表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
69/676

いい夫婦の日

 11月22日。


 いい夫婦の日ですってよ、奥さん。


 うん。


 私にはハロウィン以上に関係のない日である。


 つまり、今日も変わらず、起きて会社行って適当にやり過ごして帰って飯食って寝るだけの一日である。

 実際そうなるに違いないと思っていたのだが……。


「最近彼女ができたんですって?」


 会社でパートのおばちゃんに話しかけられ、硬直した。

 返事をしない私の反応を肯定と捉えた彼女は、手振り付きで嬉々として続ける。


「やっぱり!? 最近シャツのシワも伸びてるし、お弁当作ってきてるし、できるだけ定時で帰ろうとしてるじゃない! ぜーったいいい人ができたと思ってたのよー!」


 ……シャツのシワが伸びてるのは、通販で“ハンガーにかけたまま使えるアイロン”を買ったからで、

 お弁当作ってきてるのは武士の昼飯を作るついでで、

 できるだけ定時で帰ろうとしてるのは前からです。


 いや武士の功績が何一つねぇな?


 こういう時って普通、「ほんとだ……シャツのシワが伸びてる。アイツ、私の知らない所で……!」ってなるもんじゃないのか。日常に溶け込んでいた当たり前の幸せに気づくアレじゃないのか。

 今私の中に湧いてるの、架空の彼女がいると勘違いされたことによる面倒くささへの怒りだぞ。マジでそれ以外の感情が死んでる。


 とりあえず、彼女はいないです。


 むしろいい子がいたら紹介してください。


 結構ガチめに頭を下げて、会社を後にした。




 で、帰宅。


「よくぞ無事に帰ったな、大家殿! ところで、今日は何の日か知っていたか?」


 ドアを開けると、武士がなんかテンション高めに寄ってきた。


 ……。


 えーと、何の日かね?


 尋ねると、武士はニヤッとしてとある場所を指差した。

 そこには、大量の空き缶。



「缶ゴミの日だ」



 出し忘れたんかお前えええええええ!!!!


 だから! ゴミ捨ては! お前の担当だっつってんだろ!!


 缶ゴミの日って月に二回しかねぇんだぞバァァァァァァカ!!




 いい夫婦の日? 知らねぇな。


 今日は缶ゴミの日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ