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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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クリスマス

 ――徳を積んだ者の前に一度だけ現れ、金銀財宝を与える三太殿。


 それが、武士のサンタクロースに対する認識であった。


 そういうわけで、来るクリスマスに向けていい子にしていた武士の気合いの入りようはすごかった。


「明日は三太殿が来るのだろう!? 錠はすべきではない! 三太殿が諦めて帰ってしまったらどうするのだ!!」


 いつも通り戸締りをしようとする私を引き止め、武士は喚く。


 うるせぇ! 三太殿より泥棒が入ってくる方がヤベェに決まってんだろ!!


「この家に盗る物は無い!!!!」


 居候ごときが言ってくれおるわ!!

 いい子は家主の言う事を聞くもんなんだよ! お座り! お手! ハウス!!


 分かったらねんねしなさい!!


「ぐー」


 そんで秒で寝るんだよコイツ。

 マジ何なの?






 そして翌朝。


「おおおおおおおおおおお!!!!」


 武士の雄叫びで目が覚めた。

 こんな近所迷惑極まりないアラームある?


 どしたの。


「おおおお、大家殿、さ、さ、さ、三太殿が……!!」


 武士は、大きな箱を手にワナワナと震えていた。

 その手には、“シルバニアファミリー 赤い屋根の大きなお家 ギフトセット”。


 おー、良かったなぁ、武士。

 友達増えたなぁ。


「なんと精巧な家か……! 家具も……! それに何より、この、ねこ……りす……!! なんと、なんと愛らしき……!!」


 あまりの感動に言葉を失っているようである。喜んでいただけて何よりだ。

 しかし私は今日も当然仕事なので、適当に相手したら出かけねばならない。ああ働きたくねぇ。


 準備をしていると、武士に話しかけられた。


「……そういえば、大家殿は三太殿から褒美は賜ったのか?」


 あ? 私?


「……まさか、無いのか?」


 武士の目に同情の色が浮かぶ。

 そういや、武士のことばっかりで私の分のプレゼントとか何も考えてなかったな。

 が、それがバレてしまっては、私がいい子ではないというイメージがヤツの中で固まってしまう。それは今後の私の沽券に関わってくるので、避けねばならない。


 ……えーと。


 ンなわけねぇだろ。ちゃんと賜りましたよ。


「おお、そうよな! 某が賜り大家殿に何も無いはずはない! して、何を頂戴したのだ!?」


 ……。


 ……ZIMAボトルを……。


「ほう」


 ……箱で……。


「……」


 ……。


「……そうか……」


 はい……。


「……三太殿は、よく見ておるな……」


 そっすね。


 こうして、無事にクリスマスは幕を閉じた。私は仕事の帰りに酒屋へ行き、ZIMAを一箱購入したのである。三太さんありがとう。

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