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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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暑い日のゴミ拾い

 暑い。


 嘘やん。暑いやん。まっことしょうたまらん。


 おっと突然の異常気象につい地元の方言が出てしまった。


 ともかく、暑い。


 昨日なんてアホみたいに寒かったじゃないか。だからヒートテック出して、武士が物欲しそうに見てたからついでに着せてやって、武士が感動のあまり膝から崩れ落ちて、その膝をベッドの角にしたたかに打ち付けて、私がそれ見て爆笑して……。


 うん。


 翌朝である。


 布団跳ね除けてた。暑かった。


 今日は地区一斉清掃(ゴミ拾い)の日である。


「よし! では行くぞ大家殿!」


 ニット帽(ちょんまげ隠し)をかぶり、軍手をつけ……あれなんてったっけ。火ばさみ? トング? とにかくそれを両手でカチカチとさせる武士である。やる気は満々だ。


「暑い」


 が、暑かった。マジ半端ねぇよ日差し。

 私は暑さに弱いのである。寒さだったら着込めば何とかなるが、暑さはどうにもならない。脱いでも暑い上に更に肌を焼いてくるとか何なの。油断も隙もねぇんだよ日光。


 いや、ゴミ拾いに集中しなければならない。私が煙草の空き箱をつまんだ時だった。


「大家殿、それはなんだ?」


 武士がキラキラした目で覗き込んできた。


 何って……お前それ煙草の空き箱だけど。


「煙草! ほーお、今はこのような形になっているのか! 持ち運ぶため便利になったのだな! ……ところで火はどこでつけるのだ? 火打ち石は……ついておらんのか」


 あー、そういうのならライターかな。


「ライター?」


 そうそう。ちっちゃい火打ち石ついてんの。多分。


 えーと……。


 あ、ほらあった。これこれ。オイルライターってんだけどね。これは今空っぽだけど、ここに燃料が入ってる限りはカチッとしたら火がついて……。


「ほおおおおおおおお」


 武士は大いに感心したようだ。片手でカチカチとやって、悦にいっている。


「大家殿、これ持って帰っていいか!?」


 置いていきなさい!!


 武士にとっては、ゴミ拾いですら娯楽になるらしい。


 しかしそれにしても暑い。私は首に巻いたタオルで汗を拭い、とっとと家に帰るべく、武士の首根っこを引っ掴んで集合場所に向かったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 暑さ、寒さに関しては本当に分かる。
[一言] 好奇心の塊のようなおっさん(武士は渋いおっさんですよね!?)可愛いです。
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