ナ◯シカガチ切れ案件
今、ナウ◯カが私の家のベランダを見たら、髪を逆立てて飛びかかってくるかもしれない。王蟲だったら目が赤くなってるかな。まあそれほどまでに弊ベランダで虫が死んでいる。
その理由は二、三日前の日記を読んでいただければと思います。端的に説明すると武士が殺虫剤をばらまきました。
「まさかこれほどまでに効き目があるとは」
武士は腕組みをして、改めてベランダの惨状を見つめている。
「数多の命を奪った某は、地獄に落ちるかもしれない」
死後の心配しなくても、心のなかで手を合わせたなら大丈夫だよ。
もう供養は済んでる。
「なぬ? 大家殿、いつのまに……?」
いや、私じゃない。
殺虫剤を作ってる、アース製薬とか大日本除虫菊とかフマキラーとかが。
「あす……ふすま……」
殺虫剤を売ってる会社……えーと、お店だよ。
「ほう。しかし、供養とな?」
一年に一回、虫供養をやってるらしい。社員みんなでお寺に行って、ハエやダニなどの遺影を前にして手を合わせるんだって。
「遺影」
遺影。
「……それは毎年変わるのであろうか」
わかんない。でも私が社員なら、変わってても気づかないかもしれない。
「そうか……。だが、それを聞いて少し心が晴れやかになったぞ」
うん。無闇矢鱈に殺すのは剣呑だけど、生活が脅かされない程度によろしくしていきたいね。
「うむ。虫と共に生きていくには、この屋敷はあまりにも狭い」
悪かったな。




