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K  作者: 東照宮
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中年山賊記

アルザス王国西にある渓谷を持ち、深い緑に覆われた標高1500Mの山の麓にその男は居た。


薄汚れた衣を身に纏い、多少刃に欠けの見える斧を肩にかつぎ、その男は高所に建てられ周囲を森に隠された見張り台の上に座っていた。


年齢の頃は30を多少過ぎたあたりで、街行く人に尋ねれば10人中3人程度は好意的な回答を得られそうな容姿を持つその男は、眼下に映る街道を睨み付けるように見ていた。


「腹ぁ減ったが…最近はめっきり獲物が減ったな…」


周囲に住む動物を自慢の斧で狩るなど、食料に関してはそれほど問題は無かったものの人間はそれだけでは生きられない事をその男は、知っていた。


塩はもちろん、主食となる小麦、ビタミンを多く含む緑黄色野菜、糖分として砂糖や果物…それ以外にも数多くの物が一人で生きていたとしても必要だった。


ボロボロに着古した衣服もその一つである。


先週の中頃には最後の替えである下着に穴が開いた為、それ以降生乾きでも我慢をして下着を着るしかない不便を強いられている。


最悪下着を履かない事も出来るにはできるものの、ぶらぶらと落ち着かない一物を抱えては自分の持つ斧を十全に使えるとは言えない。


その斧はとても大きかった。

欠けは見えるもののよく手入れをされ、刃の部分には顔がうつり込む程度には磨かれたその斧は、長さ1.5M程の柄の先に幅40CM長さ55CM程の両刃を持つ自分で作った自慢の斧だった。



自慢の斧に視線を移してしばらく、風上―――眼下に映る街道の右方向から馬の足音を聞くと、男はおもむろに立ち上がり、そばに張ってあったロープに向けその刃を下すと、ロープで吊るされていた大木が街道を横切るように倒れる。


「さて…ようやっと仕事の時間だ…塩と出来れば下着が手にはいりゃぁいいんだがなぁ…」


そう一人ごちて男は街道へと歩み出て行った――――


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