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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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ラーメン

 人間の三大欲求は、食、睡眠、性である。


 もしこれに一つ加えられるとしたら、何にするか。


 生存欲? 排泄欲? 承認欲?


 ――いや。



 私はラーメンだと思う。



「それは食欲とやらではないのか」


 違う。


 食欲は全般じゃん。ラーメン欲はね、もうマジでラーメンのことしか考えられなくなるんだよ。

 普段辛子明太子とチーズに狂い倒してる人間だろうと、無性にラーメンしかたべたくなくなるの。ヤバくね?

 私が思うに、これはあれだね、もう人間のDNAに刻み込まれてるね。デオキシリボ核酸のあのウネウネ、どれか一本はラーメンだ。

 さぁ神に祈ろうぜ。


 ラーメン。

 

「某には、大家殿の申している意味がよくわからん」


 私にも分かんねぇよ。


 とにかく、ラーメンが食いてぇんだ。不思議と。


「それは昨日瓶の酒を二本空けたことに由縁すると某は思う」


 うるせぇ、食いに行くぞ。

 つけ麺をな。



 というわけで、武士を伴ってつけ麺屋に来た。


 ところで江戸時代にラーメンってあったの?


「無い……と思う。蕎麦はあったぞ」


 割り箸を丁寧に割って武士は言う。へぇー。ラーメンっていつ頃日本にやってきたのかね。


 やがてつけ麺が運ばれてくる。ここね、美味しいんだよ。ちょっと高いけど。最初は高いなら味わってゆっくりたべなきゃかなーなんて思うけど、もうマジで箸が止まらないんだ。心から「この値段順当だわー!」ってなる。魚介スープがすげぇ麺に絡んで……。


「美味い」


 だよなー!!!!


 そこからは、もう一心不乱。二人で黙々と麺をすする。

 食べてて静かになるのはカニだけじゃねぇんだよ。マジで美味しかったらもう会話どころじゃねぇんだよ。私は麺と会話してるんだ。


 そしてしっかり食べ終わったあと、武士は満足げに息を吐きながら私に言った。


「明日も食べたい」


 破産するわ。


 こういうのはたまに食べるからいいのである。

 憮然とする武士にこんこんと言って聞かせ、私達は店を出たのであった。

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