暑い日のゴミ拾い
暑い。
嘘やん。暑いやん。まっことしょうたまらん。
おっと突然の異常気象につい地元の方言が出てしまった。
ともかく、暑い。
昨日なんてアホみたいに寒かったじゃないか。だからヒートテック出して、武士が物欲しそうに見てたからついでに着せてやって、武士が感動のあまり膝から崩れ落ちて、その膝をベッドの角にしたたかに打ち付けて、私がそれ見て爆笑して……。
うん。
翌朝である。
布団跳ね除けてた。暑かった。
今日は地区一斉清掃(ゴミ拾い)の日である。
「よし! では行くぞ大家殿!」
ニット帽(ちょんまげ隠し)をかぶり、軍手をつけ……あれなんてったっけ。火ばさみ? トング? とにかくそれを両手でカチカチとさせる武士である。やる気は満々だ。
「暑い」
が、暑かった。マジ半端ねぇよ日差し。
私は暑さに弱いのである。寒さだったら着込めば何とかなるが、暑さはどうにもならない。脱いでも暑い上に更に肌を焼いてくるとか何なの。油断も隙もねぇんだよ日光。
いや、ゴミ拾いに集中しなければならない。私が煙草の空き箱をつまんだ時だった。
「大家殿、それはなんだ?」
武士がキラキラした目で覗き込んできた。
何って……お前それ煙草の空き箱だけど。
「煙草! ほーお、今はこのような形になっているのか! 持ち運ぶため便利になったのだな! ……ところで火はどこでつけるのだ? 火打ち石は……ついておらんのか」
あー、そういうのならライターかな。
「ライター?」
そうそう。ちっちゃい火打ち石ついてんの。多分。
えーと……。
あ、ほらあった。これこれ。オイルライターってんだけどね。これは今空っぽだけど、ここに燃料が入ってる限りはカチッとしたら火がついて……。
「ほおおおおおおおお」
武士は大いに感心したようだ。片手でカチカチとやって、悦にいっている。
「大家殿、これ持って帰っていいか!?」
置いていきなさい!!
武士にとっては、ゴミ拾いですら娯楽になるらしい。
しかしそれにしても暑い。私は首に巻いたタオルで汗を拭い、とっとと家に帰るべく、武士の首根っこを引っ掴んで集合場所に向かったのだった。