表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
684/711

軽め登山(前半)

 もしかすると、登山と呼べるほど大したものではないのかもしれない。武士と少し遠出をした際、標高300メートル程度の山があったからちょっと登ってみようと思い立っただけである。

 ただ、雨上がりの山を舐めていたところがあった。それだけだ。



 +++



「ううむ、良き山であるな!」


 いつものようにジャージを身にまとった武士は、目を輝かせて山を見上げていた。これが我々が今から登る山である。この駐車場からなら、頂上まで大体20分程度だろうか。


「思えば山など久しく登っておらんかったからな。大家殿、しっかりと足に心構えをさせておくのだぞ」


 準備運動のことだいぶ詩的に表現するんだな。でも確かに怪我をして下山できなくなったら洒落にならないから、足の筋は伸ばしておこう。

 それにしても、雨が降ってなくてよかったな。


「今朝までは降っておったがな」


 何なら今でもどんよりとした曇り空だけどな。


「しかも山の天気は変わりやすいと言うしな」


 ……。


「……」


 帰るか。


「少し覗いてみるだけであるから! 少し覗いてみるだけであるから!」


 まあ一応道もしっかりあるし、足場が悪いところもあんまりないみたいだし。気をつけて進めば問題ないと思うよ。


「うむ、では早速参ろうではないか!」


 ははは、こどもみたいにはしゃぎおる。あんまり急ぐなよー。序盤飛ばしすぎて、途中でへばっても知らねぇかんな。



 ― 十分後 ―



 死にそう。


「大家殿ーっ!」


 やばいやばいやばい。これ多分絶対大したことない勾配だよね? なのにもう足が上がんない。一歩ごとに太ももに手を置いて「よいしょ」ってしないと前に進めない。

 運動不足の勤労人ってこんなに体力がおしまいになるの?


「何をしておるか、大家殿ー! 某、もはや先に行ってしまいたいぞ!」


 ちょっと待っ……いや、もういいや! 先行け! そのかわり帰りに私を拾って帰ってくれ!


「自身を落とし物のごとく申すでない」


 面目ねぇ……。まあ実際私が落としたのは体力なんだけどね(笑)


「何を申したかちっとも聞こえんかった。先に行っておる」


 ぐああー……!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ