表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
678/711

疲れてくるとマジでなんでもないことで泣けるからな

 深夜。残業と呼ぶにもえげつねぇ時刻に私は退社した。我が社は居抜きのビルを借りているので、消灯時間になったら容赦なく廊下の電気が消される。足元を転々と照らす非常用ライトを頼りに、ホラーゲームも真っ青な闇を歩いていくのだ。

 しかし、エレベーターは違う。どんな時間でも、まばゆいばかりの光を放ちながら、たった一人のために働いてくれるのである。


 ああ、私などよりお前のがよっぽど働き者だな。そう思うと涙が出て止まらなかった。


 という話を武士にしたら、強制的に寝かしつけられた。


「以前もえれきてる上下箱に涙しておったではないか! 二度目ぞ!」


 ほっといてくれ。疲れてる時はエレベーターで泣ける人間なんだよ、私は。


「尚更休むべきである! 某は学んだのだ、大家殿がえれきてる上下箱に心動かされる時は一刻も早く眠るべき時であると」


 大げさだなぁ。大丈夫だよ、路傍の花に感涙するようなもんだから。


「それはそれで休まねばならぬのでは?」


 だから問題ないってば。


「……」


 お? なんだ、その動画は。


「犬のげぇむの宣伝芝居である」


 新作ゲームのトレーラーね。ほう、My Little Puppy……。かわいいな、コーギーが主人公なのか。え、この子天国にいるの? かつての飼い主に会うために? わんわん走って迎えにいくの?


 ヒンッ(泣)


「ヒンッ(泣)」


 お前も泣くのかよ。じゃあ疲れとか関係なく、ただ感動で胸が一杯になって泣けるトレーラーじゃねぇか。


「ぽぽ殿も我々を迎えにきてくれるだろうか……」


 やめろ今そういうこと言うの。涙が止まらなくなるから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ