ラーメン
人間の三大欲求は、食、睡眠、性である。
もしこれに一つ加えられるとしたら、何にするか。
生存欲? 排泄欲? 承認欲?
――いや。
私はラーメンだと思う。
「それは食欲とやらではないのか」
違う。
食欲は全般じゃん。ラーメン欲はね、もうマジでラーメンのことしか考えられなくなるんだよ。
普段辛子明太子とチーズに狂い倒してる人間だろうと、無性にラーメンしかたべたくなくなるの。ヤバくね?
私が思うに、これはあれだね、もう人間のDNAに刻み込まれてるね。デオキシリボ核酸のあのウネウネ、どれか一本はラーメンだ。
さぁ神に祈ろうぜ。
ラーメン。
「某には、大家殿の申している意味がよくわからん」
私にも分かんねぇよ。
とにかく、ラーメンが食いてぇんだ。不思議と。
「それは昨日瓶の酒を二本空けたことに由縁すると某は思う」
うるせぇ、食いに行くぞ。
つけ麺をな。
というわけで、武士を伴ってつけ麺屋に来た。
ところで江戸時代にラーメンってあったの?
「無い……と思う。蕎麦はあったぞ」
割り箸を丁寧に割って武士は言う。へぇー。ラーメンっていつ頃日本にやってきたのかね。
やがてつけ麺が運ばれてくる。ここね、美味しいんだよ。ちょっと高いけど。最初は高いなら味わってゆっくりたべなきゃかなーなんて思うけど、もうマジで箸が止まらないんだ。心から「この値段順当だわー!」ってなる。魚介スープがすげぇ麺に絡んで……。
「美味い」
だよなー!!!!
そこからは、もう一心不乱。二人で黙々と麺をすする。
食べてて静かになるのはカニだけじゃねぇんだよ。マジで美味しかったらもう会話どころじゃねぇんだよ。私は麺と会話してるんだ。
そしてしっかり食べ終わったあと、武士は満足げに息を吐きながら私に言った。
「明日も食べたい」
破産するわ。
こういうのはたまに食べるからいいのである。
憮然とする武士にこんこんと言って聞かせ、私達は店を出たのであった。