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10. お誘い

不調の原因は結局わからないままだったが、少し落ち着きを見せ。

薔薇園にあるパラソル付きガーデンチェアに腰掛け、ティータイムを過ごしていた。

隣町へ行ったことで不調をきたしたと考えた父と兄によって外出禁止令を出されたため、これくらいしか出来ることがないのだ。

暇を持て余す日々に飽き飽きしていたある日。

いつものようにおかわりのクッキーを取りに行っていたはずのニコルが小走りで戻ってきたかと思うと困ったような表情を見せる。


「ティアナ様、セルヴァン皇国のダニエル皇子がお見えですがお約束されていますか?」


入り口付近に立っている彼を示し、見覚えのある立ち姿は隣町で見たダニエル・セルヴァンで間違いないようだ。

カップをソーサーに戻しどうしたものかと考えているとこちらに気付いたようで優雅な足取りで近づいてくる。


「体調が優れないと聞いていたのですが、大丈夫なのですか?」


「ええ。まだ、外出の許可はいただけていないのですがとても健やかな日々を過ごしていますよ。」


「良かった。もし良ければ、一緒に…。」


「ティアナ。」


「お父様?どうされましたか?」


「少し休憩しようと思ってな。」


向かい側にある椅子へと腰掛けると慌てたようにニコルは紅茶とクッキーの準備を始めるべく室内へと戻っていった。


「それで?セルヴァン皇国の皇子が何用で来ている。」


「ノーティス王、お久しぶりです。本日はティアナ王女にお会いできればと参上いたしました。」


「以前断ったはずだが?」


「1ヶ月前に花の町で偶然。運命だと思いませんか。」


「思わんな。偶然と運命は全くの別物だ。」


「ティアナ王女。お話していたお出掛け、していただけますか?」


「え…。」


不機嫌な表情をして否定したノーティスを完全に無視すると、こちらに向き直り少し緊張したような面持ちで回答を待っている。

ノアと同い年くらいの青年であり、これ程のイケメン。

女性経験などたくさんありそうなものなのにと少し驚きながらも、既に少し瞳が潤んでいるのを見てしまったためすぐに断る事が出来なかった。

しかし、私が推すのはノーティス唯一人。

ここで簡単に頷いてしまっては彼に要らぬ誤解を与えることだろう。

それだけは避けたいとは思うが、ここで邪魔をするのが転生前の姉という立場で。

断ればきっと悲しそうな顔をしながら肩を落とすのが想像できてしまうのだ。


「ティアナはまだ療養中だ。出掛ける許可を出すつもりはない。」


「ダニエル様、ごめんなさい。お父様もこのように仰られているのでまたの機会に…。」


「では一緒に紅茶を飲むのは…?それもいけませんか…?」


流石にそれなら問題ないとすぐに了承したが、ノーティスの表情は固く不味かったかと不安げな瞳をしていると頬に手が伸びてくる。


「心配はいらないぞ。ティアナは何も悪くない。」


そろりと撫でられた手のひらに甘えるように擦りつけば楽しげに笑みを浮かべ、少し機嫌は改善されたようだ。

どうするべきか見守っていたニコルも彼のその表情を見てダニエルの分も用意して問題ないと判断したようでティータイムの準備を整えるのだった。

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