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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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タピオカ

 ある日突然、武士に言われた。


「タキオカ殿が作る珍味を賞味したい」


 誰だよ。




 しばらく話して、タピオカドリンクのことだと理解した。


 えー……じゃあコンビニで買ってきてやるか。


 そう提案すると、武士は首を横に振った。


「こういったものは老舗で食すに限るだろう」


 つまり専門店へ連れて行けということらしい。

 武士の癖に生意気なヤツである。


 そういう事情で、私達はタピオカドリンクを出す店へとやって来た。


「ほう! てれびで申しておった通り、なんと数が多いことよ!」


 そしてやはりここでもはしゃぐ武士である。周りの女子高生の目が痛い。

 ごめんよ、違うんだ。コイツはいい大人に見えるかもしれないけど、精神年齢は君たちより低いんだ。


「大家殿! 某は宇治抹茶にするぞ!」


 袖を引き、武士は緑色の液体が入った容器を指差す。そうかそうかと頷き、レジに向かった。


「かしこまりました! お連れ様はどちらにされますか?」


 溌剌とした笑顔の店員さんに尋ねられ、私は少しフリーズした。……そういや自分の分は考えてなかったな。なので慌てて一番人気のミルクティーをお願いした。


 待つこと数分。


 テンション高めの武士が、二人分のタピオカドリンクを持って帰ってきた。


 店内を走るな!


「ほう、これがたぴおかか……! 噂に聞く、たぴおか……!」


 なんだよその噂に聞くって。巷じゃどんな噂が飛びかってんだ。


「2019年はこれを食べないと年が越せない」


 蕎麦か何かかな?


 恐らく何かを勘違いしているのだろうけど、分かりそうで分からない。まあいいや。どうでもいい。


 そうして武士を無視しつつ、一口飲んで驚いた。


 うっま……!


 え、何これコンビニで買うヤツと全然違うじゃん。もっちもち。もうもっちもち。あとほんのり甘い。なんか練り込まれてるのかな?

 わー、すげぇ。専門店のタピオカってこんななの? えー、知らなかった。えー、美味しい。えー。


 えー?


 ふと顔を上げると、武士がニヤニヤしていた。


「な? やはり老舗が一番だろう?」


 あの店が老舗かどうかは知らないが、専門店の凄さを思い知った日であった。あとこの時の武士のドヤ顔になんとなく腹が立ったので、軽いデコピンを食らわせておいたのである。

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― 新着の感想 ―
タキオカがタキオンに見えた人は挙手!はい!
[一言] タピオカは一度買ってみて、うわ……ってなってから買ってないなぁ。専門店とかちゃんとしたところはコンビニと全然味が違ってびっくりする。
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