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クーラーが好きらしい
武士はクーラーが好きらしい。
クーラーの風を浴びながら、「大家殿、この水枕には一体いかほどの氷が使われておるのだろう」とまったりしていた。
すまぬ武士よ。そのクーラーもエレキテルなんだ。
武士が頻繁に覗き込む光る食料箱もエレキテル。
夜中明るくなる天井に張り付いたガラスもエレキテル。
小さな人が動き回る不思議な箱もエレキテル。
目を丸くする武士に得意になっていると、「エレキテルとはなんぞや。どういう原理ぞ」と聞かれた。
しばらく考えた。
「妖術」と答えた。
武士は納得しなかったが、私は押し通した。
「訳のわからないものをああも操れる大家殿は流石である」とクッションに顎を乗せて武士は言う。
嫌味かもしれないが、構わない。どうせ長ネギを突っ込んだら黙る口なのだ。
今晩はすき焼きだった。武士も大喜びである。