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プロローグ

俺とノエルと王様の、十年にも渡る計画はついに終了した。


無事に御前試合を『混沌を主る漆黒の翼†ジェイド』として優勝し、ノエルが魔王になっていない事を除けば、殆ど以前と同じ状況になった。


王にもこれで計画は終わりであることは話してあるので、その内呼び出しがあるだろう。

魔王がいなくなったことを、ついに公表できるのだ。


それはそうと、俺個人の問題は山積みだった。


とりあえずはエリザ姫にかかった呪術と首輪の解除方法が一番厄介だ。

王にバレる前に解呪手段を何とか考えなくてはならない。


呪いとか難しいことは……うん、セシリアに聞くのが一番だ!あいつ大聖女だし。

でもなんて説明すればいいんだ?


「よ!セシリア!実はエリザ姫に性奴隷になる呪いかけちゃって、うっかりセックスしないと首絞まる奴隷の首輪までつけちゃったから解呪手伝ってくれよ!」


って感じで行くと……殺されるな、間違いなく。


妹のマリサも呪術には詳しいがやっぱりセシリアだ。

それにマリサにこの話したらセシリアに話すよりなんかやばいことになりそうだと、俺の第六感が言っている。


「はぁ、気が重いけど行くか」


ゴチンコのギルドは、今ジェイドの御前試合優勝のパーティーとパレードの準備と、ジェイドの優勝によってもたらされたギルド新規加入客の対応、さらにいくつか支部を建てるって事でとんでもない忙しさみたいだ。


手伝うって言ってもローラさんやウランちゃんが許してくれなかった。

「タクトさんは御前試合で十分頑張って頂いたのでゆっくりしていて下さい」

だそうだ。


一人だけぼーっとしているのも気が引けるので、とりあえず今晩セシリアの所に行くことにしよう。


深夜0時。

セシリアに会いにいくのはいつもこの時間だ。


もう何度目だろう。セシリアのいる大聖堂に夜忍び込むのは。

最初はしんどかったが、今は簡単に入ることができる。


「もうちょっといい警備した方がいいと思うな。俺が賊だったら大変だよ」


そんな事を独り言ちている内にセシリアの部屋の窓までついた。


「また来たの」


窓を開けるなり、セシリアはため息をついた。


「いつも悪いなセシリア」


そういうとセシリアはもう一度ため息をつき、今度は何があったのと言ってくれる。

それがいつものセシリアだ。

しかし今日は様子が違った。


「気安く名前で呼ばないでくれる?」


「えっ?」


意外な反応に、俺は思わず呆けてしまう。


「私を誰だと思ってるの?世界でたった一人の大聖女よ?大聖女の名前を呼ぶなんて愚かな行為、そう何度も許されるものじゃないわよ」


「な、何言ってんだよセシリア、その冗談笑えないぞ」


「うるさい」


セシリアの無詠唱魔法、光のナイフが飛んできて俺の頬を掠める。


油断していたのもあるが避けることができなかった。

なんて力だ。


「賊として殺しても良かったけれど、生かしておいてあげたわ。これは大聖女の慈悲です。即刻ここから立ち去り、二度と私の前には現れないで」


おかしい。セシリアがそんなことを言うはずがない。


「……何があったんだセシリア?俺に話して……」


俺がそう言うとセシリアは苛立った様子で怒鳴りちらす。


「ああ、もう!何度も言わせるんじゃないわよ!私は大聖女としての贅沢な暮らしが気に入ってるのに、孤児の頃の過去を知ってるあんたが顔を見せると都合が悪いのよ!二度と来ないでって言ってるの、すぐに出てって!ほら、急がないと警備が来るわよ!」


確かにこれだけ大きな声を出してしまっては警備が来てもおかしくない。

セシリアの事は心配だが日を改めるしかない。


「セシリア、絶対にまた来るから!」


俺はそう言い残し、セシリアの元を立ち去った。





「大聖女様!ご無事ですか!?」


タクトが去ったすぐ後に、数人の警備兵がセシリアの部屋を押しかけた。


「ええ、大丈夫。でもちょっと警備がザルすぎなんじゃない?窓から侵入者が来たわよ?」


「ま、まさかこの大聖堂の警備を突破して侵入者が?冗談ですよね?」


「冗談だと思うなら調べてみなさい」


兵士が窓枠を見ると、そこには確かにタクトが残した靴跡が残っていた。


「す、すぐに大聖堂の警備を強化致します!」


「そうしてちょうだい」


警備兵は慌ただしく立ち去っていった。


セシリアは1人になると、ベッドにドサリと体を落とし、枕を抱きしめる。


そして静かに涙をこぼし続けるのであった。


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