いつのまにやら諸悪の根元
おかしい。
おかしいぞ。
いわゆるチートを引っさげてこの世界に舞い降りた俺。
何も知らない、村人たちに、知識を与え。
何も知らない、村人たちを、助け。
何も知らない、村人たちと、暮らしてきた。
村人たちの、村は栄えて、国となった。
国の王に、いつの間にか抜擢された。
王なんて、柄じゃない。
俺はただ、村人たちの、喜ぶ顔が見たかっただけだ。
俺は、国を出て、何も知らない村人たちがいる村を探した。
俺はまた、何も知らない、村人たちに、知識を与え。
俺はまた、何も知らない、村人たちを、助け。
俺はまた、何も知らない、村人たちと、暮らした。
またしても、村人たちの、村は栄えて、国となった。
またしても、国の王に、いつの間にか抜擢された。
王なんて、柄じゃない。
俺はただ、村人たちの、喜ぶ顔が見たかっただけだ。
俺はまた、国を出て、何も知らない村人たちがいる村を探した。
そんなことを何度か繰り返して、新たな村を探しに出たとき。
いきなり後ろから、攻撃された。
突き刺さる、長剣。
噴出す、俺の、赤い、血。
俺のチートは、俺を生かした。
血を吐きながら、長剣を刺したやつを、睨みつける。
「魔王め!! この勇者が!! お前を! 討つ!!!」
「はあ?!」
俺、魔王なの?
しらねーし!!!
ぶち切れた俺は、思わずデコピンでそいつを追い払った。
あ。
びぶぅしゃっ!!!!!
頭が破裂した。
しまった。
俺チート持ちだったわ、ごめん。
吹っ飛んだ頭はもう再生できない。
仕方がないので、首なし騎士にして、復活させた。
そいつに色々聞いてみると。
各地で村を繁栄させる魔王がいる。
魔王は恐ろしい力を持っている。
繁栄させた村同士を戦わせて、世界を破滅に持っていこうとしている。
魔王がいたら人々は安心して眠れない。
魔王を倒そうという勇者はいないのか。
魔王の魔の手から人間の自由を奪い返そう。
はあああああああああああああ?!
何でそんな話になった。
何でそんな話にした。
何で俺いきなり嫌われてんの。
何で俺殺されなきゃいけないの。
なんで、なんで、なんで、なんで!!!
良かれと思って与えた知識が、悪い思考を生み出した。
良かれと思って与えた知識は、自分がもたない力を持つものに対する恐怖を与えた。
良かれと思って与えた知識で、知識を与えた俺を討とうと躍起になった。
マジ勘弁して下さい・・・。
俺は、ただ。
孤独だった人生を送ったあの記憶を。
ここで癒したかった、ただそれだけだったのに。
俺はチートで、城を作って、自称勇者を毎日、迎える。
話し合いを、まず試みる。
誰も、聞いてなど、くれない。
たくさんの人々の笑顔を見てきた俺は、チートを甘く見ていた。
みんなで笑って、みんなで繁栄していきたいと願っていたのに。
俺一人だけが持つ、チートが、万人の恐怖の対象となってしまった。
話を聞かない、勇者たち。
飛び掛ってくるので、そのたびに、デコピンで応酬した。
俺ただ一人が座る、玉座の前に、大きな池が、できてゆく。
大きな血だまりの池が、できてゆく。
首なし騎士は、増えるばかり。
城の周りを、首なし騎士が守るようになり、俺の玉座の前の血だまりの池が、ぶくぶくと沸き立つようになった。
もう、これでは誰がどう見ても、俺が魔王じゃないか。
俺、魔王なの?!
俺やだよ!!!
人を勝手に魔王にするとか!!
マジホント勘弁してくれよおおおおおお!!!