ではあった
コイツは認めないだろうが、奴隷達と接する姿は良い為政者そのものであった。
初恋泥棒と馬鹿にしてやりたい気持ちを抑え、何か不備がないかを探す
するとラテュロスは早速見つけてしまった
「・・・・あれ? 船は?」
そう、ないのである、船が、小舟の一隻に至るまで
「まさか泳いで・・・・・・」
「いやいやないない」
ラテュロスの心配に困り顔で応じたユダは、一転しにっこりと笑いかけて、誰もいない虚空にハンドサインを出す
すると
ゴゴゴ・・・・・・!!
まるで山を削るような摩擦音が海岸に響く
瞬間、ラテュロスの目に飛び込んできたのは
実用性のみに特化した無骨な紺色の十メートルほどのボディーに
そこから飛び出す刃のように鋭いスクリュー
「こりゃ・・・・・・ 潜水艦?」
「ほぼ同じだが、正式名称は海洋特化型戦車、軍とかが使う魔術具だ」
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(シータンク・・・ 直訳で海の戦車か・・・・ 見た目は普通に潜水艦だけど)
だが、ラテュロスが気になったのはそこではなく
「魔道具? こんなのどこで」
「そりゃあとでな、とにかく俺らはこれで島を目指す」
「そうか、なら早く乗ろう」
「おっ お前もこういうのは興奮するか?」
「・・・・・・・・正直、そう」
この後、舐め回すように車体を見回したりしたのを、ユダに冷たい目で見られたのは言うまでもない
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「お、おぉぉぉ・・・・・」
中はいかにも、というほど近未来で構成されていた
鋼の床、なんかわからない文字が並ぶ液晶パネル、明らかに金属製ではないロッカー
おおよ男が興奮する要素全てを兼ね備えた潜水艦、いやシータンクは、砂場から海に運び出されていた
ちなみにそれをやってくれたのは、いやいや顔のホルスだった
ホルス含めた他の獣人とは行き場所が違うらしく、その準備に終われていたホルスは
「これで借り無しだからなぁぁぁぁ!!」
といっていたが、正直そんなことはどうでもいい
さて、ラテュロスはどうしてるかというと、今は操縦席に乗るユダの後ろでふんぞり返っていた
「何やってんだ?」
「いいからいいから、それより出発は例の台詞言ったらで頼むぞ」
「ハイハイ、こんなんで借りを増やすなんて妙なやつだぜ」
そんなユダの独り言をシャットアウトし、まるで白い悪魔と言われたあの男のように叫んだ
「ラテュロス!! 行っきまーす!!」
「行くのはお前じゃねぇだろうよ」
僅かなノイズと共に放たれた出発の知らせにより、シータンクはその造物目的を果たすのを喜ぶように、船体がガコンと揺れる
「・・・・ふぅ満足満足」
まるで一仕事終えたみたいに疲れた体は、エネルギー不足を知らせるように大きめの音を腹から放音する
「腹減ったな、何かない?」
「切り替えも腹減るのも早すぎだろ、一番後ろの箱の、一番でけえやつだ、あと食べるにしても果物だけな」
「ハイハイ」
軽薄な返答をし、船内の後ろ、この海渡りの生命線へと向かう
「それにしてもユダもケチだな、二週間分もあるって言ってたのに」
念には念、というのは理解出来るが、こんな子供にまで適用しないでいただきたい物だ
そうこうしてるうちに
「うお!! これ自動ドアかよここまでどこまでも近未来だな」
そんな感想をこぼし、ラテュロスは目の前の、最も大きい箱へと直行する
「さて、少し磯臭いけどいったい何がって、え?」
その箱の中身を見た瞬間、ラテュロスは言葉を失った
だってそこには、パンパンにつまっているはずの二週間分の食料は消え去り
代わりに太い尻尾を抱きしめ、濃い食物の匂いに包まれぐっすりと寝ている少女だけだったのだから
コイツ、推し




