唯一無二の宝物 【月夜譚No.189】
交換ノートの最後のページが淋しく感じた。机の上に用意していたシャープペンを持つことも忘れて、ぼんやりと白紙のページを見つめてしまう。
少女と友人との交換ノートのやり取りは、なんとなく始めたものだった。他のクラスメイトの間で流行っているから、ちょっと私達もやってみようと、そんな軽い気持ちだった。
こうしてノートを一冊分使い切ってしまうくらい続くなんて思ってもみなかったし、こんな気持ちになるとも想像していなかった。
何も、これでやり取りを最後にするのではない。次に使う新しいノートも準備してあるし、今のところはお互いにやめる気はないのだ。
だが、つい感慨深くなってしまった。やり取りはとても楽しくて、このノートが宝物のように愛おしい。
「さて……」
ようやく、少女はペンを手に取る。宝物に最後に綴る言葉を思い浮かべて――。