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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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将来の夢

 大きくなったら何になりたい?


 そんな質問が、テレビに映ったあどけない子供に繰り出されている。


 最近はYouTuberとかも人気らしいね。色々変化していく時代である。一番抵抗なく受け入れているのはいつだって子供たちで、私のような凡な大人は追従するばかりだ。


 武士は子供の頃から武士と決まってるから、就活とかも無かったんだよな。やっぱ立派な武士になりたいとか思ってたの?


「いや?」


 違うのかよ。意識低いな。


「某はおかげ犬になりたかった」


 何それ。


「病気などで都合が悪く、伊勢神宮に参ることができない主人の代わりに参拝してくれる犬のことだ」


 へー。そんな犬がいたんだ。

 ……行けるの? だいぶ遠いだろ。


「案外問題無かったぞ? 伊勢神宮まで犬の散歩ができるのは楽しいし、しかもそれが徳を積めるとあれば尚更やらない手はない」


 あ、伊勢神宮行く他の人も手伝ってくれんだね。

 面白い文化だなぁ。


 ……え? その手伝う人になりたかったの?


「犬の方だ」


 私の聞き間違いじゃなかった。

 なんでそこでワンちゃんをチョイスしちゃったんだよ。


「かっこいいではないか。かわいいし。立派だし」


 そもそも人ですらねぇんだけどな。

 でもそういうもんかね、子供の頃の夢なんて。


「で、大家殿は何かなりたいものはあったのか?」


 ……あー。


 うん。


 幼稚園の時には、野球選手になりたいって言ったかな。


「ほう。球投げが得意だったのか?」


 ううん。


「……では、憧れる者がいたのか?」


 いいや。


「…………ならば何故?」


 周りがサッカー選手になりたいヤツだらけでさ、それにつられたのか対抗心か、気づいたら野球選手って言ってた。


「なんだその理屈は」


 ほんとなんだろうな……。その時の私、ボールを握ったことすらなかったのに。先生も相当戸惑ったと思うよ。


「で、実際野球はしたのか?」


 してない。今まで生きてきて、やった球技は卓球ぐらい。


「……」


 ……。


「わらべとは、得てしてそういうものよな」


 そうだな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 分かる。自分も特に理由があった訳じゃなかったけど、宇宙飛行士になってみたかった。
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