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9. 不調

初めての隣町へのお出かけはダニエル皇子との出会いや美味しいクレープ。

周囲がティアナに対してどのような感情を持っているか理解できたので大満足だ。

ただ、あの日から彼女の身体は絶不調で発熱はもちろん咳嗽に悩まされ続けていた。

心配したノーティスによって国中から名医を集められたものの皆、首をひねるばかりで解決に至っていない。


「…ティアナ。」


「けほけほ…お兄様?」


「代わってあげられたらいいのに。」


「ふふ、私は大丈夫です。」


「大丈夫じゃない。もう一ヶ月以上不調が続いているんだよ。辛いよね。」


自分の事のように辛そうな顔をするノア。

そんな顔をされると申し訳ない気持ちになってくるが、ティアナの病弱な身体は今に始まったことではない。

ただ、今回は彼が心配するようにいつもより長く続いているのだ。

睡眠を邪魔する咳嗽のせいで余計に体力を奪われているため、ベッドから動くことすら困難になりつつある。

次は何処に出かけようかと目論んでいたのにこれでは意味がない。

そう思って起き上がってみると思っていたよりすんなりと起き上がることが出来た。

良かったとほっとしていると扉が開くのが見える。


「ティアナ!」


「お父様?」


「起き上がったらいけないと言っただろう?」


「…ごめんなさい。今日は体調が良かったので…。」


「そうなのか?」


「いえ、まだ咳も治まっていませんし一時的なものかと。」


「お兄様!…本当に、もう…けほけほ。」


「ティアナ。やはりまだ起き上がるのは良くないようだ。」


駆け寄ってきたノーティスによって支えられるまま枕に身体を預けるとやってきた眠気に逆らうことなく目を閉じていった。

あれからどれくらい経ったのだろうか。

カーテンが閉められているため、外の景色で明暗を判断することはできないが、僅かな光すら入っていないのを見ると既に日は落ちたようだ。


「目が覚めたかい。」


「…っ!」


「あぁ、すまない。驚かせてしまったか。」


「お父様?もしかしてずっとここに…?」


「…このまま目を覚まさなかったらと心配になったんだ。ノアもソファーにいる。」


ノーティスの示す先を見ると、革張りのソファーに座ったまま眠る彼の姿が見えた。


「さっきまで起きていたんだけどね。朝方に近付いて寝てしまったようだ。」


近くにあったブランケットを掛けながらそう言ったノーティスはこちらに戻ってくると椅子に腰掛けた。

普段ノアに対してあまり父親らしい態度を取ることのない彼だが、原作通りとても優しい存在のようだ。

転生前のときのように何だか心が満たされるような気持ちになりながら眺めていると困ったような表情が見える。


「どうした?」


「お父様はお兄様のこともとても愛されているのだと思いまして。」


「そう言われるとむず痒いが、ノアもティアナも私にとってかけがえのない存在だよ。」


大きな手のひらで髪をそっと撫でると顔を綻ばせた。

そんな彼の表情でふと漫画に描かれていたシーンを思い出す。

ノーティスが二人に向ける家族愛。

ティアナが体調不良という設定はなかったが、二人をかけがえのない存在だと話す彼には見覚えがあったのだ。

もしかして私は漫画のシナリオ通りに動いているのだろうか。

悪役王女にならないように態度を改めているつもりだが、このシーンは確かに漫画で描かれていたものと酷似している。

この後に起きるのってまさか…。

脳裏に過る記憶にそんなはずないと否定し、ノーティスから向けられる愛情を甘んじて受け続けるのだった。

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