失った果てに
ガリ、コワーーー・・・・
「うっ・・・ うぼええええ・・・・・!!」
ラテュロスは、全力疾走したときのような負担に、内蔵が悲鳴をあげ、思わず吐瀉物を地面に撒き散らかしてしまう
(ヤバい・・・・ 魔力、一気に使いすぎた・・・
動けない・・・・)
創造支配者唯一の弱点、それは圧倒的燃費の悪さだ
("支配"は体に負担がかかるだけだけど、"創造"は魔力を消費する、それも凄まじい量を・・・・ でも、結果良ければすべてよし、上手くいってよかった・・・)
さすがに口内からの狙撃は対応出来なかったが、何とか"創造"が間に合ったのが幸いだった、落ちたナイフを"支配"で動かすのには苦労したが
「ともあれ、あとはユダに合流すれば・・・・」
ザッ
(は?)
そんなバカな、動けるわけない、きっと気のせいだ、そうに違いない、そんな現実逃避に似た思考に脳が支配されるなか
自分の意思とは関係なく、首をゆっくりと後ろに向ける
呆然とするラテュロスの目の前には、体から滝のように血を流し、こちらを睨むガリがいた
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「うっ、うっそぉぉん・・・・・」
あまりの不可思議、もはや冗談のレベルの光景に、さすものラテュロスも苦笑いを溢す
(だって、えぇ・・・・ 喉と腹貫かれてんだぞ? 死ぬだろ、普通)
この世界の住人の体は、多少頑丈とはいえ前前世の人々変わらない構造をしている
喉に、腹からも大量に出血しているガリが生きている、ましてや動く何てことがあるはずがないのだ
とはいえいくら考えても、現実問題ガリは立ち上がり自らを捕らえようと、というかもはや殺そうとしている
(早く・・・ 逃げないと・・・・)
だが、ラテュロスの思いとは裏腹に、体は亀の歩みのような速度でしか動けない
そうこうしているうちに、ガリはどんどん近づいてくる
そしていよいよガリがラテュロスに触れようとしたとき
「ロリコン撲滅!!」
ドッ
「ヴ・・・・!!」
このシリアスな雰囲気にらあまりにも不似合いな掛け声と共に放たれた飛び蹴りにより、ガリは糸の切れた人形のように崩れ落ちた
もうろうとする意識の中でラテュロスが最後に見たのは
銀狼を思わせる風貌をした男だった
たぶん・・・・
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(うーん、気持ち悪い・・・・)
それが、混濁する意識の中、ラテュロスが最初に感じた感覚だった
(あーだるい、眠い、起きたくないの三拍子が揃ってやがる・・・・)
「・・・・・き・・・・・・ろ・・・・・・」
(なんだ? 何か声が聞こえた気が)
まぁ気のせいか、そういって二度寝をかまそうとするも、その声は絶え間なく響く
(なんだよー、今日はパレードとかもないはずだろー)
まだ意識がはっきりしていないのか、ありし日のことを思い出しまう
「うーん・・・ 後・・・24時間・・・・」
「・・・・バカなこと言ってないで、起きろ!!!!」
「だから、今日は・・・・」
そうして、起き上がり目を開けると、その視界いっぱいには子どもが泣き出すような顔が視界いっぱいに広がっていた
「ドギャァァァおわぁぉぁぁ!!!!」
「やっと起きたか、それじゃあ俺はこれで」
なんだか気持ち冷ために言い捨てる男は、よくよく見るとホルスだった、風呂の時と同じように起こしてくれたらしい
それだけではない、ラテュロスの声につられてこっちを見る顔にはいくつか見知った顔もある
「・・・・・・ここは?」
「浮島だ、今は全員休憩してる」
「? |奴隷商に・・・・・ そんなとこあったか・・・・?」
「あぁそうか、お前寝てたから知らないんだな。 後、言葉遣い直したほうがいいぞ」
一言余計なホルスが、その無駄に威圧感のある顔を緩ませた
「もう、奴隷商からは脱出した」
「・・・・・・は?」
(今、何て言った?)
自分の耳が正しいのなら、脱出した? あそこを? 寝てる間に? というかこんなあっさり?
パンクしそうな思考の海のなか、ホルスはお構いなしに話を進める
「・・・・・・あっそうか夢か」
「安心しろ、夢じゃあない」
「えっじゃあ、本当に・・・・・・?」
思考が、追い付かない
(いやいや、えぇ・・・・ これ、敵の幻とかじゃないよな? 現実? それにしては都合良すぎる気が・・・・)
「おっ 起きたか」
思考の海に溺れかけていたラテュロスは、その声を聞き浮上を始め、顔を向ける
そこには髪を日光で照らしながら笑顔を向けるユダの姿があった
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その後ユダに、ラテュロスが気を失ってからのことを聞いた
(俺は丸2日寝ていたらしい)
ここに来たのは1日前で、今は各々行きたい場所へ行くための準備を進めているらしいが、ラテュロスが聞きたいのはそこじゃない
「まずどうやってあんなとこから脱出したんだよ? 管理人はまだまだいただろ」
「あ、やっぱ気になるか。 まあ簡単に言うと、取引したんだよ」
(取引?)
自分で言うのもなんだが、自分達は奴隷だった。そんな自分達と管理人が取引とはどうも信じられないが
そんな考えが顔に出ていたようで、ユダは苦笑しながら
「ま、信じられねえのも無理ないとは思うが、あっちが交換条件を出してきたのよ」
「交換条件?」
「そ、逃がすから、これ以上管理人に手出しするなっていうな」
「いやそれこそないだろ、戦力の差は歴然なんだし・・・・ 冗談キツい」
だが、ユダは真剣な様子で、そこに嘘や冗談は感じられない
だがどうしても信じられない、ガリやデブ、さらにそれよりも強い可能性のあるフツにその他諸々
騙し討ちをしてやっと勝負になるほどの戦力の差があるはずだ
「・・・・・まっ、いっか」
ラテュロスは、考えるのを止めた、これ以上限界の脳に余計な情報を詰めることもない
(とにかく・・・・・ 作戦成功ぁぁぁぁ)
心のなかでそう力なくそう叫び、ラテュロスは再び眠りの海に沈んでいった
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(末恐ろしいな・・・・・・・)
ユダは、眼下で包帯巻きにされた少女を見つめていた
「ブランクがあったとはいえ、この歳でガーレを倒すとはな・・・・・・・ 将来有望だな」
(恩でも売っといたほうがいいか?)
すると、心なしか不満そうなホルスがラテュロスを睨み付ける
「・・・なんだ?」
「なに、ふとお前さんが管理人をどうやって丸めこんだのかが気になってな」
「丸めこんでねぇ、むしろ丸め込まれたのはこっちだ」
頭に疑問符が浮きそうな顔で、ホルスがこちらを見つめる
ユダはあの時の、元同僚との会話を思い出していた
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時は大きく遡り、デネブとの戦闘中
「うおおおおおお!!」
咆哮をあげながら単調な攻撃を続けるデネブに、ユダは呆れと一抹の懐かしさを覚えていた
とはいえ今は作戦中、これ以上は遊んでられない
ユダは、何処からともなく取り出した銀貨を構え、心の中で自らの能力の名を呼ぶ
(銀の罪・・・・・)
それに応じ銀貨が淡い光を帯びるが、デネブはそれすらも認識出来てないのか、ひたすらに突っ込んでくるのみだ
ユダは好都合と言わんばかりに銀貨を掲げ、技の名を叫ぶ
「銀30枚の見返り!!」
すると、銀貨のぶつかり合う小気味のいい音と共に、その手には両刃の西洋剣が握られていた
これにはさすがのデネブも足を止め、口を開き問い詰めようとするも、そんな隙を逃すユダではない
素早くデネブの懐に潜り込み、両手両足、胴を切り離す
こいつの再生能力ならこの程度回復するだろうが、今回は念入りに分裂した部位を風と火の魔法で破壊しておく
ダルマになってもまだ何かを言い募ろうとするデネブを無視し、ユダは少女の姿が無いことに気付く
(あいつどこ行った・・・? 面倒な仕事をふやしやがって)
若干のイラつきは感じるが、全員を助けると言った手前、一人でもかけることはユダのプライドが許さない
魔力感知を全開にし、同じくいなくなったガリもついでに探す
伸ばし続け、その距離が100メートルを越えた時
ユダの魔力感知はそれを捉えた
(!? この魔力は・・・・!!)
忘れもしない、ユダがここにいる理由を作った張本人
そして、元同僚
「・・・・・久しいですね」
「フェルツ・・・ てめぇ!!」
「そうカッカしないでください、何も戦いにきた訳じゃない」
「なに?」
するとフェルツから、ユダが想像もしてなかった言葉を吐いた
それが、先程ラテュロスに語った取引だった
だが、そんなことを聞けば当然
「信じられるか、あまりにも話がうますぎる」
「でも、事実だ。 よく考えろ、戦局を見れば喉から手が出るほど欲しい話のはず。ひねくれるのは結構だがもう少し人を信じたほうがいいぞ? それに・・・・・」
フェルツは昔の口調に戻りながら、ユダが見たことがないほど意地悪く嗤った
「今のあなたじゃ、私には勝てない」
「・・・・・・・・は?」
それが、この二人の間の、三年ぶりの戦いの合図だった
ユダはフェルツを先刻のデネブと同じようにダルマにしようと剣を振りかぶる
が、フェルツには半歩後ろに下がられただけで避けられた
それでもその勢いを殺さず、次は逆袈裟を狙おうと・・・・
「ほら、やっぱり勝てない」
ドサ!!
(は? え?)
天地が、ひっくり返った、いやそう錯覚した
それだけではない、立っているはずなのに、地面がこんなにも近い
目の前には自らの剣
なのに、フェルツの声だけが、いやに響いた
「契約、勝手に決めさせてもらいましたよ。破ったらわかりますよね?」
その短い言葉と共にフェルツは遠ざかっていいった
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ずいぶんと離れたと、しみじみ思う
ホルスはもういない、話をしようとしたら、他の獣人に連れてかれていた
ああいうのをリーダー気質というのだろう、自分にはないチカラだ
歯を軋ませる音が、やけにうるさかった
奴隷編、完結間近
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