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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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武士はネックレスを知らない

 部屋を片付けていた時である。若気の至りで買ったギラギラのシルバーネックレスが発掘された。

 あ~~~~こんなの買ってたな~~~~! 当時はイカしてると思って連日つけてたんだよな~~~~!! クロスに絡まったドクロとめちゃくちゃ目が合うな!!

 久しぶり。でももう着けることはないだろう。メルカリに出すか、大人しく捨てるか、果たしてどうしたものか……。


 などと考えていたら、武士にひょいと奪われた。近づけ遠ざけ匂いを嗅ぎ(嗅ぐな)、ためつすがめつ眺めたあと首をかしげる。


「なんぞ、これは」


 え? なんぞって言われると……骸骨が十字にまきついているネックレスです。


「ね……? ぷ……?」


 ネックレス。


「とっぷれす」


 骸骨の話をしてるなら上裸どころか全裸だな。違うって、ネックレスだよ。首輪。首にかける装飾品。



「ほう、首に?」


 うん。え、知らない?


「見たことはないな。首に巻けばいいのか?」


 違う違う、輪っかになってるところに頭通すんだよ。

 つーかまじで? 江戸時代ってネックレスなかったの?


「少なくとも某は見たことがござらんな。して、これは何のためにつけるのだ? 罰か?」


 罰ゲームみてぇなデザインで悪かったな。かんざしと一緒で、おしゃれでつけるんだよ。


「ほうー。これを?」


 おしゃれであることをすぐに飲み込めないデザインで悪かったな。


「……」


 つけた。

 似合ってるよ。


「そうか?」


 うん。


「キリシタンのようではないか?」


 そこの知識はあるのかよ。本当のキリシタンの方が見たら卒倒するようなデザインだからやっぱつけるのはやめとこうな。

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