花屋
観葉植物を置きたいと思う。
風水的にね、やっぱ置いといたらいいんだってさ。
リビングなら葉っぱの丸いヤツがいいらしい。なんかこう、人間関係とか健康とかが色々まぁーるくなるとかなんとか。風水的に。
うん、風水的に。
うん。
「異国の呪術を我が家に取り入れるとは、流石大家殿だな」
お、バカにしたか? バカにしたのか?
してない? 素直に感じ入ってる?
よーしよーし。
……言えねぇなぁ。『るろうに剣心』に出てきた風水使いに影響されました、とは……。
というわけで、花屋に来てみた。
「おお!」
毎度お馴染み、武士にとってのハロー・ニューワールドである。
「この大きい花の名はなんというのだ! ぬぬぅ、黄色いなぁ……黄色い……。あ! あれは夏の花ではないか!? エレキテルか、エレキテルの仕業なのか! ……な、なんと、こちらには多色の花だと!? していかほどの値が……? おお! こんなお値打ち価格で!?」
最後通販の人みたいになってるじゃねぇか。
花屋で動物園ばりにはしゃぐな。
「大家殿、其はこれが気に入ったぞ!」
そして私が何も言っていないのに、武士はとある植木鉢を持ってきた。
なんだこれ。アデ……ニウム?
「葉っぱも丸いし、茎の根元も丸い。愛らしい」
なるほど、一応条件は満たしているらしい。
えー……パキラとかその辺り買おうと思ったんだけどな。
まあいいか。
風水よくわかんねぇし。
そんなわけで、今我が家のリビングの窓には、小さな植木鉢におさまったアデニウムが鎮座している。
武士は「家族が増えました」みたいな顔をしていた。いやだからお前そもそも私の家族じゃないからな?