風邪ひいた
ほんと大丈夫だからいいから寝てたら治るからただの風邪だからほんと。
「ならぬ」
そんなわけで、病院に連れて来られている。
「僅かな不調が大病に繋がることもあるのだ。せっかく診てくれる者がおるのだし、行くに越したことはない」
あるってー。
風邪のひきかけってさ、分かる?
むしろね、今ね、寝てなきゃいけない時期。
体のバリア機能が低下してる状態だから、こんなんで行ったらむしろ新しい風邪貰ってきかねないんだよ。
家で寝させろよー、武士ー。
「ほほう! ここがびょーいんか!」
やっぱお前見学したかっただけじゃんよー!
帰れ! むしろ帰らせろ!
あったかい布団で眠らせろ!
「某もそのぴぴぴをやりたい」
体温計は家にあるから帰ったら好きなだけ測れ!
ほらもー、見ろこれ三十七度もねぇじゃねぇかよ私!!
ダメだよもう全患者さんと全看護師さんが何しに来たの? って顔してる気するもん! もうー!
「某もその腕のぎゅーをやりたい」
血圧ぅ!? まぁこれはいいや、ここで測っとけ。家に無いし、ご自由にお使いくださいだし。
っていうかお前、病院はテーマパークじゃねぇからな!?
そんなこんなで、診察してもらった。
「扁桃腺おっきいねー!」
そうなんすよ。
物心ついてからそれ死ぬほど言われてきてるんです。
マジでお医者さんに関してでいえば、いっそ自己紹介の時に盛り込んどいた方がいいかな? ってぐらい必ず言われる。これが婚活だったら一言カードに書いてる。扁桃腺が大きいですが共存できてるんで放っといてください、と。
そしてお薬が出た。
風邪なので治るまで一週間ぐらいかかるから、無理をするなと。
そうして、武士につれられて帰る。
……しかし、風邪をひいて少し心許ない時に誰かが近くにいるというのは、多少気が楽になる気がしないでも……。
「武士もその薬とやらの味を知りたい」
正露丸舐めとけ!!!!
やはり早く江戸に帰ってもらいたい。
布団にくるまりながら、私はそんなことを思った。