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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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尻が喜んでいる

 誤解のないように冒頭でお伝えしておくと、USBで充電できるタイプのヒートクッションを買ったというだけです。

 年を取るごとに寒さに弱い生き物になってきて、毎年何かしら新しい防寒グッズを買っています。その一つがヒートクッション。発熱する座布団です。

 これが実にいい。師走並みの寒さに痛めつけられた尻が喜んでいます。もし尻に自我があるならここを安住の地としたでしょう。


 だがこういうものを買うと、大抵武士と取り合いになります。そうならないよう今回は黙って使っていたというのに、あっさりバレました。決め手は座布団から伸びる充電コードでした。


「ここを某の安住の地とする」


 武士は尻と違って自我を持っているので、ヒートクッションの上に丸まって領土を主張するという暴挙にも出ます。

 違法占拠だろ。どけや。


「ならぬ。この座布団の上は他の座布団と違ってぬくいのだ」


 我が家の床はコンクリートを直で踏んでんのかと思うぐらい冷たいのである。ゆえに、断熱シートの上にカーペットを敷いたところで全然冷気が貫通してくるのだ。いわんや座布団をや。

 そこに現れた救世主がこのヒートクッション。自ら発熱してくれる点で他の座布団と格が違う。

 どけや。


「否、これはもう某のものである」


 強情である。やはり二個買うべきだったかと思わないでもない。ブラックフライデーでちょっと安くなってたし。でも、新しい物を買うって時に二個ぶっこむのは相当心と財布が強くないとできなくない? 私はどちらも弱いです。

 ――わかった。じゃあ、半分くれよ。


「半分とは?」


 座布団を半分こするんだ。お前は左半分。私は右半分。


「成る程」


 武士は起き上がると、座り直したあとで尻をずいと横にずらした。そして現れた僅かな領土に私も尻を乗っける。

 あったけぇ。やはり買ってよかった、ヒートクッション。

 寒い夜。尻を寄せ合い暖を取り合う……。


「嫌な一杯のかけそばであるな」


 お前が言うなや。

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