王子方との対面
あれから、王城に上がるために礼儀作法の復習をしたり、ドレスを新調したりと一週間準備に追われた。
「いよいよ、明日第二王子殿下とご対面ですね」
アンナは自分のことであるかのようにうきうきにそう言った。
「そうね、無難に終わると良いんだけど……。聞いた話だととても優秀で文武両道のお方というお噂みたいね」
「えぇ、とても素敵なお方みたいですね。よかったですね」
アンナはニコニコしながら言った。
私は、その噂について半信半疑である。しかしらこれから長い付き合いになる相手であるからのでどんなお方でもしっかりと寄り添えるように頑張ろうと心に決めた。
(さて、どうなるかしら。上手くいくといいんだけど…… )
◇
そして、当日になった。
「さあ、行きましょう。アンナ」
「はい、お嬢様」
ふと思うと私は、生まれて初めて屋敷の外に出たことに今気づいた。忙しさのあまりそんなことを考えることすらできないほど、心に余裕がなかったのだろう。
馬車は大きな道を通り、王都の中心にある白亜の美しいお城に向かっている。初めて王都の街並みを見るがよく海外の写真で見る街並みであった。他国では、産業革命が起きているという話だったが、我が国は特にそのような面影はないようだ。この国の行く末を少し心配に感じる。もちろん、王城の街並みを見ただけ判断するのは、軽率であるとは思う。だから、もっとこの国のことを調べるようと私は決心した。
貴族街から王城までは、そこまで距離がないためすぐに着いた。門は開いており兵士が門の両サイドに立っていた。
「お止まりください!!」
兵士がそういうと馬車に付いている家紋を確認している。そして、御者が封蝋が付いている封筒を渡した。兵士はその中身を確認した。
「ようこそ、いらっしゃいました。どうぞお通りください」
兵士たちは敬礼をした。
馬車は城門を過ぎ中に入ってく。そして、そのまま真っ直ぐ行き、少し外れにある建物の入り口の前に止めた。すると、中から侍女が出てきた。私は馬車から、降りて礼をした。
「私は、クリスティーヌ・ド・シュヴァリエと申します。本日は、第二王子ダニエル殿下に挨拶に参りました」
侍女も礼をして言った。
「お待ちしておりました。どうぞ中へお入りくださいませ」
私は、侍女に続いて建物の中に入った。建物の中は広々としており、いかにも高いと主張する調度品が廊下に並んでいた。あまりにもギラギラしており、私の好みではなかった。そんなことを思っていると、侍女は一番豪華な扉の前に止まり、ドアをノックした。
「シュヴァリエ伯爵令嬢をお連れいたしました」
「入れ」
すると扉の向こうから幼い声が響いてきた。そして、その声を聞いて侍女が扉を開けた。
私はその部屋に入った。
そこには、金髪で碧眼の幼い美少年がいた。その少年は、こちらを見下した感じで見つめてくる。
「ふーん、お前が僕の婚約者か。対して可愛くないないな。しかも随分と生意気な目をしているな」
いきなりそう言い放った。私はあまりの言葉に少し動揺してしまった。しかし、黙っていても仕方がないと思い、とにかく私は、王子に挨拶をすることにした。
「お初にお目にかかります。シュヴァリエ伯爵家 長女 クリスティーヌと申します。どうか、長いお付き合いなると思いますがよろしくお願いします」
「あぁ、僕は第二王子ダニエルだ。以後よろしく頼む」
片手を振って興味がないとばかりに殿下はテキトーな挨拶を返した。
「これで話は終わりだ。僕は忙しい」
第二王子殿下は、出ていけとばかりに顎で出口を示した。
私は、余りの素っ気なさに愕然とする。しかし、侍女は扉を開けたので、私はその部屋から出て行った。
(あれが私の婚約者か……。なんであんなに素っ気ないのかしら。初めて会うはずなのに嫌われているようだったわ。何にせよ、彼のことをもっと調べないと)
私はこの後のことを考えながら、侍女について行った。すると、侍女はいきなり止まり廊下の端に寄り礼をした。前からは、目を閉じた少年が執事に補助され歩いて来ていた。その少年は、肩まであるプラチナブロンズの髪で、肌は白く整った顔をしていた。その姿はまるで天使であるかのように美しかった。
私も少し見惚れてしまったが、すぐに端に寄り礼をした。
「ん? 初めて会う気配だ。誰かな?」
その少年はこちらに顔を向けて言ってきた。その隣にいる執事が目で答えるように訴えかけてきた。
私はそれに応えていつも通りの挨拶をした。すると少年もそれに返して言った。
「はじめまして、僕は第一王子アルベール。ダニエルの婚約者だね。よろしく」
「もったいないお言葉でございます」
私は無難に答えた。すると第一王子殿下は何かを言おうとしたが、
「殿下」
と執事が第一王子殿下に声をかけた。
「うん、ここで引き留めてごめんね。じゃあまた何処かで」
そう言って第一王子殿下は廊下を通り過ぎていった。
「では、引き続きご案内致します」
侍女はまたスタスタと歩き始めて私はその後に続いた。
すぐに出口に着き、外には馬車がありアンナが立っていた。
「それでは、失礼します」
と言って侍女は扉を閉めた。
「お嬢様、お疲れ様でした。さあ、馬車の中へ」
私は馬車の中に入った。そしてアンナは目を輝かせて第二王子殿下との話を聞きたがった。そんなアンナに私は誤魔化して第二王子殿下のことを話した。
馬車は王城を出て我が家のほうへ向かって走っていった。