怒り
この私の駄文を読む人も、きっと落ち込んだり苛々することがあると思う。
だが、そんな時には武士の言葉を思い出して欲しい。
「腹は減っておらぬか」
「寝は足りておるか」
「体のどこかが痛くはないか」
武士曰く、健康な人間であれば、これらが満ちていれば些細なことで怒るなどそうそう無いらしい。
「人の肉体と精神は、絶妙な釣り合いを取って成り立っておる。肉体の調子が崩れると、あっさり精神も崩れてしまうものだ」
逆に、精神をしっかり保つことで肉体も健康になったりすると言う。あれだ、病は気から、というヤツだ。
「――大家殿は今、確かに怒っておる。しかし、それはもしかして肉体の不調からくるものではないのか? 今一度振り返ってみてはいかがか」
私の前で正座した武士にそう言われ、胸に手を当てて考えてみる。
夕食は、さっき食べた。
睡眠も、今日は十分足りている。
体も、元気いっぱいだ。
うん。
その上で、私お前にキレてるわ。
「すまん! あまりにも美味い菓子だったのだ! 某の手は止まらず、ついつい二個食べてしまった!」
知ってる。
なぜなら、お隣の秋澤さんにチーズケーキの味の感想聞かれたからね。
土下座する武士のちょんまげを睨みつけ、私は薄ら笑いを浮かべた。
――なるほど、武士の言うこの三条件を満たした上での怒りは、本当の怒りという解釈で良さそうだ。
歯ァ食いしばれ武士!!
そんなわけで、しっかり正しく怒るためには肉体を万全にする必要がある、という話であった。
みんな、三食しっかり食べて、夜は寝ような。